VOL12 「尾道三部作の世界へ紛れ込んだ日」
大林宣彦監督の映画が大好き。
2012年、尾道三部作と呼ばれる
代表作品のロケ地広島の尾道へ
友達2人を誘って一泊で行ってきた。
ずうっと前から行きたかったけど
大阪から日帰りにはかなり遠くて
行けないままだった。
20代の時に「転校生」を
レンタルビデオで観た。
そのノスタルジックで味わい深い
尾道の風景を一発で気に入った。
「さびしんぼう」を観て
またさらにハマってしまった。
坂道だらけで複雑に入り組んだ
路地を登って見下ろす素朴な家並み、
瀬戸内海に佇む船、橋。
なんとも優しい気持ちにさせられる。
もちろん風景だけでなく、
そのユニークであり、
せつないストーリーも素晴らしい。
どっちも3、4回ずつ観た。
気に入った映画は何回でも観るぞー。
「転校生」の中で主人公の
男女中学生が寺の前の急な石の階段を
転げ落ちるシーンはあまりに有名だ。
実際にその階段へ行ってみて
見上げるとすっごいワクワクした。
「おおーっ! コレコレっ!」
なんて存在感に満ちてカッチョイイ
階段と門なんだっ。
ここであのとんでもない奇跡が起きる
という話は妙にナットクさせられて
しまいそうな気持ちになった。
さらに映画の中で主人公の斉藤一美が
住んでいる家の場所が現地で入手した
プチ地図に載ってたから行ってみる。
細く入り組んだ路地には案内もなく、
この家かなあ?と立ち往生していると
その家から中学生と小学生らしき
兄弟が出てきたから尋ねてみた。
そこではなかったけど、
スマホの写真を見せると家の外観から
判断して親切にも案内してくれた。
すごくわかりにくいとこやった。
ほっんまにありがたい。
すぐ近くまで来てたのに
辿り着けなかったひとは多いはず。
今は誰も住んでいない荒れた廃屋。
一体何十年ほったらかしに
なってるんやろう?
玄関は閉じられてたけど、
なんと勝手口らしき壊れそうな戸が
半分開いてたから、友達を残して
ひとりで入ってみた。
ドキドキ。
古い古い和風の家の床は
たわんでいて歩くときしむ。
幽霊が棲みついていそうで
ちょっと怖かったけど、
太陽の明かりが届かない暗い
いくつかの部屋を歩き廻った。
なんてこった!
まさかあの何回も映画の中に観た
家の中に俺ひとりでいるなんて!
めっちゃコーフンした。
映画でよく観るニューヨークの
タイムズスクエアに初めて行った時の
10倍シゲキテキやった。
古めかしい小さめのカサの
シャンデリア、 石造りの円形の
五右衛門風呂(一美が入っていた)、
和式のトイレとかを見て、
あまりにリアルでゾクゾクした。
細長い庭に出ると立派な木や
灯篭までそのままそこにあった。
なんて貴重な空間なんだっ!!!
尾道から戻ってきてさっそく
あの余韻を噛み締めたくて
何年かぶりに「転校生」のDVDを
レンタルしようとしたけど
2軒の店で置いてなかった。
がくうっ。
それ以後未だにレンタルショップで
見かけていない。
ぜひまたあの空間に触れてみたいよ。