VOL113 「トラウマの廃墟」
できれば消してしまいたい記憶。
それは学校から帰って友達と遊ぶ
フツーの子どもである自分の
平和な現実世界からは隔絶された
不気味な光景だった。
必要で覚えておきたいことも
時間が経つと忘れていってしまう。
でもずうっと昔のことなのに
鮮明に想い出せることもある。
30、40年も昔の海外ひとり旅、
高校での非常勤講師や
アメリカンバーを経営をしていた
時のエピソード、
さらには子どもの頃の体験など
様々なことを何百回も投稿してきて
「よく覚えてますよね〜。」と
読んだひとから感心されたり
することもあるけど、
強い印象を受けたことは脳内に
映像のようにその一部が残るから。
公の場にとても書くことはできない、
またはひとには話したくない
ショッキング体験もいくつかある。
それがトラウマと呼ばれるのかな。
誰にでもいくつかあるのが
当たり前なのだろうか?
子どもの頃、家から歩いて
10分ほどのところに広い敷地の
大病院があった。
何年か前、近くを通った時に
見てみたら敷地全体が改築されて
近代的に変わっていて、
全く昔の面影が残っていなかった。
名称まで少し変更されている。
「あれは幻やったんやろか??」
あまりに違った別空間を見て
なんだか騙されているような
気になってしまう。
9歳くらいの時、いくつもある
病棟の周りはまだアスファルトで
整備もされていない状況だった。
敷地内にはあちこち草が生い茂り、
池は底がすり鉢状になっていて
はまってしまうと岸に簡単には
上がれないらしく、過去には
子どもの死亡事故も起きていて
学校からは近づかないようにと
注意されていた。
と言っても友達の何人かは親が
その病院に勤務しているのか
敷地内の社宅のような建物に
住んでいてよく敷地内へ入った。
池の前は通るけど
近寄らないようにしていた。
夕方に友達の家から帰る頃には
病棟の窓から漏れる明かり以外
ほとんど外灯もなく、誰もいない
暗く静かな砂利道が怖かった。
ある時、少し離れたところに
古びた廃墟のような木造の小屋が
あることに気付いた。
「あれはなんやろう?」
軽い好奇心で行ってみる。
鍵がかかっていない戸を開けて
入ってみると20畳ほど?の
スペースに3、4段の棚が何列か
設置されていた。
棚には直径、高さが30、40cm?の
円筒型のガラスの水槽が並んでる。
その中には、、、。
なんと脳が浮かんでいたのである。
人体模型でしか見たことがない
ホンモノの脳がいくつも。
その色、質感。
なんてグロテスクで生々しいのか。
それは小学生にとってはあまりに
衝撃的な光景だった!!
自分がどう反応したのかは
覚えていないけど、その場では
意外と冷静に観察して部屋の中を
歩き廻ったような?気もする。
病院で必要なサンプルなのか
なんだかわからないけど
なんで病棟じゃなく、
そんな鍵もかかっていない
小屋の中に置かれていたのか??
誰でも小学生でも入れる状況なんて
アカンやろ!!
医学関係者など以外には
博物館か何かに見学に行かない限り
実際に見る機会はほぼないだろう。
それからというもの
アニメ「妖怪人間ベム」の
オープニングのシーンが
子ども騙しの作り物の世界の
ようには思えなくなってしまった。
おとなになってからも
「Xファイル」、
ゲームの「バイオハザード」などで
研究所の水槽に何かが
ホルマリン漬けになっているのを
目にするたびに必要以上にリアルに
感じてしまうのである。
過激な暴力的、残酷なシーンなどが
映し出されるDVDやゲームに
18禁などと表示されることは
やっぱり必要なんですよホンマに。
トラウマになってからでは
もう取り返せないことだから。