73話 「コリーン山攻防戦」その2
コリーン山のゴブリン達による防衛軍の司令部に到着した龍騎士隊イリス。
総司令官はゴブリンロードのドンゴだ、イリス達よりいち早く現場に駆けつける辺りは流石のSランクの魔物だ。
「イリス殿、援軍かたじけない」ドンゴさんのキャラ変わったぁー?!
今までの腰の低い領主さんから、いきなり歴戦の武人の様相に変化したドンゴ。
「ガストン殿・・・ドンゴ殿、滅茶苦茶強いですよね?」
「そうですね、私でも武力のみでは厳しいと思います」
ドンゴの武力を正確に分析する武人のガストンとロイ。
結果は腕力武力ならSSランクと判明する、だが魔法戦闘力が低いのでSランクだ。
武装も黒いフルアーマーの甲冑にハルバートを構えて黒騎士と言って良いカッコよさだ。
「ドンゴさん!渋いです!」イリスも大絶賛だ!
「えー?そうですかあー?」あっ・・・照れるといつものドンゴだ。
集まったゴブリンの兵士も「ホブゴブリン」を主体としているので体格的にも魔族軍に見劣りしない。
「これ・・・俺達、要ります?」
「要らないかも」ガストンも苦笑いだ。
《お二人共?慢心と油断は身を滅ぼしますよ》
前世で油断から命を落としてしまったエリカからの叱責が飛ぶ。
「はっ!はい!すみません!」
「その通りですね!すみません!」ピシッとするガストンとロイ。
イリスの中で「登山家」とは「指揮官」でもあるとの誤解が増えた。
やべぇ、可愛らしい黒龍ラザフォードと違ってグリフォンロードのエリカ、
マジで強いかも・・・
ちなみにエリカの前世の本名は永吉絵梨花
その家系は九州は「鬼の島○家」のほぼ直系である。
先祖の凄まじい戦闘能力をしっかり受け継いでいる物と思われる。
「登山家」に属性「武士」が追加された。
どれだけ属性を増やせるかイリスと勝負ですな?
「別に勝負なんてしてないわよ?アンタが勝手に属性増やしてるだけじゃない?」
《でもあながち冗談でも無いかも知れませんね。
初めての戦場で怖いんですが妙に落ち着いている自分がいます。
なにか高揚感すらあります》
「た・・・頼もしいですね!」
「エリカさんは生粋の戦士の血筋なんですね」
何かエリカ信奉者が増えて来た?
でもそれくらいの気概が無ければ女子大生が単独雪山登山をしようなんて思わないよね。
それから予定通り雪崩れの罠を仕掛けるべく偵察を行い、魔族軍予想進軍ルート7ヶ所に爆薬を設置した。
最初、雪崩れ発動は風の魔法で、と思ったが爆薬の方が確実で爆破はゴブリン隊がやってくれるとのドンゴの提案だった。
残念ながら山肌全面崩壊の「山津波」作戦は岩盤が強く不可能と判明したが、
そのぶん投石用の岩が無尽蔵にある事が判明する。
良さげの岩は各陣地にせっせと運び込んでおいた。
他はエルフ提供の高性能多連装弓矢を使い接敵ギリギリまで敵の戦力を削るつもりだ、後のバリスタの原型になる武器である。
「野城戦?・・・ですか?」キョトンとするドンゴ。
またエリカが聴き慣れない戦法を提案して来たからだ。
《はい、このまま開戦すると敵と真っ向勝負になってこちらにも被害が出ます。
山道を城の通路に見立てて伏兵を配置するべきです。
大きな岩は射塔に見立てて弓兵を多く配置すると効果的です。
木々は城壁だと思って下さい》
「なんともユニークで恐ろしい発想ですね」
今まで聞いた事も無い見事な作戦にガストンも感心している。
《いえー・・・過去敵方のこの作戦でご先祖様がとんでもない大負けした事があって、それからご先祖様が一生懸命に研究してたらしく本家に研究した内容の本が沢山あり暇つぶしにずっと読んでたんですよ》
島○家の秘蔵の戦術の研究書・・・それはもはや「兵法書」なのでは?
「少しエリカさんが怖くなって来ました」
「そうですね、見た目は美しいグリフォンなのに・・・」
思わぬ「軍師」を手に入れたゴブリン軍団、とりあえずイリスとエリカは司令部で待機してドンゴの補佐をする事になった。
「エリカが居た「日本」って怖い国なのね?」
イリス的には「日本」は年がら年中戦っている印象を受けたのだ。
《今は平和ですよー、もう80年くらいは。
でも歴史が2500年と長いので、その間には悲劇もたくさん起こりました。
80年前に約400万人の人が亡くなった世界戦争を乗り越えたんです》
「よ・・・400万人?!」ラーデンブルク公国の人口は380万人だ。
《でも・・・世界戦争で他の国では3000万人以上の方が亡くなりました・・・
それにも懲りずに現在も戦ってます。人間ってダメな生き物です・・・》
独ソ戦の「絶滅戦争」の事ですね。
「3000万人って中央大陸の総人口と同じじゃない!」
現在の中央大陸の人口は3200万人と言われている。
「なんて怖い世界」とイリスは思った。
ああ・・・だから世界・・・魔法にも見放されたのか・・・とも。
「この世界はそんな風には絶対にさせない!」
エリカの話しを聴き、ある種の使命感がイリスに芽生えたのだった。
《その通りです!
奴隷獲得の為に他の国に攻めて来るなんて許せません!
世界の為に魔族軍を倒しましょう!》
気合い充分な二人。対魔族軍との開戦が迫る!




