70話 「豊穣の祝福」その6
ハイエルフ達が旅の疲れを癒してる間にゴブリン達は捧げる供物の用意を始めた。
主な供物はこの土地で出来た農作物だ、それに新たに作りたい農作物の種子、
これらを祭壇に供えて仲間に入れて欲しいと大地に願うのだ。
決して植物の生態系を変える訳では無い。
「胡瓜に茄子、白菜に大根・・・荒れた土地でも実るトマトもダメかぁ。
芋類は大体、大丈夫なんだね」
実らない野菜のラインナップをゴブリン達と確認しているイリス。
「そうなんですね、持ち込んだ果物も大体、受け入れて貰えたのですが・・・
野菜類だけがどうしても」と溜め息をつく供物担当のゴブリンの女性。
「まさか・・・この土地の神様が「野菜嫌い」なんて子供見たいなオチなんてないでしょうね?」そんな疑いも持ち始めたイリス。
そうなると少し厄介な事になる、説得に失敗する可能性があるのだ。
しかしまぁ、そこはそれでハイエルフも神様の様な者であるから?
力技を使って何て事も可能なのだが今後の土地神様との付き合いを考えると、あまりよろしく無いので説得出来る事に越した事はないのだ。
「儀式は少し手間取りそうだなぁ」イリスは独り言を呟いた。
だが1番の問題は小麦だ。
「ふむ、豊穣の祝福が成功したとしても小麦を栽培するには土壌に合っておらんな」
クレアが軽く土地の検分をして1発目で指摘した事だ。
「やっぱりそうなのねぇ・・・」少し落胆する白ちゃん。
これは豊穣の祝福が成功してもダメな話しで大掛かりな土壌改良工事が必要になる。
良くやるのが畑を撹拌して貝殻と肥料をを撒く工事なのだが、実際に改良した土地を寝かせ小麦が実るまで数年は掛かるのだ。
「ふむ・・・小麦が収穫出来る様になるまではラーデンブルクの小麦を優先的にこちらへ卸すとしよう、代金はそちらで余り気味の芋類でどうじゃ?」
これはラーデンブルク的に旨味は少ない取り引きだ。
どちらかと言うとエルフ側からの援助と言って良い物なのだ。
「・・・女神様」両手を合わせてクレアを拝む白ちゃん。
「やめてくれい!神に神呼ばわりされるのは妾でも困るのじゃ!」
イフリートの白ちゃんは地域によっては「神」と認識されている。
少なくともエルフはイフリートの事を「火の神」として崇めているのだ。
つまりこの世界の「神」とは自分達に益がある超常の存在を指しており、その地域によって神にも悪魔にも変わる。
オーガロードの白ちゃんはクレアを女神様に認定してしまったので今後ハイエルフのクレアは鬼族の女神様となった。
「い、イリス!妾を助けてくれい!」
他のハイエルフと共にせっせとメインの祭壇作りをしていたイリスをクレアが抱き上げて攫う。
「ななな何ですか?師匠」
蝋台を持ったまま攫われたイリス、他のハイエルフもポカンとしている。
別に攫う必要は無かったのだがテンパったクレアはイリスは木陰へ連れ込み経緯の説明をし出す。
全ての説明を聞いたイリスは・・・
「別に良いんじゃないでしょうか?」と答えた。
「なっ何故じゃ?!」
「いえ、ここに永住して毎日祭壇の上とかで崇められるとウザ・・・困りますけど豊穣の祝福の儀式が終わるとラーデンブルクに帰国しますよね?
その後鬼族が師匠を女神と崇めても師匠に直接の問題はないですよね?
むしろ今後の交渉がラーデンブルクに有利に働くのではないでしょうか?」
幼児に諭される15000歳。
「ぬ?確かにそうじゃな・・・」
「いっそのこと擬似女神を演じて儀式を神格化してしまえば良いかと思います」
イリスの「逃げられないなら逆に利用しちゃおうぜ!」計画だ。
「お主は妾より為政者に向いておるのぉ」感心するクレアだが・・・
結構この世界では行われている手法なので特別イリスが凄いと言う訳ではない。
「そんな事はないですよ?
ああ!それなら師匠の衣装はボンッキュッボンッ!的な蠱惑的な物にしましょう!
すみませーん!」
そう言いながら衣装担当の女性の元へ走り出すイリス。
「ママママ待て!!待て!イリス!ボンッキュッボンッんん??!!
蠱惑的ってなんじゃあ?!」
イリスを追いかけるクレアだがイリスがめっちゃ疾い?!
幼児体型を活かして人の隙間を縫う様にちょこまかと走り抜けるのでクレアはイリスの事をあっという間に見失う。
「ええええらい事になってしもうた・・・」
こうしてクレアは、ほぼ布1枚だけの見えそうで見えない超セクシーな衣装を着るハメになった。
それを見たガストンが鼻血を噴いてシルフィーナが不貞腐れるまでが定期である。
そんなこんなで豊穣の祝福の儀式が始まる日が来た。
「いいい嫌じゃ!嫌じゃあああ!!」
衣装の布を手にジリジリにじり寄る衣装担当の女性にクレアは抵抗するも相手はプロの集団、あっと言う間に全裸にされてサクッと衣装の布を巻かれるクレア。
イリスは普通に緑を基調にしたハイエルフの神官の衣装だ。
ガストンとロイとエリカは各地の祭壇作りの材料運びを手伝っている。
「何で私が神官の衣装を?」エルフの神官装束のシルフィーナは不思議そうだ。
緑の髪に緑の衣装が重なって実にエルフっぽいシルフィーナ。
白ちゃんは祭主の1人なので既にメインの祭壇へと向かっている。
「ええ~、私もこの格好するの?」今日の白ちゃんは精霊イフリート仕様だ。
クレアと色違いの超セクシーな衣装だが普段より露出が少ない不思議。
自分だけ目立ちたくないクレアたってのお願いなのだ。
これによりガストンの鼻血噴射不可避である。
メイン会場の小川の中洲にはゴブリンが200名、オーガが100名が集まりハイエルフ達と一緒に祈りを捧げる予定だ。
各所の祭壇の準備完了の知らせが届き、いよいよ豊穣の祝福の儀式が開始された。




