62話 「豊穣の祝福」その3
「良いですかロイさん?!私は女神ではありません!
なので私がロイさんの奥さんや娘さんに何かするなどあり得ません!」
必死にリザードマンのロイを説得するイリス。
しかしロイは土下座の態勢のままブルブルと震えている。
「私ってそんなに凶悪に見えるのぉ?!」とショックを受けるイリス。
大丈夫だイリスよ、コロコロエルフをそんな目で見るのはリザードマンだけだ。
《そうですよ!イリスはこんなにコロコロしてて可愛いのに!》
「やかましい!」
「そうですね!申し訳ございません!コロコロ様!」
「誰がコロコロ様ダァ?!滅ぼすぞ?!リザードマン!」
「ひいいい・・・お許しをーーーー!!」
なかなかカオスな状況になって来た所で・・・
「とりあえずロイさんの家でちゃんと話しをしたら?埒が開かないから」
いつの間にか人化した冷静なブリックリンにツッコミを入れられて・・・
「あっ、はい」
「はいい!喜んでぇ!」
少し冷静になった2人、何とか話しが前に進みそうだった。
何か良く分からない内にロイさん宅にお邪魔をする事になり、
沼地の奥深いロイの住処の洞窟まで来た一行、中に入ると外観とは違いシックな仕切り壁や家具なども揃っていて洞窟内とは思えない文明的な家だった。
家主であるロイが当然先に家に入ると、
「おかえりなさいアナタ、無事で良かったわ」ロイを見てホッとした様子の奥さん。
「おとーたん!おかーえり」よちよちと歩いて来る娘っ子。
家族から出迎えられる。
「レイ、ミイ、すまない、お父さんは女神様に無礼を働いてしまい天罰を受ける事になってしまった。
その代わり、お前達に罰が及ばない様にお願いするつもりだ」
「ええっ?!そんなぁ?!」
「おとーたん、いなくなる?やだー!ふええええんん」
「そんな事しないからーー!!お願いだから話しを聞いてぇーーー!!」
すっかりと邪神にされてしまったイリスはまたキレた。
「女神命令です!座って話しを聞きなさい!」
もうこうなったらヤケクソで女神の職権濫用をするイリス。
女神命令で椅子に座って話し合いをする事になった、今回イリスは悪くない。
事の顛末をレイとミイに話すロイ・・・顛末なんてあったっけ?
「そ・・・そんな・・・女神様になんて無礼を・・・」夫のやらかしに慄くレイ。
「無礼じゃ無いから!許すから!気にして無いから!
良い?!女神様命令よ!今回の事は女神イリスの名を持って忘れなさい!」
「はーいイリスさまー」ミイが1番物分かりが良かった。
「はっ・・・はい!分かりました!」
「はい!い・・・今、全てを忘れました」・・・全て忘れる必要無くね?
「こっこんなに疲れる種族だったの?リザードマンって」
女神様攻撃にメンタルをゴリゴリ削られたコロコロエルフだった。
リザードマンは長年に渡るハイエルフ信仰で少し思い込みが激しいのだ。
こうしてようやく本題に入る、
「この辺りの観光地と言うか珍しい場所とか面白い場所を教えて欲しいの」
せっかくの休暇なので遊び倒す気、満々のイリスだ。
「イリス様にとって何も面白くない物ばかりですよ?
妖精の花畑とか空飛ぶ虹色の魚とか幻のお城とか、その程度しかありません」
「いや!充分気になるパワーワードばっかりだから。幻のお城って何?!
そんなの興味しかないんですけど?!」
思わぬ収穫に前のめりになるイリス。
「年に二回、この先の湖の真ん中にお城が出現するんです」
「出現って、それっていつ?」もう目が輝いているイリス。
「おそらく2ヶ月後の満月の夜の間だけ出現するはずです」
「ほうほう」
ゴブリンが書いてくれた大まかな地図にもロイが話す湖がある。
「儀式が終わったら絶対に見に来よう!」と誓うイリス。
「何でも5000年前に女神クレア様の居城だったらしいです」
ブフウー!!盛大にお茶を吹き出すイリス。
「ケホケホ・・・女神クレア様ってラーデンブルク公国のクレア様?」
「そうですね、イリス様もクレア様をご存知で?」
「そうね良く知っているわ、クレア様はもうすぐこの地域にやって来ますよ?
ロイさんも会います?」
ゲボォ!!ロイもお茶を吹き出した。
2人の吹き出すお茶が狙った様に全てレイにブッ掛かっている。
リザードマンなので濡れるのを全然気にしないので特にリアクションは無い。
それを見てブリックリンは少し引いている。
なかなかあざといミイは既にイリスの膝の上で寝ている。
イリスも久しぶりに自分より小さい子の相手を喜んでしている。
「そんなクレア様にお会いするなんて・・・」
「実は豊穣の祝福と言われる儀式をこの地で行います。
この地の人達が大勢参加して頂けるなら儀式の成功率が上がるんです」
これは本当の話しで地域の人達が一緒に世界に願う事で効果も上がるのだ。
逆にハイエルフが勝手に地域の住人を無視して豊穣の祝福をしても世界に弾かれるだけとも言える。
その事を力説するイリス。
ロイもイリスの説得に儀式の参加をする方に心が動く。
最終的にロイ一家の儀式の参加が決まる。
本当は知り合いのリザードマンにも参加して欲しいのだが、こんな人目に付かない所で暮らしてるのだ何か理由があるんだろうと思い何も言わなかった。
こんな感じで遊びながら豊穣の祝福の儀式の準備も怠らない要領の良い、
コロコロ幼児エルフだったのだ。
「ねえ・・・ドンドン属性増やすのやめてくれない?」




