56話 「鬼達の街」その2
待てと言われて待っているとゴブリンロードと思しき体長2mをゆうに超える大きなゴブリンが凄い速さで走って来たのだ。
「え?もしかして危ない?!」そう思って警戒しながらゴブリンロードの顔を見るとめっちゃ嬉しそうな顔をしてる?
「ようこそいらっしゃいましたイリス様!」
「いっイリス様?はいイリスです、よろしくお願いします」
「わたくしめはドンゴと申します、お会い出来て光栄です。
それで本日はどの様なご用件で?」
「ドンゴさんよろしくお願いします。
はいえ~と、ラーデンブルク公国公爵クレアより親書を預かって参りました」
「おお!それはなんとご丁寧に!勿論この街を挙げて歓迎致します!」
なんかトントン拍子に話しが上手く行き過ぎて怖いくらいだ。
《害意は無いですけど妙に興奮してますね?
地龍のブリックリンが後ろに居るのにイリスにしか目が行ってません》
《まさか?!ロリコン!》
《違うと思いますよ、私じゃあるまいし。
何か困ってた時にナイスタイミングで待ち人が来た!って感じ?」
おい・・・感じ?じゃ無くて今、お前なんて言った?
《何か今、凄いカミングアウトしなかった?シルフェリア?》
《してませんよ?》
《だって今・・・》
「あの・・・イリス様?いかがなされました?」
「ああいえ!すみません」
後で絶対に問い詰める!と決意するイリスだった。
歓迎してくれるとの事なので思念波でガストンとシルフィーナを呼ぶ。
するとすぐに2人が来てガストンを・・・人間の姿を見ても上機嫌なドンゴ。
前回は特に人間が来たから不機嫌になった訳ではない様だ。
まだ一部未完成だが新築の綺麗な東屋に案内されて歓迎の食事が出される。
「おや?」イリスは不思議そうな顔をする。
豪華なゴブリン料理なのだが・・・魚魚魚魚のオンパレードなのだ。
味覚が人間に近いゴブリン料理は和風中華料理に似てて人間にも人気がある。
イリスも魚は好きなので食べてみる・・・うん!スパイス効いてて美味しい!
「イリス様、こちらもどうぞ」
この周辺で採れる珍しい果物との事・・・うん!甘くて美味しい!
ここで何が疑問かハッキリとする。
ゴブリン料理に欠かせない「野菜炒め」が無いのだ。
付け合わせには必ず出て来るくらいにゴブリンは野菜が好きなはずだ。
「ドンゴさん?もしやこの地域では「野菜」が育たない植生なのでは?」
そう質問すると「クワァ!!」と目が開いたドンゴ。
やはりSランクの魔物のゴブリンロード、かなりの迫力がある
「そうなんですよイリス様~・・・
植えても植えても持って来た野菜の苗が枯れるんですよ~・・・野菜だけで無く小麦もダメなんです」
サメザメと泣き出すドンゴ。
そうなのです、ゴブリンの主食は「ゴブリンパン」と言われる、まんまクロワッサンなのです。
それなのに主食の小麦が育たないのは非常に辛い所だ。
「それであの・・・イリス様に・・・」
「あ~そっかぁ~、私に「豊穣の祝福」をして欲しいのね?」
やっと大歓迎の意図を理解出来たイリス。
ハイエルフの特別な固有能力「豊穣の祝福」
大地を祝福してその土地の植生を好きに変えれるブッ壊れチート能力だ。
「お願いします!!」ドンゴが頭を下げると、
「「「「「「お願いします!!!イリス様!!!」」」」」
集まっていた50人ほどのゴブリンも一斉に頭を下げる。
これは嫌とは言えないイリスだった。
「え~と、「豊穣の祝福」はエルフと関わりの無い者には門外不出なのです。
親書通りに同盟を結んで頂く必要があります」
多分、普通に同盟を結んでくれるとは思うが一応交渉条件にするイリス。
「それはもう!喜んでラーデンブルク公国と同盟を結ばさせて頂きます!」
「交渉成立ですね!・・・ああー、でも一回帰らないとダメです。儀式に必要な物が無いんですよぉ」
これはマジ本当、結構大規模な祭壇が必要で極秘の道具もいる。
「そうですか・・・お待ちしております」
それからその旨をクレアに手紙を転移陣で送った所・・・
『そう言う事なら妾が儀式をやろう。
祭壇の準備と大人数での移動の時間があるから到着は1か月ほど掛かる。
イリス達は休暇を兼ねて周辺の地図の作成をしながら到着を待つが良い』
との返信が来た。
この時代はまだ転移陣で人間を長距離で送れる技術が無く、手紙の転移で連絡を取るのが一般的なのだ。
将来的にイリスが長距離を人間でも送れる高性能転移陣を開発するのだか500年以上先の話しだ。
その事をドンゴに伝えると街を挙げて大喜びした。
ハイエルフのクレアは世界的な有名人なのでゴブリン達も嬉しかった様だ。
「地図を作って良いですか?」
「どうぞどうぞ、あっ!完成したら複製で良いので・・・」
「勿論差し上げますよ」
普通は自分達の地域の地図を余所者に作られるのは嫌なはずだがイリス達は信用されたのだ、早速地図の作成に取り掛かる。
大まかな情報を休憩中のゴブリン達から聞いて回る。
闇雲に動いても楽しくないからね、せっかくなので面白い場所を回りたいのだ。
「ここら辺に滝がありますよ」
「この海沿いの洞窟は凄い綺麗なんです」
色々と面白そうな事を教えてくれる中・・・
「この辺りに「オーガ」様の集落があります」
イリスの琴線に触れた情報をゲットする。
そう言えばオーガとオークが居ないなぁと思っていたらオーガはこの街周辺の警備の為に街の外周部に集落を構えているそうだ。
オーク達は潮風が苦手らしくもっと内陸部を拠点にしてると言う話しだ。
オークとオーガはどちらも仲良くやっているとの事だ。
後日、知り合いになったオークに「何で潮風が苦手なの?」と聞いて見たら、
「鼻の奥に塩が溜まり病気になるんだ」との事。
結構深刻な理由だった。
ともあれオーガの集落に突撃して見るイリスだった。




