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51話 「ドライアドの森の戦い」その6

ゴリゴリと何かを削られた会談が終わりイリス達は詳しく王都の実情を調べると外に逃げ出した。


「つっ・・・疲れたぁ、本当に変な海龍!!嫌い!」


ブリックリンとシルフィーナは驚いた表情で、

「イリス!気が付いていたのですか?!」とシルフィーナが尋ねると、

「だって途中からわざと隠蔽解いたんだもん気付くよ」と答えた。


《あの海龍さん・・・何が目的なんでしょうね?》


「だからイリスを「王」に据えたいんじゃないっすか?」


「理由は?」ブリックリンの指摘に憮然とした表情になるイリス。


「多分「ハイエルフ」だからじゃないかな?」


「それだけで??!!」


イリスはそう言うがハイエルフは「王になる宿命」を産まれながら背負っている。

だから「お試しでうちの「王」どうっすか?」とクレマンが言い出したのだ。

いや、お試しで幼児を王にすんなよ!


「でも海龍がこんな事して良いの?」人間に加担して良いのか?との疑問だ。


「多分、海龍王様からはキツいお叱りを受けると思う」


「だよねぇ?」


《変な海龍さんですねぇ》


でも何だか分からないけど海龍が味方なら心強いよね!との結論に達して予定通りに王都に居る兵力と街の状況を確認し始めるイリス達。


街の人間の身なりはボロボロだけど食糧は充分に有るので覇気があり士気は高い事が分かる。


老若男女の誰もが「ゴルド打倒!」に燃えているのだ。


「こうなると問題は「装備」だよね」

士気が高いが携帯してる武器が短剣や鍬、竹槍ではゴルド軍の兵士の鎧を貫くのは難しい。


クレマンが元領主の館の物を全て売り払った理由が分かる。


「ゴルドから貰っちゃう?」ブリックリンがニヤリと笑う。


「うふふ、私も同じ事考えちゃってた」

武器が無ければ敵から奪えば良いよね!だ。

こうして闇夜に紛れてゴルド軍の武器保管庫襲撃が決まった。


その夜早速行動を開始する龍騎士イリス、狙いは後方の陣屋だ。

かなり戦線が虫食いになっているので空から後方に回り込むのは造作も無かった。


《うふふふ・・・やっぱり敵は油断してますよ、武器は全部頂きです》

ダークシルフェリアの再降臨だ、

シルフィーナはシルフェリアの豹変ぶりに驚いている。


「シルフェリアは戦闘になったら燃えるタイプだったのよ」


「そ・・・そうなんですね」


今回は戦闘は行わず武器泥棒が目的だ、出来れば何回も盗みたい。

速度重視なのでブリックリンがイリスを肩車して突入する。


「結構、力作業だけどシルフィーナ様は大丈夫っすか?」


「問題無いわ、風の魔法で浮かべるから」


とりあえずシルフェリアの霊視で見廻りの兵士の行動を観察して誰も保管庫周辺に居ない警備の穴を見つける。


やはり食糧保管庫の方に警備が集中していて武器庫の警備はかなり手薄だった。


「前の俺たちの攻撃が効いているね」


「そうだね」


イリス達の食糧保管庫への執拗な攻撃で敵の意識はそちらへ向いているのだ。


《イリス、目標は?》


「出来ればショートソードが沢山、弓矢はエルフからも支給出来るから」


やはりエルフの弱点は「鉄製品」なのだ。

南の大陸のラーデンブルク公国は亜人の集落から買い付けが出来て問題ないが中央大陸ではかなり入手に苦戦している。


《見つけました!右から3番目の倉庫です!》

シルフェリアの霊視は「木製品」に限り「透視」する事が可能なのだ。

相変わらずのブッ壊れ能力で呆れる。


「行くよ!」イリスの号令で走り始めるブリックリンとシルフィーナ!


「おおおおお??」イリスも驚くほど足がめっちゃ速い2人。

ほとんど音も立てないで・・・足動いて無いじゃん?!


「これは地龍の固有技の「地走駆」って技だよ」


「私は風で浮いてますわ」


2人共リニアモーターの様な技を使っているのだ。

ブリックリンは空を飛んでるが他の地龍の一般的な移動方法らしい。


あっという間に倉庫に取り付いて「キィ~」と扉を開けると木箱が沢山積んである。


《これとこれ、後これも》シルフェリアがテキパキとショートソードが入った木箱を見つけて2人に指示を出す。


「よし、撤収」また音も無く敵の陣屋から遠ざかる3人。

ここまで掛かった時間、5分30秒!当然、敵は全く気が付いていない。


ブリックリンとシルフィーナが竜化して華麗にトンズラをかます。

朝方に王都に到着して中身を確認して見る。


「おおーーーー」

さすがダークシルフェリアの霊視、5個の木箱の中身は新品のショートソードがみっちりと詰まっていた。




「あげる」イリスがそう言って街の住人にショートソードを配ると、

「おお!有り難いけど代金が・・・」そう言って受け取るのを渋る住人に、

「大丈夫よ!ゴルドから掻っ払って来たから!」と笑うイリス。


オオオオオオーーーー!!住人達から歓声が上がる!


こうして毎夜、武器泥棒に勤しんだ結果、街に居る戦闘可能な18000人の全てに、

ペッカぺカのショートソードが行き渡った。


加えてクレアに要請していた木製の中弓が800、矢が20000本も到着する。

矢は随時追加で送ってくれるとの事だ。


徐々にではあるがピアツェンツェア王国の反攻の準備が整って行く。


「後は防具だよね」


「さすがにゴルド軍の武器庫の警戒が厳しくなって来たからね、18000人分の防具の泥棒はさすがに難しいかな?」


ここまで盗まれるとゴルド軍も気が付いて武器庫の警備を厳重にして来たのだ。

その代わりまた食糧保管庫の警備が手薄になったが・・・


するとイリスがニコリと笑って、

「じゃあまた食糧保管庫を襲撃しよう!」と満面の笑顔で言う。


鬼の様な幼児であった。

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