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47話 「ピアツェンツェア王都」その1

予定通りにピアツェンツェア王都の手前10kmで降りて歩きで街に向かう龍騎士イリス一行。


周辺は最近戦があった様だ、死体などは埋葬済みなのか見当たらないが、家などが焼け落ちて戦さ場特有の荒廃した様子を感じる。


「人間同士で争うなんて馬鹿見たいね」そう吐き捨てるイリスの物言いが冷たい!

でも・・・本当にそうだよね、人間って馬鹿だよね。


《イリス》


「分かってるよ・・・500m先に複数人の反応があるね」


気配を消して接近を試みるイリス達、人間の生態を調べない事には話しが進まないのだ・・・いや生態って・・・同じ人族とは見なしてないのだ。


見ればピアツェンツェア王国の兵士達が瓦礫の片付けをしていた。


「クソ!ゴルドのクソ野郎ども俺の村を・・・」

この村の出身と思われる兵士がゴルド軍に悪態をつきながら廃材を積んでいる。


「まぁ、ヴィアールの領主さんが村人を街で全員保護してくれてたから死人が居なかったのは不幸中の幸いだったよな」


「そうだけどよ・・・やっぱり悔しいよ」

見れば悔し涙を流しているのだろう少し目が赤い。


「今後はエルフと共同戦線を張るんだろう?エルフ達とゴルドのクソ野郎共を叩き出してやろうぜ!」別の兵士が意気込むと、


「あったり前だろ!エルフ達だって俺達と同じ様に理不尽な目に遭ってんだろ?

一緒にぶっ潰してやろうぜ!」他の兵士も同意する。


そんな会話を聞いてイリスは・・・「悪いのはゴルド?」と呟いた。

イリスはもう少し情報を知りたくなる。


この後、兵士達は会話をする事も無く黙々と作業を始めたのでイリス達はそっとこの場を離れた。


「どう思う?」

言葉では理解出来るがイマイチ人間がまだ理解出来ないイリスはブリックリンがどう考えているか聞いて見る。


「彼らの言葉通りじゃないかな?

自分達に害を成すゴルド軍をエルフ達と協力して追い出したいって」


「私達と同じだね」


「そうだね」


シルフィーナとシルフェリアの精霊2人は何も言わない、これはイリス自身が考えて理解しないといけない問題なのだから。


王都に近づくと少しずつ女性や子供もちらほらと見える様になる。

おそらく自分の家の様子を見に来てるのだろう。

もうこの周辺の家は全てゴルド兵の略奪に合い火をかけられて使い物にならない。


嫌いな人間達がどうなっても構わない!そう思うイリスだが・・・


焼け落ちた家の前でギャン泣きする子供を見ると例え様の無い怒りが湧いて来る。

西の大陸のウッドエルフが誘拐されたと聞いた時と同じ怒りだ。


「何で怒ってるんだろう私?」


「腹が立ったら怒れば良いと思うよ」


「そうかな?」


「そうだよ、頭に来てるんでしょ?」


「・・・・・うん」


この怒りの理由が分からないまま王都の入り口まで来たイリス。

別に変装した訳でも「隠蔽」の魔法を使った訳じゃ無いが自分の事に必死な人々はイリス達に気がつかなかったのだ。


しかしさすがに門番の兵士は気が付いて近寄って来る。


「君達はどこから来たんだい?・・・ん?君はエルフかな?」

門番としての警戒はしているがエルフと分かってもそれについて警戒する素振りは無かった。


「ラーデンブルク公国公爵クレア・ラーデンブルクからの使者として来ました。

龍騎士のイリスと申します。

ピアツェンツェア王国国王様に御目通りを願います」


嫌いな人間だが、それで礼を欠いて良い道理など無い。

極めて丁寧な口調で要件を伝える。


「なるほど・・・分かりました。

ですが兵卒の自分には判断出来ません、申し訳ありませんが上司が来るまでお待ち頂けますか?」


兵士は理にかなった事を丁寧に説明して来たので、

「分かりました、よろしくお願いします」と丁寧に言葉を返した。


「ご覧の通りの有様で水くらいしかお出し出来ませんがこちらでお休み下さい」

別の兵士が自分達の詰め所へ案内してくれる。


「水くらいしか」と言ったが戦時中の水は貴重品だ。

自分達に出来る限りの歓迎をしようとしてくれてるのが伝わって来る。


「ありがとうございます」

この気持ちにはお礼を言うしか無いイリス。

人間にお礼を言う時が来ると思って無かったのに自然に出た言葉に自分で驚いた。


兵士はイリス達を椅子に座る様に促して人数分の水を出してくれた。

喉が渇いていたイリスは何の抵抗も無く水を飲む。


水を飲んだ後で「毒殺」の可能性があったのに無警戒だった事にも驚くイリス。


「私はこの人達を「味方」だと思っているの?」

心の中で自問自答をして・・・「やっぱりまだ分からない」と思った。


見るとブリックリンとシルフィーナは迷う事無く水を飲み干した。

別に飲む必要は無いが敵意が無い事のアピールの為だ。


3人が迷い無く水を飲み干して少し安心した様子の周囲の兵士達。

これも敵の間者を見分ける一つの手段なのだ。


穏やかな雰囲気になりイリスは街の様子を伺う余裕が出来た。


・・・・・・酷い有様だ。


王都とは名ばかりの荒れた街だとイリスは思う。

破壊された家屋を無理矢理に修理した家が並んでいる。


壊れた城壁を土嚢やその辺で拾った石で補強をしている女性達と子供。

足が弱っているのに剣を持ち足を引きずりながら歩く老人。

誰もがこの危機に生き残ろうと必死になっている。


ウッドエルフはまだ恵まれていたのだな、とイリスは思う。

何だかんだと精霊達が助けてくれて、地龍達も守ってくれていた。


でもこの人達にはそんな加護は無いのだ。

今日を生きる為には自分で何とかしないとダメなのだ。


少しずつだが人間を見る目が変わって来たイリスだった。

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