31話 「宝探しゲームの始まり」
「クレアが隠した飛行用魔道具を探せ」イリスに新しいミッションが課せられた。
「しかしただ探すのも修行にならぬな・・・
よし!少し小細工をしてくる故、少し待っておれ」
そう言ってどこかへ行き次の日に帰って来たクレア。
「ほれ、宝の地図じゃ」
とクレアが差し出したのは妙にクオリティの高い宝の地図だった。
どうやらクレアはなかなか凝り性な所がある様だ。
「宝の地図!」宝の地図を手にイリスの瞳がそれはもうキラキラ輝く。
子供ってこう言うの好きだよね。
《宝の地図!》お前もか?!シルフェリア!君は大人でしょ?!
「シルフィーナも一緒に探す?」探すよね!と言った感じのイリスだったが・・・
「あっ・・・私は森の管理の引き継ぎがあり、暫くは地龍の都に行ってますわ。
シルフェリア様が何も出来ない状態なので全ての書類を整理しないといけませんの」
《すみません!よろしくお願いします!!》やぶ蛇になる寸前だったシルフェリア。
こうして宝探しが始まったのだった。
しかし・・・
クレアが簡単だと思ってる事は他の人間からしては超難解な事だったのだ。
まぁ、遊びなので危険は余り無いのだが・・・《余り無い?》何でもねえっすよ。
とりあえず現地視察だね!と家を出たら玄関先に焦げ茶色の若い地龍が居た。
「あれ?地龍さん?どうしたの?・・・・あー!!ブリックリン?!」
「「おっ!1発で気が付いてくれて嬉しいね、結構見た目変わったんだけど。
イリスが帰って来たって聞いたから来て見たんだ」」
「おおー!普通に喋れる様になったんだね!来てくれてありがとう!」
地龍の名前はブリックリン、土竜の時にイリスと友達になり名前を付けて貰った。
ドライアドの森で進化の眠りに付き、去年の終わり頃に無事に地龍になった。
龍都に帰還してその後の半年間は龍都で色々と勉強漬けだったのだ。
イリスが龍騎士になった際は専属の乗龍になる約束をしていたので、約束を守るべく律義に訪問して来たと言う訳だ。
「そうだ!ねえねえ!これから「宝探し」に行くの!
ブリックリンも一緒に行きましょう?!ねっ?ねっ?ねっ?」
休暇中なので言葉使いが完全に素のイリスに戻っている。
「「えっ?宝探し?それは面白そうだね、もちろん俺も付き合うよ」」
「やったーーーー!!」
善は急げとブリックリンの首筋にヒョイとジャンプして飛び乗るイリス。
「「イリスは見た目は変わって無いけど随分と成長したね」」
「うっ!本当は背も伸びたんだけど・・・縮んだ」
「「・・・縮んだんだ?」」
「うん・・・」
《その時のイリスを見たかったわぁ》悔しそうなシルフェリア。
「「あれ?シルフェリア様?!復活したんすか?マジで良かったっす!!」」
《かなり限定的ですけど、ご心配をおかけしました》
「「良かったな!イリス!」」
「うん!」
こうしてシルフェリアとブリックリンが復活してようやく落ち着いた事を自覚出来たイリス・・・
なので心置きなく宝探しだ!
「「飛行用の魔道具?そんなモンあったんだ」」
イリスから宝物の説明を聞いたのだが、この世界にはまだ「飛行艇」の類い物は無いのでいまいちピンと来ないブリックリン。
《魔力を下に撃ち出して飛び上がるのかしら?》
シルフェリアさん、それはロケットですよ。
「飛行用って言うから飛竜見たいな形だと思う」
さすがキレてる天才幼児イリス、1発で形状を言い当てる。
「「と言う事は・・・翼は滑空出来る様に胴体より大きいな?
人間1人飛ぶには最低でも片翼は3m、両翼で6m、長さはバランス的に同じくらいの長さが必要だから魔道具の大きさは10m四方以上はあると思う」
ズバッと魔道具の大きさを言い当てるブリックリン。
彼も武力だけの龍では無さそうだ。
《結構大きいですね・・・隠せる所が限定されて来たわね!》
1番ウキウキしてるシルフェリアはとても楽しそうだ。
「う~ん?師匠の事だから・・・わざわざ穴を掘って埋めるとは思えない。
・・・と言う事は洞窟内?」
《それだ!》「「俺もそう思うよ」」
これで初動の方針が決まった「洞窟の捜索」だ。
早速、イリスはクレアから貰った四つ折りの地図を広げる・・・
かなり精巧な作りの「地龍王の山」の地図だった。
ちゃんとメモ用の余白があるのはさすがクレアの一言だ。
《これ・・・紛失させたら、かなり不味い物なんじゃ無いかしら?》
「「そうっすね、間違っても「魔族」なんかに流出させたら大変ですね」」
軍事的にも利用出来る精度の高い地図なので紛失厳禁だ。
地図から10m四方の物を隠せそうな洞窟は13ヶ所ある。
《思ったより多いですねぇ》
「「でもやり甲斐があって楽しそうじゃないっすか?」」
「そうだね!一つ一つ順番に捜索して行こう!」
イリス探検隊の出発だ!
移動に時間を掛けるのは勿体無いとブリックリンがイリスの乗せ空を飛ぶ。
「わぁ♪空を飛ぶのが上手くなったね!」
「「そりゃ俺はイリスの乗龍だからな、練習もするさ」」
「ブリックリンーーーー!!」
約束を覚えてくれていたブリックリンに感動して抱きつくイリス。
《龍騎士イリスの初めての出陣ですね》
「シルフェリアそれ良い!ブリックリン!初陣だよ!」
「「あはははは♪♪♪」」
こうして龍騎士イリスとなって初めての空を飛ぶ。