夏の特別企画「宇宙を駆ける変態」その7
「良い事?わたくしの為に美しい宮殿を建造なさい?
分かりましたか?豚ちゃん」
「はい!アリス様!」
お馬さん状態のジャコブ139号機とジャコブ317号機を椅子にして豪華なドレスを纏い優雅に座り、膝まついているジャコブ411号機の顎をハイヒールの爪先でツツツーと撫でるアリス様。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや何コレ?!アリスさん?!
とても愛嬌のある可愛い顔をしている妹キャラのアリスには似合わない姿である。
何故アリスがこんな女王様プレイをしているかと言うと・・・
頭脳明晰、優等生な天龍アリスは出撃延期中に海星龍ジャコブの情報を解析していた。
そして今までジャコブの被害を受けた被害者達の行動の分析を行なった結果、一つの答えを導き出していたのだ。
「こんなの変態の望み通りに踏んで思い切り蹴っ飛ばしてやれば良いんじゃね?」と。
要するにムキになって変態に抵抗するから自分にダメージが来るのだ。
蹴って欲しいと言ってるなら自分のストレス発散も兼ねてサンドバッグにしてやれば良いのだ。
「アリス様・・・儂も踏んで貰いたいです」
「ふん、手ぶらで来ておいて何を言ってるかしら?この豚は?
踏んで欲しければフローズのオートクチュール(特注のドレス)でも持って来なさい・・・15分以内に!」
そうは言っても可能な限り変態なんぞ踏みたくないので無理難題を吹っ掛ける。
「分かりましたぁああああああ!!!」
「?!?!?!」
そう言って走り出したジャコブ036号機。
そして13分25秒で「アリス様!完成しましたぞー!」マジでフローズのオートクチュールを持って来た時は、さすがのアリスもマジでドン引きした。
《何でアリスのサイズを知ってるのーーーー?!》
「んん!ご苦労様!!うおりゃあー!!」しかし約束は約束、踏むと言うよりジャンプして膝を使い思い切り背骨をへし折るつもりでジャコブ036号機を踏み付ける!!
ドオオオオオオオンンン!!ベシベシベシ!!と床に入るヒビ!!
「おお!素晴らしい!素晴らしいですぞ!アリス様ー!!」
子供時代にヘルニア持ちの母の腰を踏み踏みした時の如く気持ち良さそうなジャコブ036号機。
アリス渾身のジャンピングニーパッドも変態に通用しなくて凹んだアリス。
しかもドレスはアリスの好みドンピシャの素晴らしい仕上がりでなぜか更に凹む。
後で知ったのだが、ジャコブはフローズブランドの下請けの仕事もしているらしい。
え?フェンリルのフローズさん?変態に仕事を卸していたの。
「変態の作る品物の品質だけはとても良いですからね。
商売人たる者、立ってる者は変態でも使え!ですね」
あっ、そうなんすか、了解です。
そのフローズブランド裁縫部門の変態100名体制でドレスを仕上げたのだとか・・・変態は無駄に能力だけはあるのだ。
サイズに関してはパッと見るだけで分かるのだとか。
「キモ!!・・・んん!!ご苦労様ぁああ!!!!」ズダアアンンン!
余りにも気色悪くて踏むと言うより踵落としをジャコブの脳天に御見舞いするアリス。
「うひょーーーーう!!アリス様!!追加のご褒美ありがとうございます!ありがとうございます!」
今度はマジでブッ殺すつもりで放ったアリス渾身の踵落としも海星龍ジャコブにとって程良い痛みの様子だ。
分かっていたのだが自分の攻撃など上位龍種には全く通用しないと改めて分かり完全に凹むアリス。
《私ってやっぱり弱い・・・もっと修行しよう・・・》
アリスは戦士じゃなくて参謀兼侍女さんなんだから仕方なくね?
ただアリスの無茶な要求は確実にジャコブを疲弊させてる事が分かると立て続けにドレスを要求してジャコブの体力と魔力を奪う事にした。
アリスの為に踏まれて蹴られながらもせっせと働くジャコブ達を見て、
「それで良いんですか?頭大丈夫ですか?」アリスの横に居るシーナがゴミを見る目でジャコブに質問すると・・・
「蹴ってもくれないシーナ姫など嫌いじゃ」プイとソッポを向くジャコブ。
蹴ってもくれない踏んでもくれないシーナお姫様など変態には用はないのだ。
「大変素晴らしく素敵なお話で嬉しいのですが酷くないですか?」
アリスが変態を見事にコントロールしている所を見てもジャコブを踏む気にならないシーナ。
アリスは、このドレス発注作戦で不眠不休で働かせて82体の変態を行動不能に追い込んだ。
貰ったドレス「693着」は天龍教の孤児院に全て寄付するつもりだ。
《ハアハアハア・・・後・・・残りは約400匹》ジャンプのし過ぎで疲労困憊なアリス。
もう既に変態を数える単位が匹になっている女王様が板に付いて来た。
討伐隊の攻撃開始までに可能な限り変態の戦力を削ぎたいとアリスは考えた。
「塔を解体して、その材料を使いわたくしの為に立派な宮殿を建てなさい・・・1ヶ月以内に!」
実行不可能な日数にするのは上手いやり方では無い。
変態を効率良く使うには限界ギリギリ達成出来るラインを見極める事が重要なのです。
「きゅ・・・宮殿をアリス様に献上すれば?」
「殴って差し上げますわ」
「ウッヒョオオ?!?!」我先に一斉に走り始めた変態達。
殴るのと蹴るのと何がどう違うん?と思うが変態がやる気になって何よりです。
塔を使った防御システムはかなり厄介なので今の内に潰してしまった方が良いのだ。
そして1ヶ月後・・・
「おらおらおらおらおらおらおら!!!」
バキバキベキベキベキ!!ドコドコドコ!!バキバキベキ!
「あひゃ!」「うひゃ!」「ああー!」「もっとー!」「アリス様ー!」「さいこー!」
約束通りに宮殿が完成してしまったので片っ端から400匹の変態を殴り倒すアリス。
女王様稼業も楽な商売ではないのだ。
「ぜー・・・ぜー・・・ぜー・・・」
「アリスちゃん、大丈夫ですかぁ?」息絶え絶えのアリスの背中をさするシーナ。
「らいりょうふれふ・・・」全然大丈夫じゃないアリス。
しかし約束通りに400匹の変態をキッチリと殴り倒したのは立派だね!
でもやっぱりアリスは龍なんだから、もう少し鍛えようね!
それから・・・
「色が気に入らないわ、全て青く塗り直して?出来るわよね?・・・3日以内に!」
「無論です!アリス様!」
こうして何やかんやと無理難題を吹っ掛けて変態を消耗させ続けたアリス。
ちなみに今まで出番が殆ど無かったシーナは何をしていたか?
そりゃ勿論、変態の都の防御魔法陣を破壊したり、通話回線を破壊したり、地下施設を埋めたり、見張りが居ない事を良い事に破壊工作をしまくっていました。
拠点の構築のスペシャリストは拠点の破壊のスペシャリストなのだ。
「よーし、施設の破壊はこんなモノですかねぇ」パンパン
変態達が宮殿でアリスの世話に夢中になっている隙にS78彗星に建築されたほぼ全ての施設を使用不可にしてやったシーナ。
「次は燃料の遮断ですねぇ」表層人格をシーナからユグドラシルにチェンジする。
そしてユグドラシルは複雑な術式を起動させる。
ジャコブに余計なエネルギーを与えている彗星のパルスエネルギーを立体型積層魔法陣を使いジャコブと遮断するのだ。
「はい、完璧です」
《ユグドラシルはやっぱり凄いですねぇ》
シーナとユグドラシルを監視もせずに自由にすると、どえらい事になるのだ。
巧妙な遮断魔法で燃料の補給を断たれた事に気が付かずアリスにこき使われる変態達。
燃料不足の為に見る見ると痩せ細って行ったのだった。
《キモっ?!?!》日に日に変態が骨皮筋ゑ門になって行き気色悪さが倍増する。
「そりゃあーーーー」今なら仕留めれる!とローリングソバットを変態に御見舞いする!
スパァーーーーーン!!「ありがとうございます!ありがとうございます!」
やっぱりアリスの攻撃は変態にぜぇーんぜん通用しませんでした。
「さて、アリスちゃん、そろそろ帰りますよ?
ユグドラシルの魔法でそろそろ彗星の地表が爆発しますからねぇ」
「ええ?!爆発ーーー?!」
上位龍種のシーナが3ヶ月も無駄に過ごす訳もなく宇宙空間適正獲得の修行をみっちりと行なって適正ランクをS+にまで上げていつでも脱走可能状態だったりする。
そしてユグドラシルの遮断魔法で星内部にドンドンとガスが圧縮されているとの事。
ボウン!と赤龍化したシーナはアリスを手に包んで地龍王クライルスハイムからトレースしたジャンプを敢行!
「ひゃあああ?!」凄い勢いで宇宙空間に飛び出した!
《5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0です》
チュドドドドオオオーーーーンンンン!!!「あっひょーーん?!?!」
爆発をモロに食らって次々に宇宙空間に吹っ飛ばされる変態達!地獄絵図である。
S78彗星は地表で猛烈な連鎖爆発を引き起こして変態の都は消滅したのだった。
「これは・・・酷い」上位龍種の恐ろしさに改めて戦慄するアリス。
普段ホゲェ~としている奴こそ恐ろしいのだ。
施設の機能を停止させた上での兵糧攻め、弱った所にトドメに爆破処理ですか・・・
やっぱり百戦錬磨のシーナとユグドラシルはやる事がエグいわぁ~。
☆
「って!まだ続くんかい!」