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1周年特別企画「エリカちゃん&コンちゃん死す。 その8」

お姉ちゃんラザフォードとお兄ちゃんブリックリンが自分のせいで倒れたなど夢にも思っていないアリーセ。


ラーデンブルク公国のお祭り騒ぎをよそにして、のほほんと今後の自分の身の振り方を地琰龍ノイミュンスターから教わっている。

シーナ(ユグドラシル)達は冒険者の仕事に出て現在は留守だ。


「「龍都の学校・・・ですか?」」


「うむ、これからお主がどう生きるかは我にも分からぬが様々な事を勉強するに越した事はあるまい。

それにシーナと暮らすにしても人の姿にならぬといかんしな」


「「ふむふむ」」


前世においてのアリーセはグリフォンとしての誇りを持ち「人化の法」を学ぶ事はしなかった。


しかし今世のアリーセは「龍」、人化する事を覚えるのはとても大切な事なのだ。


龍が人に化けるのは「繁殖の為」のとの理由がとても大きい。

身体の小さい人間の姿の方が無事に赤ちゃんを産めるからだ。


アリーセの進化で龍種最強格の黒龍王が2人と天龍までもが揃ってダウンする事からも分かる通り、龍種の出産は文字通りの生命賭けで子供を作れる者は少ない。


何とか少しでも出生率を上げたいと先駆者達が様々な研究と努力をした成果が人化をする事だった。


「「アリーセが赤ちゃんを産むのですか?」」


たくさんの子供を産んだと言われる魔王コン。

前世では卵での繁殖だったのでイマイチ赤ちゃんを産むと言う状況にピンと来ないアリーセ。


ちなみに現在のグリフォン・キングはコンちゃんの玄孫に当たる。


魔王コンの子供は、なんと脅威の62兄弟!一時期は絶滅危惧種だったグリフォンも現在は全世界で100万体を優に超えており絶滅の危険は去ったと言える。


その62兄弟を1人の旦那さんと作ったので超ラブラブ夫婦だったのが窺える。


魔王コンの子孫達の大半は安全地帯の南の大陸の真魔族領域に住み(黙示録戦争の影響)それに随行して他のグリフォン達もその周辺に住んでいる。


中央大陸のグリフォンと友好的なグリプス王国周辺に3万体ほどの群れが住んでいる他は、あんまり他の地域でグリフォンの姿は見かけない。


魔王コンは、自ら率先して繁殖に励んで種族の繁栄を鼓舞したとても偉い王様だったのだ。


ちなみに魔王エリカの子供は脅威の0体、800年以上も長生きしておいて何やってたんだ?アイツ。


とか思っていたら王様稼業に忙しい魔王コンの子供達や親のいない孤児達を一生懸命に育てのアイツだったわ。


そりゃ巣立っても巣立っても絶え間なく次々に子供が来れば自分の子供を持つ余裕なんて全然無かったね!スマンかった。


グリフォンだけでなく、他の種族の子供もたくさん育て上げた超凄腕の乳母でもあり保育園の先生でもあったエリカちゃんなのだ。

この子育てスキルは今世のラーナ姫になっても如何なく発揮される事になる。


「子を産むかどうかは、お主次第じゃが選択肢を多く持つ事は必要じゃろうて」


「「分かりました!アリーセは学校に行きます!」」

単純に「学校楽しそう!」と思ったアリーセは龍都に行く事を決める。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「「まあ!樹龍ちゃんなんて珍しいですね!こんにちは!」」


ノイミュンスターに連れられて龍都の学校に来たアリーセを見て喜ぶ学校の先生。


「「アリーセは珍しいのですか?」」


「「アリーセちゃんは、龍に進化したばかりなのに話すのがとてもお上手ですね!先生ビックリです」」


「「えへへへへへ」」先生に褒められて照れるアリーセ。


「「そうですね、そもそも樹龍自体がとても数が少ないのです。

樹竜から樹龍に進化を遂げる前に大体の樹竜は「樹精霊」になりますからね。


現在わたくし共で把握出来ている樹龍は確か・・・アリーセちゃんを入れても42人?

でしたっけ?ノイミュンスター?」」


この地龍の女性先生・・・話し方からとてもお茶目な雰囲気が出て可愛らしい感じだが・・・


先生の名前は岩琰龍ヘスティアさんと言う。

火の女神「ヘスティア」の名前を冠する事からも神族の縁の龍なのだろうが詳しくは女神ハルモニアでも知らない。


直接ヘスティアさんに聞いて見ると・・・「「うふふふふ、秘密です」」と誤魔化されるので女神ヘスティア分身体ではなかろうか?と女神ハルモニアは睨んでいる。


「お主にバレると世界の管理の仕事を手伝われそうだから黙っておるんじゃないか?」


『酷いですバルドル?!・・・でも、あり得ますね・・・』


「もしそうなら手伝わせるじゃろ?」


『それは当然ですね』




人間達の通称では「クロースロックドラゴン」とも呼ばれる神話級の古代龍で黒龍王ラザフォードに勝るとも劣らない強さを誇る。


しかも、とっても、とぉーっても厳つい顔をしている・・・そしてとっても、とぉーっても大きいのだ。

今まで会話も音声抜きに見ると小柄な龍を巨大な龍が一飲みにせんとしてる様にしか見えない。


地琰龍ノイミュンスターも凄えおっかねぇ顔をしていると思ったら、地龍の中でノイミュンスターは全然優しい顔をしていたのだ。


「「そうじゃな、樹龍の大半が「ドライアドの森」に住んでおるな」」

ノイミュンスターとヘスティアは同時期に魔法世界に産まれた龍だと言われており、2人は仲が良い古くからの友達だ。


そんな古き友にアリーセの面倒を見て貰おうとお願いしに来たと言う訳だ。


「「何で他の樹龍さんは「地龍王の森」に住んで無いのですか?」」

地龍王クライルスハイムのお膝元のここの方が安全に思えるアリーセ。

実際にアリーセは今まで怖い思いを「地龍王の森」でした事が無い。


単純に産まれた瞬間からアリーセが強かっただけで、魔物パラダイスでもある「地龍王の森」は言うほど安全でも無いのだが。


「「この地域の地脈は「炎属性」をとても強く含んでいて樹龍に適して無いからですね。

アリーセちゃんは「炎属性」は大丈夫なんですか?」」


「「火は熱いからアリーセも苦手です。

でもアリーセはお姉ちゃんから魔力をたくさん貰えるので大丈夫です!」」


「「まあ!優しいお姉さんですねぇ~」」


その優しいお姉さんはアリーセに魔力を吸われ現在進行形で死にそうになっているがな・・・

黒龍王ラザフォードの受難はまだまだ続きそうだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ああー・・・吸われるー、またアリーセちゃんに魔力を吸われてますよー」


「ラザフォードちゃん!しっかりーーー?!なんかチカチカしてるぅーーー?!?!」

切れかけの蛍光灯の如く存在をチカチカさせているラザフォード。


「なかなか情け容赦がない幼龍じゃのぅ・・・」

チカチカするラザフォードに魔王バルドルもドン引きしている。


「ああー・・・それに付随して俺の魔力もラザフォードさんに吸われるー・・・」


「しっかり魔力タンクの役割を果たしなさい極悪人!そおれぇーーーー!!」

今までの恨みを晴らすべく思い切りブリックリンから魔力を奪うラザフォード。


「うわぁ?容赦ないねー、ねえイリス?俺もチカチカしてない?」

もう吸われる事に対して諦めの境地に達しているブリックリン、悟りを開いた仙人の如く。


「思い切りチカチカしてるけどブリックリンも頑張ってーーー?!

と言うか2人共器用だね!消えるか消えないかのギリギリのラインをずっと攻めてるね?!」


「好きでチカチカしてる訳じゃありません!」


「ギリギリのラインなんて攻めたくないんだけどね?!」


イリスもここで余計な一言を言わなければ文句無しの絶世の美少女なのだが・・・


遠く離れたラーデンブルク公国でこんな阿鼻叫喚の世界が繰り広げられてるとは夢にも思っていないアリーセ・・・子育てとは大変なモノなのだ。


復活したラザフォードがアリーセの姿を直接見る日は遠そうだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




そして月日は流れ・・・



「フシャーー!!どうしてドレスデンはアリーセを叩くのですか?!」


「だって格闘戦の授業なんだから仕方ないだろ」


新緑の長い髪をなびかせながら黒髪の男の子に爪先立ちで迫り文句を言う幼女。


そう、この幼女は樹龍アリーセなのだ。

龍都の学校に来てから4年、アリーセは人化の法をマスターして晴れて人間の姿になれる様になったのだ。


大きくクリクリした深緑色の瞳は樹精霊にも似ているが全然違う存在なんだよね。


「フーーーー!!!」「分かったっての・・・叩いて悪かったよ」


「分かれば良いです!」


格闘戦の授業の相棒である土龍のドレスデンに一通り噛み付いて満足したアリーセ。


これは痛くて怒っている訳では無く、人間の体術に慣れていなくてドレスデンに負けた事が悔しくて噛み付いているだけだ。

幼女特有の癇癪とも言える。


そもそも前世が魔王コンだったのだ。

百戦錬磨の撃墜王、グリフォン屈指の猛者だった元魔王が叩かれた痛み程度で泣く様なタマでは無い。


高速空中戦に限定すれば天舞龍リールともガチでやり合えたのだ。

ただ如何せんにも今世は飛べない樹龍、戦闘技能は最初から修行のやり直しと言っても良い。


なかなか思う様に戦えずイライラしているだけなのだ。


「「アリーセは「天龍」の様な体捌きをするのよねー?何でかしら?」」


「そうなのですか?」


担任のヘスティア先生の言う通り、アリーセは正面から相手が接近すると無意識に大きく身体を回転させる変な癖が有る。


これは空中戦での必須技能「バレルロール」を条件反射でやっているのだ。

すれ違い様に回転して腹部を鉤爪で引っ掻いて相手を地面に叩き落とす。

魔王コンが得意としていた戦法なのだ。


しかしこれは足を地に着けた戦闘では悪手そのもので、回転している間に小さく細かく動くドレスデンに後ろに回られて頭を「コンッ!」と裏拳で叩かれる。


「フシャーーーーー!!!」「あんな所で回転するアリーセが悪いんだろぉ?!」


「好きで回ってる訳じゃありません!!」「じゃあどうすれと?!」


「ドレスデンが考えなさい!」「めちゃくちゃだな?!」


ああ!悔しいぃいい!とドレスデンを威嚇するアリーセ。

頑張れドレスデン君!アリーセとの付き合いは長くなるが頑張るんだ!


「「ホントに仲が良いわねぇ~、結婚式には先生も呼んでね?」」


結婚式場に突如現る体長50mのクロースロックドラゴン・・・恐怖に慄き逃げ惑う結婚式の参列者の人々の姿が目に浮かぶ。


古代龍は人化が出来ない者が多い、地琰龍ノイミュンスターも幻術に近い方法で人の姿に化けている。


完全な人化が出来るのは天朱龍ニームを筆頭にする中世龍からだ。

つまりヘスティア先生を結婚式に招待すると、マジでそのままの姿で来るのだ。


そんな学校生活を送っているアリーセの元にようやく復活した黒龍王ラザフォードが訪ねて来たのだった。

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