25話 「エルフの街へ到着」
なんか色々とあったがようやくエルフの街へ向かう日が来た。
「何かこっちが色々お世話になっちゃって悪かったね」
トトが見送りに街の入り口までついて来てくれた。
「いいええ!凄く楽しかったですわ。
店主さんとも約束したし、またすぐ来ますわ」
すっかり酒場の店主とマブダチになったシルフィーナだった。
「珍しい薬草があったらすぐに送るね」
自分が持っていても役に立たんとイリスは手持ちの全ての薬草をトトに渡していた。
「ありがとう、今度は料金をちゃんと払うね」
地味にこの時のやり取りが世界に広がって冒険者の薬草採取のシステムが出来上がっていく歴史的な出来事だったりする。
危険な採取で薬師が命を落とす事が少なくなり世界の医療技術が格段に向上していく事になる。
女王イリスと伝説の薬師トトの感動の秘話と、演劇の演目にもなるのだ。
後にその事を知った女王イリスは、
「私達は墜落してシルフィーナがお酒飲みまくっただけなんだけど・・・」
そう言って何とも言えない表情をしていたと言う。
何はともあれ一度エルフの街に行かんとならぬとシルフィーナとラザフォードが街外れで竜化した。
「本当に竜だったんだねぇ」
話しは聞いていたが実際自分の目で見て2人の竜の姿に改めて驚くトト。
「「またすぐ来ますけど、お元気でトト」」
「「今度ここに公演するからね、また会いましょうトト」」
「多分付き合いで何回も来ると思うけど一応さようならトト」
「はいよ、またね」
その後、言葉通りに何回も兎人族の街に来るイリス達。
その為にエルフと兎人族の交流が種族単位で盛んになり最終的には国家間同盟にまで発展して行くのだが、それは大分未来のお話し。
こうして2人の竜は大空に飛び立ったのだった。
「良く考えたらエルフの街まで残り500kmだったんだよね」
「「そうですわね、4時間ほど到着しますわ」」
さすがに懲りたのか安全飛行を心掛けているシルフィーナ。
「「クレアに会うのも久しぶりだわ」」
「そう言えば、クレア様ってどんな人なんです。
皆んな説明が抽象的な感じで話すから良く分からないんです」
「「体育会系ね」」
ん?何かラザフォードが端的にまとめたぞ?体育会系って言った?
部活とかの時に整列して、
「ありしたーーーー!!」ってやるアレ?アレ結構やってる人間はテンション上がって楽しいし懐かしいけどエルフには合わないと思う。
「「だから遅刻してる事を怒ってると思う」」
「ええーー?!」いきなり印象が悪いイリス。
「「でも単純な性格だから素直に謝れば許してくれると思う」」
「「まっ・・・前にお会いした時はもの静かで神秘的なイメージでしたわ?」」
シルフィーナは一度クレアに挨拶に行っている。
「「外の者の訪問で猫を被っていただけね。
基本的に豪快な人だよ、イリスも弟子入りするなら走らされる覚悟をしていた方が良いと思うわ」
「なっ・・・なぜに走りを?」
「全ての基本は「足」からって人だからよ。
私も弟子の時に散々走らされたわ・・・竜の姿でね」
魔王を走らせる体育会系エルフ・・・ヤベェちょっと面白ぇ。
「「だから側近達も全員が体育会系よ」」
「そっ・・・そうなんだ、私・・・大丈夫かな?」
いやイリスも体育会系だから大丈夫じゃね?決して文系では無い。
少し不安を覚えたイリスだった。
「「すっ・・・少しスピード上げた方が良いかしら?」」
「「もう遅いから今更ね。
また墜落したら困るからこのまま行きましょう?」」
「「そう・・・ですわね」」
しかしシルフィーナが無意識にスピードを上げてエルフの街に到着したのは3時間後だった。
石作りの兎人族の街と違い「まさしくエルフの街」と言わんばかりに深い森の中に大きな街を形成していた。
いきなり街中に降りるのは無礼なので街の入り口500m手前で降りてシルフィーナとラザフォードは人化する。
それからテクテク歩いて入り口の門まで来ると、
「君達がイリスちゃんにシルフィーナさんかい?クレア様から聞いているよ」
門番の男性が話し掛けて来た。
「はい!イリスと言います。よろしくお願いします!」
「シルフィーナと申しますわ、どうぞよしなに」
「こちらこそよろしく、え~と君は?」
男性がラザフォードに話し掛けると、
「ラザフォードと言います、よろしくお願いします。前にクレア様にお世話になった者で今回こちらにご挨拶に来ました」ニコリと笑うラザフォード。
綺麗な女性に微笑まれて頬が赤くなる門番の男性。
「ああ!そうか君が吟遊詩人の!君の事も聞いているよ」
この時代はまだ歌手は吟遊詩人と呼ばれているのだ。
事前にクレアから話しがあったのですんなりと街に入る事が出来た。
「うわー、これは凄いねぇ」
まさしくエルフの街だ、ラザフォードは地球で観たディズ○ー映画の様だと思った。
木の上の家と家が吊り橋で繋がる様は見ていて飽きない。
イリスとシルフィーナは見慣れているが初めて見たラザフォードは感動している。
この街に住むエルフはヴァンヤールエルフ(光のエルフ)の末裔と言われている。
人口は中心街に5万人、衛星集落を合わせると20万人前後と言われ世界のエルフの80%がここに住む。
イリス達、ウッドエルフとは違う世界から来たと言われる。
「私、イジメられないかなぁ?」出自が違うのが不安なイリス。
「大丈夫だと思うわよ?仲が悪いと言われている「ダークエルフ」も別に嫌いじゃ無いってクレアは言っていたから」
「え?うちの集落にもダークエルフさん居ますよ?
ヴァンヤールの人達と仲が悪かったんですか?」不思議そうなイリス。
「そうなの?」
「はい、私の曾祖母はダークエルフです」
「は~、そうなんだ、地球の神話って全然アテにならないわねぇ」
元地球人のラザフォードはどうしても地球を基準に考えてしまう。
この世界のダークエルフは「月の眷属」と呼ばれていて、「安産の神様」とも呼ばれている。
闇の魔力が出産時にとても良い働きをするので、そう呼ばれる。
光=正義、闇=悪の概念がそもそも無いのだ。
ちなみに、この街にも600名ほどダークエルフが普通に生活している。
「そうだったんだ・・・失礼だよね、私・・・」シュンとしてしまうラザフォード。
「これから考えを変えたら大丈夫ですよ」ニコッっと笑うイリス。
そう話しをしていたらクレアが住む館に到着した。
大きさは周囲の家より少し大きいくらいで普通の家だった。
ここに女王クレアが居る・・・緊張MAXのイリスだった。




