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1周年特別企画「エリカちゃん&コンちゃん死す。 その2」

「「キュイーーーーン!キュイーーーーーン!!」」


「地龍王の山」の森に樹竜の赤ちゃんの鳴き声が響き渡る。

どうやら母親を探して鳴いている様子だ。


すると・・・

ガサガサガサガサガサガサガサガサ


「「キュイ??キュイーーーー?!」」


鳴いている樹竜の前に体長30mを超える立派な土龍が現れてビックリする樹竜の赤ちゃん。


土龍からジリジリと後退りながらも、

「「キュイ?キュイ?キュイ?」」

怯えながらも現れた土龍に「アナタは誰ですか?」と問い掛ける気丈な樹竜の赤ちゃん。


「「あれ?やっぱり樹竜だね?何でここに?」」

地龍達の本拠地である「地龍王の山」であるが、樹竜の生息地はここより西の「ドライアドの森」だ。


「地龍王の山」に樹竜が居るのは凄く珍しいのだ。


キョロキョロと周囲を見渡す土龍。どこかに母親が居ると思ったからだ。


「「うーん??やっぱり他に樹竜の気配は無いね?それにこの子・・・」」


「「キュイ?!」」

ヒョイっと、手のひらに樹竜の赤ちゃんを乗せてじっくりと観察する土龍。


この土龍と樹竜の赤ちゃんには産まれたばかりの子猫と人間ほどの体格差がある。


「「キュイ?」」危険は無いと分かったのかジーと土龍の瞳を見つめる樹竜の赤ちゃん。

なかなか肝っ玉の座った赤ちゃんである。


「「君、突然森の中に現れたよね?」」


「「キュイ???」」


竜は卵からでは無く、哺乳類の様に母親の体内から産まれてくる。

しかしこの子の母親は近くにおらず、突然森に現れた感覚が有るのだ。


「「うーん?・・・何か不思議な子だねぇ」」


「「キュイ?」」


この土龍の正体は「元黒龍王」のブリックリンで樹竜の赤ちゃんは無事に樹竜に転生を果たした「元グリフォン・キング」のコンちゃんである。


つまり2人はイリス絡みの顔見知りどころかガッツリ仲間な訳なのだが・・・


ここ最近は地龍の仕事が忙しくてイリスの所から離れて久しいブリックリンは、エリカとコンちゃんが死んだ事を知らないし、まさかグリフォン・キングのコンちゃんが樹竜に転生したなど夢にも思ってないので赤ちゃんの正体に全く気が付かない。


コンちゃんもコンちゃんで「記憶持って転生しても修行にならないです!」と自らの記憶を封印した状態で転生したのでブリックリンの事が分からない。


「「うーん?一人きりの子を見て知らない顔も出来ないね。君、俺の所に来るかい?」」

母親が見つかるまで樹竜の赤ちゃんの面倒を見る事にしたブリックリン。


龍戦士のブリックリンの主な仕事内容は「群れから逸れた竜の保護」で今まで何体もの竜の赤ちゃんを育てたので育児に問題は無いのだ。


「「キューーイーーン!」」

ブリックリンが自分の面倒を見てくれると分かって喜びの鳴き声を上げる樹竜の赤ちゃん。


気が付いたら、いきなり森の中で一人きりで怖かったのだ。


『ああ・・・やっぱり特異点と特異点が繋がってしまいましたか・・・』

どこからかパシリ女神の諦めも含む哀しそうな声が聞こえた気がする・・・


『ハルモニアちゃん?特異点は一つ見つけたら、すぐ近くにも三つ有ると思いなさい』


『アテネ様!Gじゃあるまいし怖い事言わないで下さい!』


先輩女神の不吉な言葉を思い出すパシリ女神、そしてその言葉の通りにフラグは速攻で回収されるのだ。


ちなみに「G」とは・・・何かしっとりしている奴等の事だ。我が天敵の・・・

昔、いきなり我目掛けて飛んで来て我の指と指にスッポン!とハマりやがったアノ奴等だ。


「「キューーイーーン!!」」樹竜の赤ちゃんが鳴いたと同時に・・・

「「見つけたわよ・・・極悪人」」・・・と、不意に頭の上から女の声が聞こえる。


「「!!!!!!キュイ?!キュイーーーンン?!?!」」

上を見上げ声の主を認識した途端に「シャーーーー!!!」と威嚇を始める樹竜の赤ちゃん。


「「あっ、お久しぶりです。ラザフォードさん」」


ブリックリンの真上の上空には漆黒の巨体を誇り、腕を組み絶対強者感を醸し出している「黒龍王」ラザフォードの姿が有ったのだ!


「「ピアツェンツアでのコンサートは上手く行きましたか?」」

ブリックリンがそうラザフォードに尋ねると・・・


「「ええ!おかげ様でね!」」プイッと不機嫌そうに顔を背けるラザフォード。

ブリックリンに「黒龍王」を移譲されて1000年、龍種として円熟期を迎えたラザフォード。

どこから見ても世界最強クラスの龍に成長している。


そんな黒龍王ラザフォードの本業は「破壊と混沌」では無く、超絶人気のロックシンガーで、この「地龍王の山」を有するピアツェンツア王国の首都でつい昨日まで大規模な野外コンサートを開いていたのだ。


野外コンサートも無事に終わったので憎き仇敵であるブリックリンの顔を見に来たツンデレ龍さんである。


「「それで?貴方はちゃんと禊ぎをしていますか?」」

黒龍王時代にラザフォードが住んでいた炎竜の集落を壊滅させたブリックリン。

その罪滅ぼしに10000年の禊ぎをラザフォードと約束したのだ。


「「禊ぎになるか分からないけど地龍の仕事を頑張っているよ・・・」」


「「そう・・・・・・ん?あれ?その手の上の子は?」」

ラザフォードはブリックリンの手の中に居る樹竜の赤ちゃんを発見する。


「「ああ・・・樹竜の赤ちゃんで母親と逸れた見たいなんだ。

それで母親が見つかるまで俺が面倒みようかな?って思っているんだ」」


「「キュイ?」」コテンと首を傾げる樹竜の赤ちゃん。


黒龍王が自分には何も危害を加えて来ない安全な存在だと分かり、もうラザフォードに対して威嚇をしてない。


「「か・・・」」プルプルと震え出したラザフォード。


「「キュイ?キュイ?」」不思議そうにラザフォードを見つめる樹竜の赤ちゃん。


「「可愛いーーーーーー!!!」」


「「キュイーーーンン?!?!」」


厳つい見た目に反して、可愛いらしく両手を前に組み黄色い歓声を上げるラザフォード。


「「ええ?!何?この可愛い子?

それに貴方が育てるですって?!ダメよ!

この子に貴方の悪辣非道が移ったらどうするんです?!」」


「「悪辣非道・・・」」反論したくても過去の自分を思い出して苦笑いしか出来ないブリックリン。


「「うん!コンサートも終わった事だし私もこの子の面倒を見るわ!」」


「「ええ?!」」


樹竜の赤ちゃんの可愛いらしさに見事ハートを射抜かれたラザフォード。

ブリックリンが変な育て方をしないか見張る事にした。


「「それで?それで?この子のお名前は?

まだ決まってなければ私がお名前を考えるわ!」」


「「あー・・・いや、俺達の名付けは不味いんだよ」」


「「ええー?何で??」」


「「俺達が名付けをしてしまうと「俺達の黒龍王の因果」をこの子も背負ってしまうんだ。

それは、この子にとって良く無いと思う」」


確かに黒龍王の本質は「破壊と混沌」だ。

産まれたばかりの赤ちゃんにそんな因果を背負わすのは酷と言うモノだろう。


「「うう・・・そうね」」

黒龍王の因果の厳しさを身を持って知っているラザフォードは名付けをアッサリと諦める。


凄く残念そうなラザフォードを見て、

「「簡単な通名で呼ぶのは良いと思うよ?」」と、妥協案を提示するブリックリン。

要するに「仮名」である。


「「・・・・・・・・なら・・・「キューちゃん」かな?」」

鳴き声から当たり障りない名前を考えたラザフォード。


「「君はどうかな?とりあえずの名前は「キューちゃん」だってさ」」


「「キュイキュイキュイーーン」」


「「良いよ、だってさ」」


樹竜の赤ちゃん、改め「キューちゃん」の誕生である。

後にシーナ(ユグドラシル)が正式に「アリーセ」と名付けるまで、この子の名前は、キューちゃんになったのだった。


こうして「2人の黒龍王」に育てられる事になった樹竜のキューちゃん。

この事が「アリーセ」と名付けられた瞬間にキューちゃんが樹竜から樹龍へとノータイムで進化を果たす要因となる。


ラザフォード、ブリックリン、キューちゃんの奇妙な共同生活が始まったのだった。


・・・最初に言っておきますが子育てを通してブリックリンとラザフォードが恋に落ちるとかはありません。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



さてラザフォードとブリックリンによる子育てが始まったのだが、基本的に親のやる事はほとんど無い。


小さいとは言え高位生命体の竜の赤ちゃんに授乳とかは必要無く、竜の赤ちゃんは産まれた瞬間から自分で狩を始めるからだ。


親はちょこちょこと動き回る赤ちゃんに危険が無いか見守るだけだ。


「「アレ?ブリックリン?何してん?」」


「「子育てだよ」」


「「へー?頑張れよ」」


通りすがりの地龍にブリックリンが声を掛けられた瞬間!


「「キュイーーーーーン!!」」バシュン!バシュン!スパァン!!!


「「えええーーーー?!」」「「きゃああ!凄いわ!キューちゃん!天才よ!」」


狩を始めた途端に「ウインドカッター」で紫虫を仕留めるキューちゃん。


ウマウマと紫虫を食べるキューちゃんを見て、

「「樹竜って産まれ付き魔法が上手なのねぇ・・・」天才キューちゃんの頭をヨシヨシするラザフォード。


「「いや無理だから!さすがに産まれた瞬間から魔法は使えないから!

普通は狩の中で勉強して10年くらい掛けて魔法が使える様になるモノだから!

それに樹竜なのに風魔法を使えるってどう言う事?!

最初は野兎とか野鼠とかを狩るモノだからね!」


騒ぐブリックリンの言う通り産まれた直後の竜の赤ちゃんは紫虫とかには逆に怯えるモノで嬉々として自分から仕留めに行く事は無い。


竜の親の役目とは、成長するまで我が子を紫虫とかから守り、子に魔法を教える事くらいなのだ。


「「だーからぁ、キューちゃんは「天才」なんでしょ?」」


「「ええー??」」

いまいちラザフォードのゴリ押し理論に納得が出来ないブリックリン。


しかしラザフォードの指摘は見事なくらい的を得ている。


キューちゃんは前世の頃から狩の名手だった。

なので産まれ付き「射手の極意」と言う激レアスキルを持って産まれたのだ。


これは、投擲だろうが弓だろうが魔法だろうが魔導榴弾砲だろうが「遠距離攻撃」なら何でも最初から上手に使えると言うブッ壊れスキルである。


そして前世での種族だったグリフォンの属性は「風」、まだ魔力不足で使えないが「アーク・トルネード・ブラスト」・・・風の極大魔法も既に取得済みなのだ。


ここで樹竜の本来の属性「土」も加わるので、キューちゃんの成長幅の底が見えない。

パシリ女神がキューちゃんの事を「特異点」と評した理由がここに有る。


何なら戦闘行為をほとんどしないラザフォードより喧嘩が強いかも知れないのだ。


ブリックリンも驚愕するキューちゃんの快進撃は始まったばかりだ。

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