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37話 「フェンリル王とグリフォン王との会談 その4」

こうして一応、名目上でフェンリル王になった魔王エリカ、ここからは魔族達による衣料メーカーに対する企業買収への対策を「真剣に」話し合う事になった。


エリカが作戦の概要を話し始める。

「こちらから逆に高い買収金額をふっかけて、ある程度の買収には応じます。

具体的には「フローズブランド」の3分の1の工房が乗っ取られるまで放置します」


「ええ?!買収に応じるんですか?!しかも3分の1の工房を魔族に渡すんですか?!」

エリカなら徹底抗戦すると思っていたフローズは意外そうに驚く。


《理由をお聞かせ下さいますか?》

さすがにヴァナルガンドも安易に納得出来る内容の作戦では無い。


「はい説明します。

ある程度相手に美味しい思いをさせないと最終的に経済戦争には勝てません。

経済戦争で完勝などあり得ないので、こちらも身銭を切る必要があります。


当然ながら買収される工房は予め決めて置いて従業員はいっその事、全員スパイで構成しちゃいましょうか。


まぁ、機材や原材料の物品損失に関しては本当に涙を飲む必要が有りますね。

その損失の穴埋めの為に色々な罠を張ります。


それに魔族達の全ての兵站供給を組織的に遮断して必要以上に追い込むと、相討ち狙いで今度は工房の無差別破壊や企業を脅迫する為に代表者の誘拐などの強行手段を訴える可能性が高いです。


それに資金提供をしている協力者の炙り出しも必要なので今回は買収に応じて様子を見ます。


しかし同時に経済的な攻撃は強化して魔族の資金力を向こうに気が付かれる前に奪って行きます」


《なるほど・・・つまりエリカ王の「罠」とは買収を受ける直前に「フローズブランド」全ての服の単価を意図的に釣り上げる訳ですね?》


「さすがヴァナルガンドさん。

そうです、その釣り上げた分を買収金額に上乗せします。


経済戦争に弱い彼らの事ですから買収のみを最優先にして企業価値の金額の精査とかはしないと思います。

何せ「今回の彼らの狙いは手段を選ばずに縫製工房を得る事」が目的なので」


「ううう・・・2人が何を話しているのか良く分からないわ・・・

でも意図的に庶民の生活に悪影響を与える作戦なら断固反対するよ?」


お姫様でもあるイリスは国としての大まかな経済活動の勉強はしているが、こう言った企業レベルの勉強まではしていない。


「庶民の生活を巻き込まないのは当然、第一に憂慮する話しね。

魔族の買収工作が完了したら、当然こちらは、釣り上げ分の販売価格を通常状態に直ぐに戻します。

軍事物資獲得が目的の向こうは、細かい顧客管理の対応出来ない、する理由が無いので高い金額のまま放置するでしょうね。

これで買収された企業の顧客は離れるからゴッソリとこちらに頂きましょう」


「つまり本当に短期間な価格の釣り上げって事?」


「そうよ、もちろん庶民には事前に価格上昇を告知します。

理由は何でも良いですが「昨年の不作により原材料の価格高騰により」が1番無難でしょう。

春先に価格を上げて木綿や麻などの収穫が行われる晩秋に価格を下げるのが自然に見えて妥当な線かな?」


「ううう・・・そんな半年程度の短期間の価格の釣り上げに何の効果が有るのか分からないわ」


「単に都合が良い口実よ?原材料が高騰してても頑張っているウチの企業価値は高いんだぞってね」


「それって詐欺じゃん?!」


「詐欺と経済戦争は紙一重なのよん。

どれだけ多数の者を味方に付けられるかの勝負よ」


《しかし魔族が罠に気が付いてこちらに合わせて販売価格を下げる可能性も有るのでは?》


「それは当然あります、あくまでも罠なので掛からない事もあるでしょう。

その時はスッパリと諦めて次の手を考えましょう。


でも魔族の狙いが衣料軍事物資の調達なのは明白なので企業の儲けとかは考え無い可能性が高いです。


顧客が離れて赤字経営になって投資配当金がゼロに・・・

ここでやっと魔族達に投資した者達は浅はかな自分の行為を後悔する事になるでしょうね。


この罠が成功したら破産者続出ですよ、ふふふふ~。

ついでなので裏切り者の制裁も行いましょう」


そう言ってニコリと笑うエリカ、内心ではかなり裏切り者に対してムカついているのだ。


「怖いです!エリカさんって怖い人だったんですね?!」


参謀エリカのエグい謀略を初めて目の当たりにして慄くフローズ。

コヤツ!ただのブリキロボでは無かったのか?!って感じだね!


「エリカって本質はいつもこんな感じですよ?」

今までもエリカ発案のエグい作戦を見て来たイリスはもう驚かない。

割と敵にも情けを掛けるイリスと違い基本エリカは敵に容赦はしない。


「しかし釣り上げる価格の限界は商品毎に1割です。

これ以上は、中小企業が倒産する恐れが有り、世界各国で衣服市場で深刻なインフレが発生する可能性が高いのでダメです」


世界NO,1企業の大幅な値上げが社会に与える悪影響は深刻だ。

短期間限定的な10%の値上げも結構ギリギリを攻めていると言える。


「ううう・・・また難しい話しになって来たわ・・・「いんふれ」ってなんですか?」


エリカが話す経済的な話しはいつも難しい、ゴソゴソとメモ帳を取り出すイリス。

優等生イリスは常にメモ帳を持ち歩いて気になる事を書き込んでいるのだ。


「うーん?インフレの全て詳しく説明すると朝になるわ・・・


でもそうね・・・お金だけは有るけどお店から品物が無くなる現象がインフレーションだと理解していれば良いわ。


極端な例を挙げると、これがもし食料品関係でインフレが発生すると「飢饉」になるって訳ね」


実際の飢饉は様々な複雑な要因、例えば物流障害などが発生して起こる(ロシアの地中海の港封鎖など)モノでインフレーションだけで起こるモノでは無いがイリスにもインフレーションとは、市場においてどんな状況を指すのか説明する為に例に挙げる。


「・・・いくら沢山のお金を持ってても店に服が無くて買えないって事が「いんふれ」ってヤツなの?」

この説明でイリスにも何となくインフレーションの怖さが分かる。


「正解!そう言う事ね」


《しかし1割程度の釣り上げで本当に魔族にダメージを与えられるのでしょうか?》


「ふふふふふ・・・「塵も積もれば山となる」

自分達の築き上げた長年の成果を過小評価してはダメですよ?

自力を共わないお金のみの企業買収なんて成功する訳が無いのです」


「あっ!俺、全然話しが理解出来ないからアラクネーさんの仕事を手伝って来るわ」

難しい話しが続き、ここでロテール君がギブアップする。


ちなみに女神ハルモニアはエリカがフェンリル王になったのを確認して直ぐに会談から離脱している。

それと同時にアラクネーさんも自分の服の製作に戻っている。


「あっ!私も・・・ちょっと失礼します」ロテール君に相乗りしてフローズも逃走を試みるが?


《フローズ様はダメです、これも良い機会なのでフローズ様も経営の学習を少しでもなさって下さい》


何となく分かっていたが、「フローズブランド」の実務はフローズが担い、企業経営はヴァナルガンドが担っていたのだ。


「今日のヴァンちゃん、本当に厳しいわ・・・」


エリカ達がそんな話しをしている頃・・・・





「ブレスト様!魔王エリカの姿を北極圏で確認したとの報告が入りました!」


「あー・・・やっぱ、あの腐れグリフォン・・・自分の巣穴に居なかったか・・・

北極圏・・・そうかフェンリルと接触しやがったのか」


報告を聞いて激昂するかと思われたスペクターのブレストだったが、彼も魔王エリカの行動を予想していたのか特に表情が変わる事は無い。


そもそも彼の本質は「冷静沈着」なので、この程度の肩透かしで激昂する事は無い。


「それで何人が北極圏の監視している?」


「ほぼ作戦範囲外の地域なので第2軍の斥候が3人、縫製工房に潜り込んでいます。

どうしますか?応援部隊を送りますか?」


「いいや、今更もう応援部隊を送っても遅えだろうな。

・・・その3人に引き続き、魔王エリカを監視をさせておけ。

ここでの作戦はこのまま継続だ、アイツが巣穴に帰って来た瞬間を襲うぞ」


一瞬、北極圏に作戦範囲を移動しようかと思ったブレストだったが・・・止めた。

あまりにもエリカの行動パターンが読めないので追跡に手間が掛かり過ぎると判断した為だ。


後にエリカが「あのグリフォン、何か知らないけどモデルやってます!」と報告で知ったブレストは・・・


「アイツ馬鹿じゃねえの?」と呆れ果てるのと同時に「ちっ!ショーの最中に襲った方が暗殺の成功率が高かったな」と残念がるのだった。


こんな感じにエリカが魔族の動きに付き合う訳が無いのと同様に魔族がエリカの動きに付き合う訳が無い。


魔王エリカが巣穴に不在と知るや否や暗殺部隊の指揮官のブレストは現在の作戦範囲の地域整備に取り掛かる。


具体的には「狙撃ポイント」の迷彩偽装とか補給態勢の見直しとかをだね。

魔王エリカと魔族暗殺部隊との会敵はまだ少し先になりそうだ。


そんな魔族の動きを読み切っているエリカはドンドンと罠を張り巡らせるのだった。













あっ!そう言えば。


「ん?どしたん?」


作者は毎年恒例の「繁盛期」に突入しており投稿頻度が10月まで激減します!

少しずつチマチマとは書いてるので気長にお待ち下さいませ。

週一回は投稿出来る様に頑張ります。


「そう言えば作者の職業って何なん?」


税金区分によると普通にサラリーマンらしいっす。


「らしいって何なん?!」


いや~、スーツ着るのが年に数回しか無いので自覚が無いんですよ。


「・・・・・・・本当に作者の職業が分からん!」

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