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34話 「フェンリル王とグリフォン王との会談 その1」

さて、ヴァナルガンドの言う時間とは何の時間を指すのか?

それは当然ながら「魔王エリカ」と「フェンリル王フローズ」の会談の時間である。


フローズの怒涛の勢いに負けて突然話しがファッションモデル路線に突き進んだのだが、当然こちらの方が今回の来訪の本命である。


イリスも偶然居る??のでエルフ族の代表として会談に参加する事になった。


このイリスの会談への参加は魔王エリカの今後の思惑を知りたいラーデンブルク公国の首相、クレア公爵の差し金なのは言うまでも無い。


とは言え、昔からの知り合いで他に誰か居る訳でも無いので工房の会議室に適当に座って雑談でも始めるかの様に会談は始まった。


「魔王バルドルの話しだとフローズさんは、ユグドラシルが消滅した事で気落ちしてしまい無気力になっているとの事でしたが・・・」

バルドルの話しと違いフローズはめっちゃアグレッシブに思えるエリカ。


「え?そう・・・ですかね?無気力ですか?私?」

エリカに指摘されてヴァナルガンドに確認するフローズ。

どうやら自分では自覚が無い様子だ。


「はい、本来のフローズ様に比べて大分アグレッシブさが無くなってます」


「今以上にアグレッシブ・・・」

これ以上のアグレッシブさが想像出来ないイリス。


「今までのフローズ様なら企業買収など黙認しません。

そんな事をされたら逆に相手企業を乗っ取ってしまってましたからね」


「え?あれは業界の活性化の為に・・・」

ヴァナルガンドに指摘されてモゴモゴしてしまうフローズ。


「確かに業界の活性化には有効的な企業買収も必要ですが、敵対的買収を黙認するなどフローズ様らしくありません。

問題が発生する前に確実に敵を叩き潰すのが本来のフローズ様です」


「うう・・・私ってそんなに攻撃的でしたか?」


「どちらかというと「殲滅的」だったと思いますよ」


「殲滅的?!」「せ・・・殲滅的・・・」

息子が母の事を「殲滅的」なんて表現するなんて初めて聞いたイリスとエリカ。


「そのくらいのアグレッシブさがないと北極圏に服の一大生産拠点を作ろうなんて思い、尚且つ実際に作ってしまうなんて無理ですからね」


「確かに!!」


イリスが来るまでに北極圏を散策して予想を遥かに超えるデカい街とたくさんの工房が出来ていて度肝を抜かれたエリカ。

少なくとも30年前まではここは何も無い雪原だったはすだ。


「フローズ様が明らかに落ち込み始めたのは5年ほど前の「天界の方でユグドラシル様の魂の行方をロストした」時からです」


ここで特大爆弾をぶち込むヴァナルガンド、天界が必死に隠そうとしていた醜態を盛大にバラしてしまう。


「ええ?!神様が?!ロストぉおお?!」


「・・・・・・神様がママを?ロスト??ヴァナルガンドさん!詳しく!!」

他ならぬユグドラシルの事なので目の色が変わるイリス。


『ごめんなさいぃ!!バックアップを取らなかった私のせいなんですぅうう!!

目下、天界の全力を上げて捜索してますぅうう!!』


ユグドラシルの魂の追跡を不可にした原因を作ったパシリ女神の謝罪が聞こえたが気のせいだろう。


「そうですね、イリス様にはお伝えするべきですね。

ユグドラシル様の魂は完全に滅びておりません、復活の時まで女神様の分身体が守っていたのです」


「???!!!!!」


「ただ・・・復活がいつになるのか・・・それは神でも分からないのです。

明日かも知れないし、10万年後かも知れません」


「そ・・・そうですか・・・でもママが生きている・・・

じゃあ、あの?シルフェリア・・・も?」

ユグドラシルが生きているなら眷属のシルフェリアの存命にも期待したイリスだったが・・・そこは残念ながら・・・


「シルフェリア様の魂は残念ながら転生されてこの世界にはおりません。

でも、あのお方は、まだまだ若く強い存在ですからね、おそらくイリス様のご存命中に間違い無く再会出来ると思います」


ヴァナルガンドの言う通り、若いシルフェリアは凄え勢いで地球の日本に転生してしまって魔法世界には居ない。

今頃は太平洋の大海原で毛蟹を一本釣りしている事だろう。


ちなみに転生には時や場所の概念は無い。

要するに、どの時代、どの場所へも理屈上は転生出来るのだが、本人が全く知らない、又は縁の無い所へは転生出来ないので必然的に近い年代と近い場所になるのだ。


シルフェリアの場合は「今まで「木」だったので海に行きてえっす」と希望したので漁師の娘に転生した経緯が有る。


何で地球の日本だったかと言うとシルフェリアもエリカの強い因果に巻き込まれたのでエリカの故郷の日本の近い年代に飛ばされたのだ。


「そうなのぉおお?!私のせいで?!うっそぉおお?!」

この時、初めてシルフェリアが自分の因果のせいで日本で漁師をしている事を知ったエリカだった。


「ああ!シルフェリア様・・・今は八千代様ですか。

彼女は、それはそれは人生を楽しんでおられる様子なのでエリカ様が気に病む必要はありませんよ?」


「そ・・・それは良かった・・・」ヘナヘナと力が抜けるエリカ。

自分のせいでシルフェリアが不幸になっていたなら申し訳ないで済まされないからね!

その点は「世界の創造主」はしっかりしておるから安心せい。


「八千代・・・シルフェリアの今の名前・・・」

シルフェリア改めて八千代の事を知ったイリスがこの先の未来にちょっとした騒ぎを起こす。


こんな感じに冥神ヘルの眷属のフェンリル族は世界の主要な存在の死後の行き先程度なら神々より把握しているのだ。


「八千代様もどこか魂の奥底でイリス様を覚えている様子ですね。

イリス様と八千代様の因果関係はとても強く、今現在でも惹かれ有っている状態なので八千代様の魂とイリス様が再会出来る可能性は100%だと思います」


「そう・・・なんですね?」頬赤くして目に涙を浮かべるイリス。


冥界の番犬からシルフェリアとは間違いなく再会出来るとお墨付きを貰ったのだ。

そりゃ嬉しくて泣きもするだろう。

そしてこのヴァナルガンドの言葉は少し遠い未来になってしまうが現実となるのだ。


「良かったね、イリス」


「うん!」


「さて話しをユグドラシル様へ戻します。

先程も言った通り、ユグドラシル様の魂には女神様の分身体が付いているので大丈夫だと申し上げているのですが・・・」


そう言うヴァナルガンドも、そのユグドラシルに付いている分身体と言う存在が、ロストした張本神の分身体なので実の所で不安で一杯なのだがね。


「そうなんですが・・・やはりユグドラシル様が心配で心配で仕方ないです・・・

でも、そうですか・・・私は気落ちしているのですか」

ようやく自分の精神が安定していない事に気が付いたフローズ。


「その不安定な精神状態でフェンリル族を統率して尚且つ「フローズブランド」の運営も同時に出来ますか?」


「うう・・・ヴァンちゃんが厳しい・・・」


「そこで提案です、フローズ様は「フローズブランド」経営に専念して、フェンリル族の統率権は「魔王エリカ様」に移譲しては如何でしょうか?」


「ええーー?!私ぃーーー?!」


「ええい!ちょっと待て!最初の話しでは「魔王バルドルに統率権」を移譲する為の交渉では無かったのか?何故それが私に来るの?!」と驚くエリカ。


「ふう・・・エリカ様?・・・あの、お忙しい魔王バルドル様にフェンリル族の統率までしている暇がお有りでしょうか?」

魔王バルドルの惨状を思い出して溜め息を吐くヴァナルガンド。


「そんな事を出来る暇は無い・・・でしょうね」


エリカがここに来る前に見たバルドルはそれはそれは悲惨な状態だった・・・

机の上には書類が山積みで必死にそれを捌くその姿は正に修羅場の鬼だったのだ。


しかもバルドルが忙しい原因の殆どが自分に有ると分かっているエリカは、「・・・じゃあ北極に行って来ます~」と、逃げる様に出発して来たのだ。


「ここは魔王バルドル様と魔王エリカ様とで役割を分業するべきと思います」


「あう・・・」ぐうの音も出ないエリカ、しかしここで救世主が現れた?!


「あの~、ちょっと良いでしょうか?」


この場に居る全員がヴァナルガンドの怒涛の勢いに押されまくっているが「これだけは言わねば!!」と、イリスが決意を込めて手を挙げる。

八千代の事が分かって今のイリスはキレッキレの覚醒エルフ状態なのだ!


「何でしょうか?イリス様」


「あの・・・フェンリル族の王様は「ヴァナルガンドさんがやれば良い」のではないでしょうか?」


「確かに?!」


「そうね!ヴァンちゃんが王様をやれば全て解決ですね?!」


イリスからの天啓にハッ!!とするエリカとフローズ。

ヴァナルガンドはフェンリル王フローズの息子・・・つまり王太子と言う事で・・・

しかも超絶優秀なヴァナルガンドがフェンリル王になれば良いだけなのだ!


つーか何で、ヴァナルガンドが居るのに魔王バルドルや魔王エリカがフェンリル族を束ねばならんのだ?!だね!


しかしヴァナルガンドは意外な返答をする。


「私は「執事業務が忙しい」ので無理です」

良く分からん理由でイリスからの提案をキッパリと拒絶するヴァナルガンド。


「何で執務業務?!」


「ヴァンちゃん?!」


王様より執事の方が大事とか意味分からん!状態のエリカとフローズ。


「ああ・・・先程の趣味と言う言い方では分かり辛いですね。

私の魂の本懐は「王や主に仕える」事です、これを違える事は出来ません。

これは神より授かった天命なので変える事は出来ません」


「その話し、母は今初めて知ったのですけど?!」

母のフローズが知らんかったので誰も知ってる訳が無いのだ。


《アノ・・・コレハ天界カラノ説明ガ必要ダト思イマスヨ?ハルモニア様?》


今まで会談の邪魔にならない様に黙っていた亜神アラクネーさんだったが、余りにも要領を得ないので、こっそり会談を覗いていた事情通の女神ハルモニアに詳しい説明を要請する。


『うううう・・・・私には直接関係の無い話しなのに・・・』


もはやこれまでと、またまた神様連合の連帯責任と言うモノが有るので、渋々、覗き見女神ハルモニアが出て来た。

この女神様、いっつも他の神様の尻拭いをやらされているな・・・


オリュンポス神族のハルモニアには可哀想だが、話しが進まんので忙しい所を申し訳ないがアース神族の事情を説明して頂きましょう。













『この変態神!!可哀想だと思うなら君が説明しろぉおお!!』


僕!神様とは違う存在だもん!!「創造主」だもん!変態神じゃないやい!!


『大して違いませんよ!バカーーーー!!』

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