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33話 「ファッションモデル」

「いや・・・半分冗談だったのに・・・なんかごめん」

グリフォンの姿ではファッションモデルは出来んので人間の姿のエリカ。


「シクシクシク・・・」

ファッションモデルのエリカの前に座りさめざめと泣くブリキロボイリス。


エリカが裁縫職人になったアラクネーの代わりに「イリスなんてどう?」とか言ったら本当にフローズがバルドルに依頼してイリスが召喚されて来たのだ。


「シクシクシク・・・『フローズブランド』にはラーデンブルクの財務省も投資しているから、モデルをやるついでに様子を見に行ってこいってクレア師匠が・・・」

クレア公爵の直々の命令なので逃亡不可なブリキロボ。


「せち辛ぇ・・・」


「それでね?エリカ?」


「何?」


「アンタは、とりあえず一辺死ねぇーーーーーーーー!!!!!」


「ごめん!ごめんってぇーーー!ごめんなさーーーい!!」


エリカの余計な一言で召喚されたイリスは激オコだろう、なので到着直後から絶対に暴れると思ってたのに妙に大人してて不思議に思っていたら、やっぱり暴れるイリス。

タメを作れる様になったイリスはちょっぴり大人になったのさ。


人身売買女のエリカをベッドロックして、魔力を込めた拳で頭をグリグリする怒髪天イリス。


「いでででででで?!?!今日のお姉様の「セメ」は、いつもより激しいのではなくてー?!」


「誤解を招く言い方すんなぁ!」


よっぽどファッションモデルをやらされるのが嫌だったのか今日のグリグリはいつもより長い。

一通りエリカをグリグリして少し気が晴れたイリスは今日来た本当の理由を語り始めた。


「とにかく最近、『フローズブランド』も含めた衣料メーカーに何者かが積極的に買収のちょっかいを掛けて来ている情報が入っているのよ。

だから今回はその調査も兼ねているのよ」


「あー・・・やっぱり魔族は衣料関係に攻撃をして来たかぁ」


敵性勢力が衣料関連にちょっかいを掛ける→敵が衣食住に対して攻撃して来るのは古来より良くある戦法だ。


現在の日本では考えられないが着る服が無いと言うのはかなりキツいだろう。

何よりこの世界では「石油製品」はまだ開発されておらず材料の調達も大変だ。


布の生産技術が遥かに発展している現在の地球ですらフランス、ノルマンディー地方の不作でリネン価格が急激に上昇しており2024年の日本の服飾産業が打撃を受けている。

そんな感じなのでこの世界での衣料への攻撃による敵への損害効果は押して知るべしだろう。


「特に防寒着のメーカーへの買収を積極的にして来ているわ」


「ふーん?妨害や破壊では無く買収なのね?そうなると少し話しは変わるわね。

魔族は兵站・・・特に衣料の補給に問題が有るって事ね」


わざわざ手間の掛かる企業買収をして来るのは、買収した企業の製品をアテにしている証でもある


単純に敵の衣料の兵站を破壊したければ、特殊部隊などを使い工房を破壊するなり交易路を襲撃するなりの通商破壊戦を仕掛ければ良いだけだからね。


イリスは、仕掛けて来ているのは魔族だとまだ断定してないがエリカは衣料メーカーにちょっかいを掛けて来ている何者かを魔族として断定している様子だ。


「まだ魔族だって断定するの早くない?もし単純な企業買収だったらどうするの?」


「そん時は改めて今回の件は無視、でもこう言うのは事前に対策はしておくべきよ」


「なるほど・・・それで具体的な対策は?」


「先ずは他所へ買収を仕掛けて来ている傀儡メーカーのリストアップよ。

違法性が無いか調べて違法性が有れば罰金刑、それを新聞社を使って公表する。


魔族の資金源ってイマイチ良く分からないのよねぇ・・・

ゴルド商人が絡んでいるのは間違い無いとしても、彼らだけで魔族200万人の兵站を支えれるとは思えない。

利権狙いの割と大きな世界的なコミュニティが出来てるかも知れないわね」


「うーん?それってラーデンブルクの商人も絡んでいる?」


「多分ね、おそらくは「企業への投資」って形でね」


「じゃあ、とりあえずは投資会社を中心に調べて見るわ」


「やるならクレア師匠の名前も使って公に大々的にね、他への牽制になるから」


「了解~」


とりあえず2人は身近な所から魔族への資金援助をしている疑いが有る企業や投資家に対して「投資法違反」の路線で攻める事にした。


地味な攻撃だが罰金刑を嫌う投資家、信用低下を嫌う企業には効果的だ。

ロシア・ウクライナ戦争でも日本とアメリカが積極的にやっている手法だね。


ロシアへの経済制裁発動した際、即時撤退を決めたマグドナルドの株価が大幅に上がり、たったの2週間、撤退を渋ったユニクロの株価が大幅に下がったので世論が投資家や企業に与える影響が大きいのが分かる。


魔族にはこう言った資本的な概念が無いので今の所はエリカからの経済的なボディーブロー攻撃をモロに食らっている状況なのだ。


この様に2人はいつもふざけてイチャイチャしている訳では無い。

と言うか真面目にやっている時の方が圧倒的に多いのだが、真面目な話しは作者的に面白くないので書いて無いだけである。


「書いて無いだけである、じゃないわよ馬鹿」」


真面目な話しが終わると、いよいよブリキロボ達の出撃の時間である。

・・・おい・・・死にそうな顔になるなよ2人共。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



直近のショーの為に練習用のステージで歩く練習をしているロボ達。

何だかんだ場数を踏んでるので流れだけは分かっている。


「んー?お客様も居ないのにどうして緊張するのかしら?」

前回の時から全く進歩を見られないロボ達に困り顔のフローズ。


試しに歩いて見たら即座にギギギギギィ・・・と油切れになるロボ達なのだ。


「エリカ、めっちゃ緊張してて笑う」ブリキロボエリカを揶揄うロテール君。


「うっさい」


「んー?なら、ロテール君と腕を組んで歩いて見ましょうか?」


「了解、ほらエリカ」スッと手をエリカに差し出すロテール君。

「んっ」フローズの提案でロテール君と腕を組んで歩いて見るエリカ。


すると。


「あらあら、見違える様に良くなりましたわエリカさん!」

ロテール君と腕を組んだ瞬間に滑らかな動きになるエリカ、背の高いイケメンとデート気分で歩いてとても楽しそうだね。


ちなみにロテール君はモデルとしての才能があるのか歩き方も自然で格好が良かった。


「そんな!エリカはロテール君と一緒に私より先にいっちゃうの?!」

エリカのブリキロボ脱却に大ショックのイリス。


「めっちゃ誤解を招く言い方をすんな!」


「んー?エリカさんとイリスさんが腕を組んで歩いて見ましょうか?」

フローズはブリキロボ達に何とか改善の兆しが見えたので色々な組み合わせを試して見る事にした。


「ぎゃはははははははは!!!ひっでえー!!うわははははは!!!」


「「うっさい!!」」


イリスとエリカが腕を組んで歩いて見たらマジでロボが悪化した。


ギギギギギィーと2人共、1人の時より動きが固くなって歩調が全く合わずにイリスが前に出たりエリカが前に出たりして、それはそれは酷かった。


「はい!エリカさんとロテール君のコンビで決定です!」

コンビ結成5分で即時解散になったイリス&エリカのロボコンビだった。


「イリスさんは、今まで通り舞台中央で立ちましょう!」

また綺麗な置き物として展示されるイリスであった。


「ううううう・・・またアレをやらされるのね」

舞台に立つイリスの心境は常に「無」だ、指一つ動かすのも億劫になる。


「イリスは何でそんなにモデルが嫌なんだ?

いっつも儀式の時とかに民衆の前に立って演説してんじゃん?」


これでもラーデンブルク公国のお姫様なイリス。

年始の挨拶などには女王クレアの後に数万人の民衆に向けて演説するのが定番になっている。


「演説の時は空を見てるから・・・

それに集まる民衆はほとんど知り合いだし・・・」


「あー、なるほどね、大勢の知らない連中の自分を見る目と合うのがダメなタイプか」


ファッションショーは服の細部を見せる為に室内で観客に近い位置で行われる。

嫌でも観客と目線が合ってしまう。


それにイリスは美しいエルフなので観客からガン見されるのだ。


演説の時は最低でも20m以上離れる事が安全規約で決まっているので観客を俯瞰的に見る事が出来るので緊張しないって訳だね。


「それに皆んな目がギラギラしてんだもん」


ファッションショーに来る観客は、ほぼ業界人ばかりなので真剣にショーを見ている。

仕事なのでイリスを見る目がギラギラするのは当然だろう。


「何でロテール君は大丈夫なの?」

全然モデルをやらされる事に対して嫌がる素振りを見せないロテール君を不思議に思うイリス。


「え?だって初めてやる事ってワクワクしねぇ?

それに俺って今まで服なんかにこだわった事無かったからな。

面白い服を着れるから楽しいぜ?」


ロテール君の出身は中央大陸東部の小国だ。

自然豊かと言えば聞こえが良いが、ぶっちゃけると「ど田舎」でファッションショーなどは無縁の生活を送っていた。

ロテール君的に派手なファッションショーは斬新に思えて楽しいのだそうな。


「イリスもとっとと割り切れば良いじゃん?」


「ううううう・・・・・」


こうして3時間ほどショーの練習をしたが、エリカは、まぁまぁ練習の成果が有ったがイリスは置き物としてのランクが上がっただけだった。


「もうこの路線を極めれば良いじゃん?」


「うっさい!」


つーか、イリスやエリカは、ただの賑わせなだけで、ショーに関してはプロのモデルがしっかりやるので気にし過ぎである。


「フローズ様、そろそろお時間です」

銀髪の中性的な超絶イケメン執事がフローズに時間を知らせる。

言うまでも無いがヴァナルガンドが人に化けた姿である。


「ヴァナルガンドさんはフローズさんに凄く似てるねぇ~、弟さん?」


「いいえ、私はフローズ様の息子になります」


「ええーーーー?!」


ヴァナルガンドがフローズの息子と知りメッチャ驚いたエリカ。

あまりにもヴァナルガンドとフローズが主従の様に振る舞っていたからだ。


しかし別に親子関係が上手くいってない訳での他人の素振りでは無いらしい。


「このスタイルは私の「趣味」ですので、お気になさらずに」


「そうなんだ・・・趣味ですか・・・」


「何と言いますか・・・「執事プレイ」とか言うモノらしいですね」

息子の奇行にフローズも最初は困惑したが今はもう諦めているとの事。


フェンリルもグリフォンに負けず劣らず変な種族だなぁ、と思うエリカだった。












《グリフォンが変じゃなくって王様が変なだけですぅ!!!》


《ガアアアアアーーーーンンン?!?!》

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