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31話 「極寒の大地」

そして話しは現在へと戻る。


フェンリル王との交渉の為に北極圏へと出向いた魔王エリカの一行。

途中まで順調だったのだが、もう少しの所で極寒の洗礼を受けていた。


ちなみに北極圏ではさすがのグリフォンでも飛ぶ事は出来ない、羽が凍り付いてしまうからだ。


グリフォンの地上での移動能力は?と言うと身体は獅子なので結構早く走れる。

亜種のヒッポグリフともなると時速70kmで走る事が出来る。


ただエリカはグリフォンの親戚筋であるヒッポグリフ族とはまだ遭遇していない。

彼らの生息地が西の大陸の奥地との事なので使者を出している状況で、向こうからは「心より王の起こしをお待ちしております」との返答を貰っている。


北極圏での仕事が片付いたら最優先でそのまま彼らと合流する予定である。

魔族スペクターの暗殺部隊を意図的にガン無視してて笑う。



ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・



《いやー、ヤバいねぇ、さすが北極圏だねぇ》

モフモフエリカと言えど、この猛吹雪はさすがに寒くてモフモフを最大まで拡大させて暖を取っている。


パッと見、「羽毛ダルマ」である。


「アラクネーさんは寒いの大丈夫なんですか?」

幸せそうに「羽毛ダルマ」の中でモフモフに夢中になっているアラクネーさんに質問するエリカ。


《何モシテナイト全然ダメデスネー、昆虫ナノデ》モフモフモフモフモフモフモフモフ

あまりにも寒いと眠くなって冬眠してしまうらしい。


フェンリル王が住む北極点の洞窟までもう少しの所で、前が見えない程の猛吹雪に足止めを食らっているエリカ一行。


寒さに弱いゴーストスパイダー君達もエリカの羽の中に居る。

え?そんなんでこの先大丈夫?魔物選を間違えてない?


同行している勇者ロテール君も同じ事を思ったのか、「今からでも誰かと交代します?」と聞くと。


《体内ニ電気ヲ流シテマスカラ大丈夫デス》との事。

電気カーペットを身体に巻いてる様な状態らしい。


眷属のゴーストスパイダー君達も同じ事をする訳なのだが魔力節約の為にエリカの羽の中で暖を取っている。

と言う言い訳をしてエリカに引っ付いて甘えているだけなのだ。


ロテール君は勇者らしく「自然影響無効」のブッ壊れスキルが有るのでマイナス120℃までなら耐えれるらしい。


いや外気温がそんなんになったら流石に世界中のほとんどの生物が死滅してるわ、やっぱ凄えな勇者って。


現在の北極圏は、季節は真冬、気温マイナス25℃、天候は猛吹雪、どうやら北海道内陸部と似た気候だね。


不思議な話しだが南極圏になると平均気温が一気に下がりマイナス60℃になる。

北極圏は近くの恒星の影響でメチャクチャ暖かいとの事だ。

南極圏は「極寒の死の世界」で修行をしている龍種しか住んでいない。


そんな割と温暖な北極圏なので結構な多くの種類の生物が住んでいるのだ。


今も猛吹雪に追われたたくさんの雪兎がエリカの羽の中に避難して来ている。

猫くらいの大きさで、とても可愛い雪兎も立派なBランクの魔物でエリカと従属の契約をして避難させて貰っているのだ。


可愛い見た目に反して戦闘には強く、集団での「氷結魔法」は強力で冒険者達も安易に手出しをしない。


そんな雪兎でもこの猛吹雪はキツイのかエリカの羽の中でモゾモゾとゴーストスパイダー君達と押し合いでの位置取り合戦をしている。


雪兎とゴーストスパイダーの可愛いプロレスを眺めながら雪が止むのをボケーと待っていたら強い魔力がこちらに近づいて来ているのを察知する。


《あ・・・来たね》エリカが呟くと同時に魔力の主が姿を現す。

エリカ達の前に白銀色の毛を持つ体長10m超えの立派なフェンリルが現れたのだ。


《魔王エリカ様ですね?》


《そうです、ヴァナルガンドさんですね?はじめましてエリカと申します》


《これはご丁寧に、名乗るのが遅れて申し訳ありません。

私はヴァナルガンド、フェンリル王、フローズ様に仕える者です》


「ロテールと申します」「羽毛ダルマ」から出てペコリと頭を下げるロテール君。


《アラクネー、ト言イマス、ヨロシクオ願イマス》

アラクネーさんも名残惜しそうに「羽ダルマ」から出てニコリと挨拶をする。


《え?!?!》


《エ?!》


全員で、はじめましての挨拶をしていたらアラクネーさんを見て滅茶苦茶驚いた様子のヴァナルガンド。


《ああ!いえ失礼!よもや「神剣士」様にここでお会いするとは思っていなくて・・・》

神々とも深い繋がりが有るフェンリルなので神剣士アラクネーさんの事も知っている様子だ。


《冥神ヘル様ハ、オ元気デスカ?私ハ今ハ、エリカ様ニ仕エテオリマス》


《そっ・・・・・そうなんですね?さすがは天龍王アメデ様の眷属のエリカ様ですね》


《アア!イエ!アメデ君ハ関係無イデスヨー、ウフフフフ・・・

私個人ガエリカ様ニ心酔シテイルダケナノデ》


昔からの顔見知りの天龍王アメデを君呼びのアラクネーさん。

彼女もれっきとした天界の亜神様なのだ、エリカのモフモフが絡むとおかしくなるだけで・・・


《エリカ様は凄いんですねえ》エリカを尊敬の眼差しで見るヴァナルガンド。


《私が凄いんでは無く、モフモフが凄いんです》


《え?モフモフ・・・ですか?》


《いいえ?何でもありません》


最近「ウッホホーイ」から頭が冷えて冷静になったエリカは、ようやく「神様のアラクネーさんが自分に仕えている」と言う異常な現実にめっちゃ困惑して来ている。


いや、今更かい!


『そう思うならアラクネーを私に返して下さい!本当に大変なんですよぉ!!

と言うよりアテネ様と音信不通なんですけどぉ?!』

どこからかパシリ女神の泣き言が聞こえたのは気のせいだろう。


《それで、フェンリル王のご様子はどのような感じですか?》


《そうですね・・・何と言って良いか・・・

一言で言えば「無気力」と申しましょうか・・・》


《そうですか・・・》魔王バルドルの寄越した情報とも一致している。


《ただ、エリカ様が来ると知り大変お喜びになられてます》


「そ・・・そうなんですね?》

もう一つの情報、「可愛い女の子が大好き」を思い出して一気に不安になり微妙な表情になる。

今は最大モフモフなので気が付く者はいないが。


エリカ自身、自分の容姿を気にした事は無いが昔から周囲に「可愛い」と言われているので、うん・・・まぁ、多分可愛いのだろうと、めっちゃ他人事に思っていたりする。


エリカからして見ればイリスの様な子が本当の意味で可愛いと思っているので別に可愛いと言われても驕る事も無い。


《「たくさんの服を用意してお待ちしてます」との事です》


《そっ・・・そうなん・・・ですね??》顔が引き攣るエリカ。


可愛い女の子が好きで、何か知らんが服を着せられる??・・・変態ロリコンか?!

と、もう巣穴に帰りたいエリカだった。


「一応言っておきますとエリカは俺の妻なので妙な事をしたら阻止しますよ?」


「ロテール君?!」

いつの間にか彼女から「妻」にランクアップしてて驚いたエリカ。

ボォン!と顔が赤くなったがこれまた誰にも気が付かれる事はなかった。


《妙な???・・・・・・・・・・・・・ああ!なるほど!

大丈夫です、フローズ様はそう言うのではありませんからご安心を》


《???????》「???????」

「そう言うのではない?」とはどう言う事か分からないエリカとロテール君。


実際にフローズに会って「ああ~、なるほど、そう言う事か」となるのだが、今はまだフェンリル王フローズの事を誤解している。


実の所、エリカはフローズと何回も会った事が有りメッチャ知り合いなのだが「フェンリル」と全く結び付かないので気が付く事は無い。


《この吹雪は私が何とかしますので参りましょうか》

ヴァナルガンドが《ウオオオオオオオンンンンン》と吠えると吹雪が吹き飛ばされたかの如く晴れてしまう。


《凄イ!》アラクネーさんが驚くほど高度な天候操作魔法を使ったヴァナルガンド。


《さてフローズ様の「工房」まで到着するまでは吹雪は持ちましょう・・・急ぎますよ》


《ふぇ?!》「うわ?!」《キャッ?!》

エリカとアラクネーさんとロテール君の身体が重力操作魔法で自然と浮きヴァナルガンドの背中に着陸する。


今のエリカはゴーストスパイダーと雪兎を羽の中にフル搭載してて結構重いのだが、何事も無いかの様にヴァナルガンドは軽快に走り出す。


「この人??・・・ヤバくね?」

勇者視点からもヴァナルガンドは魔力、魔力操作、身体能力、知性、全てが異常なレベルで優れているのが分かる。


《いや~アラクネーさんを見たら、もう何でも有りかなぁ?って思うよ?》


《ナゼ私?!》


雪原を物凄いスピードで駆け抜けるヴァナルガンド。

防御障壁を張ってくれているのだろう、風圧も振動も感じない、新幹線で移動しているかの様な感覚になるエリカ。


「アラクネーさんも同じ様な事出来ます?」

あまりの高性能フェンリル号に思わずアラクネーさんに質問するロテール君。


《ウーン?・・・・・・・・・チョット無理デスネェ》アラクネーさんも苦笑いだ。


「亜神様より凄いんか・・・」


凄いだろうとは思っていたがマジで凄いフェンリル族、これ手を貸す必要ある?と思ったエリカだが、「普通のフェンリルは出来ませんね」と、ヴァナルガンド。


単純にヴァナルガンドが凄いだけらしい。


こうして魔王エリカ御一行様は高速ヴァナルガンド号にて物凄えスピードでフェンリル王フローズの巣穴へとたどり着いたのだった。



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