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30話 「ようやく激突!バルドルVSアラクネー」

《光翼斬!!!》アラクネー!厨二病全開の一撃!

とは言え威力は全く笑えない!バルドルの闇を切り裂きながら超音速の剣撃が処刑人の剣に直撃して纏う混沌のオーラを祓う!


模擬戦なのであえてバルドルでなく武器破壊を狙ったアラクネー。

バシィイイーーーンンンンン!!バリバリ!!バリバリ!

「ぐおおおおおおお?!」


何とか対応出来たバルドルだが、やはり剣士としてブランクが有るバルドルにはアラクネーの奥義に対応するのはかなりキツイ!


この場は武器性能に助けられる。

光の一撃に処刑人の剣がひしゃげるが名剣と言う物は柔軟性にも優れている、アラクネーの一撃の威力を吸収して折れる事はない!


「こりゃあ!いかんわい!アルストロメリア!!」

剣撃を受けながらもバルドルが闇魔法を発動させる!


え?!アルストロメリア??花か?

すると闇のオーラがアルストロメリアを形作り一気に広がってアラクネーを包む!


バシーン!!アルストロメリアの花が円状に変化すると、

《!!!!!!キャアアア?!アハハハハハハハ!!!》

この魔法攻撃を受けると悲鳴を上げて笑い始めたアラクネー!一体どうした?!


《イヤーン!》

アラクネーは後ろに飛んでバタバタと慌ててアルストロメリアの効果範囲から逃げ出す。


「くくくくく・・・やはり「くすぐったい」のが苦手のようだな神剣士」

アルストロメリアと言う魔法は相手を魔力で包んでくすぐる魔法だ!


んな訳ある訳もなく、本来は相手を包み円状に強引に押し潰して圧縮爆発を起こす、可愛い名前に似合わない極悪な近距離戦用の闇魔法だ。


開発者は四天王のヴァシリーサ、彼女が作る魔法には全て花の名前が付けられている。

案外と乙女なヴァシリーサには花の名前の方が魔法発動のイメージがし易いからとの事だ。


ただ今は模擬戦なので窮地脱却を狙いアラクネーをくすぐる為にバルドルが流用したに過ぎない。


《ウウ・・・嫌ナ攻撃ヲ・・・エッチ魔王》

ほんのり頬を赤くするアラクネーはエロ可愛く見える。つーか神様にも「エッチ」とかの概念が有るんだね?


『有るに決まってるじゃないですか!変態!神を恐れぬ罰当たり者!早く変態集落に帰りなさい!』


酷い!それに変態集落じゃないやい!ちょっと過疎ってる限界集落だい!


さて、一応コレでトトカルチョ的には「5発魔法を当てればバルドルの勝ち」なのでバルドルの勝利なのだが、次々に起こる超常過ぎる現象のせいで誰も気が付いていない。

と言うかここで止めたらバルドルとアラクネーに何されっか分からないだろう。


「あれ?今のってバルドルさんの勝ち・・・」


《イリス!・・・しっ!》

言ってはならん事を言いそうになった勇者イリスを「めっ!」する魔王エリカ。


《フッ!》

足を止めるとくすぐり攻撃が来ると分かったアラクネーは軽いステップで手数勝負に出る。

対するバルドルも長剣ながらも鋭く処刑人の剣を振り手数勝負に応じる!


キィーーーンン!!カァーーン!!キィーーン!キキィーーン!

小気味良い音を立てて斬り合う2人、しかし高速での斬り合いに長剣の処刑人剣は不利なのは変わらず徐々にバルドルが押されて行く。


バルドルもその都度、アルストロメリアを発動させて逃げようとするが一度見た技を許すアラクネーではない。

魔力が収束した場所に剣を差し込みいなして霧散させて行くのだ。


「なんと?!」


「ひゃあああ?!あんな事を何で出来るのぉお?!」


「あれ・・・単純に剣で魔力を反射させて相殺してるよ?!」


キィーーーンン!バシュウ!キキィーーン!バシン!パシーン!


「ぐおおおおお?!マジかぁあああああ?!こんなん有りなのかぁ?!」

バルドルの魔法発動よりアラクネーが剣を刺すのが早く、全く魔法を発動させる事が出来ず追い込まれて行くバルドル。


長いヴァンパイア生活でも物理攻撃で魔法を封殺するこんな離れ技は見た事がない。

魔法は霧散させられても魔力消費はしているのでバルドルの魔力はドンドン低下して行く。


《ウフフフフフフフ、ドウシマス?ジリ貧デスヨ?魔王バルドル》

剣圧をドンドンと高めて来るアラクネー、このままだとバルドルの敗北は必至な状況だ!


「ええい!ならばこうだ!」

起死回生を狙いバルドルは処刑人の剣を回転させて剣の柄も使い薙刀の様な動きをする。

前にエリカに教わった技を実践したのだ。


コーーン!キィーーン!!カカーーン!!


《アラ?薙刀ネ?デモ薙刀ハ私モ得意ナンデスネ!》

するとアラクネーもバルドルと同じ薙刀の太刀筋に変える。


「うっそだぁ?!」即座に薙刀術に合わせるアラクネーに驚くバルドルだが、残念ながらアラクネーは「地球の神様」なので日本の薙刀術も当然知っている。


「むう!情け無いぞバルドル!」最早打つ手無しのバルドルを叱責するマクシム君。


そして・・・


カァーーン!!・・・・・ドスン!


遂にアラクネーの上段払いがバルドルの処刑人の剣を弾き飛ばして処刑人の剣はクルクル回り10m先の地面に刺さる。


《ハイ!コレマデデス!》


「うぬぬぬぬ~」バルドルの顔先に剣を突き付けるアラクネー、勝負有り!だ。


ウオオオオオオオオオオオオオオ?!?!

観客達の雄叫びが荒野に響く!4万体の魔物の雄叫びなので大迫力だ!


「むう・・・完敗じゃったわい・・・もう少しやれると思ったのじゃが」


《アラ?貴方ノ勝チヨ?私ハ、アルストロメリア、ヲ貰ッチャイマシタカラネ?》

先のバルドルの勝利をアラクネーが気が付いてない訳も無く、敗北宣言をするアラクネー。


「ぬ?!そう言えば・・・」


ドオオオオオオオオオオオオオオ?!?!?!アラクネーの敗北宣言に更に響めく魔物達。


《楽シンデ貰エタカシラ?》ニコリと笑うアラクネーさん。


「むっ!全てはアラクネー殿の演出じゃったか・・・」


ここでアラクネーの「神剣アダマス」の召喚も剣技対決も彼女の演出だと気が付いたバルドル、彼女は「楽しい事が大好き」なのだ。


『そんな事で『天界門』を使わないで下さいよぉ・・・』


《アラ?私ハ「悪い子」デスヨ?ハルモニア様?ウフフフフ》


『もう・・・始末書・・・書いて貰いますからね?』恨めしそうなパシリ女神だった。


ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!?!

ようやく観客も「大穴」決着に気が付いて雄叫びから歓声を上げる。

でも最終オッズは、バルドル35対アラクネー65なので、超大穴と言う訳でもなかった。


「うわ~、面白いモノ沢山見れたねぇ?」


「来た甲斐があったねぇ~」


トトカルチョに賭けていないエルフの娘は単純に凄いモノの見れて喜んでいる。

しかし心穏やかで無いのはエリカだ。


《なっ・・・何でアラクネーさんは私に仕えているのぉおおお?!》

世界最強格の魔王バルドルを実力で封殺する神剣士アラクネーを従える魔王エリカ。

その気になれば「世界征服」も出来るね!


《そんな事絶対にしませんけど?!》


こうして亜神2人の模擬戦は魔王バルドルの勝利(実質アラクネーさんの完勝)で終わったのだった。


それから不法侵入エルフのイリスを魔王バルドルが説教して、エリカが4000万円(相当)の金貨を半べそをかきながら魔物達に進呈したりしたのだった。


しかしエリカは3968万円(相当)の金貨しか持っておらず足りない分はイリスから借りた・・・




「イリス・・・お願いします、もう少しお金を貸して下さい・・・」

クッキーを買えないほどに困窮したエリカ、文字通りの文無しである。


文明社会でしか生活した事がないエリカ、今更原始生活には戻れない。

肉は何とか狩るとしても野菜とかパンも食べたいのだ。

何よりも調味料無しの料理など考えられない。


まぁ、配下に金貨を要求すれば幾らでも供出して貰えるだろうが、そこは誇りある武門、島津家ゆかりの出自。

守るべき配下に自分の飯代を出させるなどあってはならぬ醜態なのだ。


ちなみにエリカの支配領域では耕作は一切していない、何せ魔物しか居ないので。

なので割高でも商人を介して食品を輸入しているのだ。


「もう・・・変な見栄を張るから・・・」

文無し魔王エリカに再度お金を貸す金持ち勇者のイリス。


文無しになって、またイリスに借金をこさえて全てが面倒くさくなったエリカは、いじけてしまい、久しぶりに人間の姿でイリスの腰に抱き着いて膝に顔を埋めて不貞腐れている。


「フガフガ・・・我が領地でも絶対に農業を始めてくれるわ・・・フガフガ」

とても情け無い姿で決意を固めるエリカ。


「くすぐったいっての」エリカが膝に顔を埋めながら喋るのでくすぐったいイリス。

くっついて離れないエリカの頭をペシペシ叩く。


《アラ?御主人様ハ日本人ダッタンデスネ?》

初めて見る黒髪黒目の人間の姿のエリカに興味津々なアラクネーさん。


「フガフガ・・・そうです・・・アラクネーさん、日本を知ってるんですか?」

イリスの膝からふがふがと吃った声で質問をするエリカ、どうやら頭を上げる気力も無い様子だ。


《ソリャア、世界デ1番私ノ名前ヲ呼ブ国デスカラネ~》


地球の国々は数多く有れど1日1回、どこかで必ず「アラクネー」の名前が出る国など日本くらいなモノだろう。


世界の太古の神々や魔物が当たり前の様に登場する日本のゲーム、漫画、小説、アニメ文化はとても特殊なのだ。


《ナノデ私ハ、力ヲ維持出来テイルノデス》

神の力の源は人々の信仰心である、人々に忘れられて名を呼んで貰えなくなると自然に消滅するのだ。


アラクネーも神話時代より長い長い時代を経て人々の記憶から消えつつあり、その存在は図書館や博物館に保管されている古書の中に有るのみ・・・

長い時間、女神アテネの神殿にて、ただ消滅を待つのみの休眠状態になっていたのだが、日本人にある日突然注目され始めて大勢の人間に名前を呼ばれる様になって復活したのだ。


《ナゼ日本人ハ私ナドニ興味ヲ持ッタノデショウカ?》


「それはアラクネーさんに浪漫しかないからです。

女神と喧嘩して蜘蛛になった機織りの村娘の神話など日本人的には好物でしかありません。

私もアラクネーさんの物語の妄想でご飯3杯は行けるクチです」


《ロ・・・浪漫??・・・ソ・・・ソウナンデスネ?》


「本当に日本人って変わってるよねぇ。

それよりエリカはご飯3杯って良く言ってるけど、ソレ何なの?」


「それだけ好きって意味ですね。フガフガ」


日本人の海外の物語を見て更に妄想を膨らまして別の物語を作る感覚はアラクネーとイリスにはピンと来ない・・・


「多分、日本人のアラクネーさんへの妄想は、これからもまだまだ膨らんで行きます」


《ナンカ怖イデスネ?》


どうやらアラクネーさんの消滅の日はまだまだ遠い未来になりそうだ。

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