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21話 「ギリメカラの盗伐」

グオオオオオ!!!ガアアアアアーーーー!!

凄まじい魔物達の雄叫びが周囲の木々を震わせている。

フェンリル王の説得前に、ある山の森で本気の戦争を起こした魔王エリカ。


北の大陸でいつもグリフォンに悪さを働いている異界から来た象の化け物ギリメカラの討伐である。


数日前にいつもの事とばかりにギリメカラに5体のグリフォンがお遊びで狩られて死亡したのだ。

いつものグリフォンなら泣き寝入りのはずだが?


しかし今のグリフォン達には統率者である魔王エリカが居る。

魔王エリカは即座にギリメカラに対して反撃に出る。


それに対するギリメカラも全戦力の5000体で迎撃に出た。

《フン!バカめ!グリフォン如きが・・・・・んな?!》

ギリメカラの王の目には30000体を超えるグリフォンが空を埋め尽くし、更に地上から30000体を超える完全武装のミノタウルスが陣形を組みながら進んで来ている。


魔王エリカも出し惜しみ無しの全戦力投入だ。


《・・・ミノタウルス隊は予定通り、鶴翼陣形のまま前進して敵を三方向から包囲》

仲間が無残に殺されて本気でキレている魔王エリカにいつものおふざけは無い。


弱肉強食が常の魔物だが、お遊びで仲間を狩った連中に掛ける情けは無い。

仲間の死には相手にも絶対の死を持って贖ってもらう。


魔王エリカは空を飛びながら魔力感知を使い戦場の全てを俯瞰して的確にギリメカラの群れを包囲殲滅して行く。


《グリフォン第3小隊は左翼のミノタウルス隊の援護・・・》


グアアアアアア?!?!今までとは全く違うグリフォンの動きに混乱して次々とグリフォンの鉤爪の餌食になる。


「ぬうん!」ズガガガガ!!!《ぎゃああああ?!》《ふぐぇえ?!》

ミノタン率いるミノタウルス隊は魔王エリカの言う通り陣形を崩さず突出した敵から順番に始末して行った。



「さて!私達もやるわよ!総員!ライトニングアロー!!」

最前線から2km離れた山肌に展開していた真魔族の魔導士1000名が赤騎士ヴァシリーサの指示で一斉に遠距離魔法攻撃を敵の後方部隊に撃ち込み始める!


ゴオオオン!!ゴゴゴゴゴゴ!!ズゴオオンン!!!


《ぎゃ?!》《何だ?!この異常な量の魔法の矢は?!ぐお?!》

次々と雷の矢に貫かれるギリメカラの兵士達。


有効射程外からの攻撃なので狙いは定まらないが広範囲の面制圧攻撃なので問題はない。


《ヴァシリーサさん・・・更に後方に火炎弾攻撃》


「分かったわ!任せて!

《うーん?・・・エリカは怒りの頂点を突き抜けると冷静になるタイプなのね・・・本気で怒らせると怖いわぁ》」


ズドオオオオンン!!!ドゴオオオオンンン!!ゴオオオン!!

次弾の火炎弾1000発がギリメカラの後方陣地に降り注ぐ。

真魔族が放つ火炎弾1発の破壊力は手榴弾より高い殺傷能力があるのだ。


ゴオオオオオ・・・ゴオオオオオオオオオ!!!!!!

《ひゃぎゃああああ?!》《熱い!助け助けてくれぇええ!》《炎がああああ?!》

そして陣地はあっという間に業火に包まれる。


その業火の中に追加でドンドン火炎弾が撃ち込まれて行く!


《おお・・・おおお・・・ひい・・・ひい・・・》

何とか業火から逃れた全身大火傷のギリメカラがフラフラと歩いてると・・・


《おとーさんの仇ーーー!!》シュバーン!《へべ?!》ドン!ゴロゴロ・・・

空から急襲して来たグリフォンの鉤爪で首が飛んだギリメカラ。


《次!!死になさい!仇共ーーーー!!》

敵陣に突入して大暴れしているグリフォンロードのコンちゃん。

手当たり次第にギリメカラに襲い掛かり難なく討ち取って行く。


純粋は物理攻撃は現時点でもグリフォンで1番強いだろう。

まだ子供でこれなのだから大人になったグリフォンロードがどれだけ強くなるのか想像も付かない。


エリカより遥かに強くなるのは間違いないだろう。

それを見た現在のグリフォンロードのエリカもゆっくりと動き始める。


一部の隙も無く情け容赦も無い魔王エリカ軍団の猛烈な攻撃に大混乱のギリメカラ勢・・・


《なんだ?!なんだってんだ?!たかが数匹のグリフォンを殺しただけでこの仕打ちとは?!我等を絶滅させるつもりか?!ユグドラシルとの協定違反だ!》


自分勝手な言い分を吐き捨てるギリメカラ王の耳に・・・


《たかが数匹グリフォン・・・ですか?》突如として女の声が響いた。


ガバッとギリメカラ王が女の声がした方向を見ると、一匹のグリフォンが空中をホバリングしていた。


《・・・お前が・・・魔王エリカか?》


グリフォンはギリメカラ王の問いには答えずに・・・


《貴方達は私が美味しく料理をして私達が有り難く頂いて糧とさせて頂きます。

・・・・・・・5000体もすみませんね?どうもご馳走様です》


《んな?!》

このグリフォンは自分達を殺すだけでは飽き足らず「食う」と言っているのだ。


《うふふふふ・・・貴方の後ろの肉はコンガリと焼けて随分と美味しそうですねぇ。

火力の調整が大変でしたよ?焦げ過ぎると美味しくないですからねぇ。

うふふふ・・・ふふふふふ》

口調とは裏腹の凶悪なオーラがギリメカラ王の周囲に満ちる。


《う・・・うわ・・・》

先程の火炎攻撃は自分達を「殺す為」では無く「調理する為」のモノと知り、恐慌状態になったギリメカラ王が後ずさる。


《あらあら?どちらに行かれるのです?要件はこれからですよ?


さて・・・貴方はどう料理しましょうか?

象のお味は「大味」と聞いてますけどどうなんでしょうねぇ?


なら味噌漬けとかにすれば良いでしょうか?それとも燻製にしてお味を凝縮?


うふふふ・・・貴方はどちらが良いですか?

貴方自身の事ですから死後の事を特別に選ばせて差し上げます》


もはや自分は魔王エリカからは「敵」と認識されておらず「単なる肉」と思われていると悟るギリメカラ王。

自分がこれから辿る未来が「味噌漬け」か「燻製」だと知らされる。


《あわ・・・・・ひぃいいい?!龍?!龍ぅうううう?!?!》


見た目はグリフォンだが周囲に溢れているオーラが龍に見えたギリメカラ王。


《あら?見えちゃいました?ごめんなさいねぇ?私って「九頭竜王」の眷属なんです》


《くくくく九頭竜王おおおお?!?!》


《その私に喧嘩を売ったのですから「食べられても」文句は言えないですねぇ?》


《ヒュッ!》パァーーーンンンンン!!

思わず悲鳴を上げ様と息を飲んだ瞬間に首を飛ばされたギリメカラ王・・・

エリカの超音速のウインドカッターがギリメカラ王の首元に走ったのだ。


クルクルと鮮血を撒き散らしながら宙を舞うギリメカラ王の首を見て・・・

《ふう・・・気が進まないですけど》パク!メキメキメキメキ!!ゴリリリ!!

エリカが首に食い付き丸飲みにして頭をクチバシを使い噛み砕く!


魔物はこうして相手の頭を食い、倒した敵のスキルやステータスを奪うのだ。


そしてゴクンと噛み砕いた頭を飲み込むエリカ。

そして《噂通りの大味ですね・・・》と呟く。

こうしてギリメカラ王の全ての力は魔王エリカに吸収されたのだった。


自分達の王が魔王エリカに食い殺されていよいよ潰走状態になったギリメカラ達。

しかし魔王エリカの命令が「全員の夕御飯なので一匹も逃がさない様に」との事。


情け容赦のない追撃戦が続く。


命乞いなど無駄な足掻きで1時間も掛からず5000体全てのギリメカラが殺されて魔王エリカ軍団に接収されて夕食用の「肉」となった。


そして戦場から3km地点に有った彼等の集落には2000体の非戦闘員のギリメカラが居た。

自分達の戦闘部隊が皆殺しになったと知り身を寄せ合いガクガクと震えている。


「エリカなら見逃すのかな?」と思われたが彼等も当然の如く全員が魔王エリカ軍団狩り殺されて「肉」となった。


魔王エリカも自ら200体以上のギリメカラをその場で食い殺したのだった。


異界から来た象の化け物、ギリメカラ族は魔王エリカの手に掛かり一体残らず世界から駆逐され本当の意味での「滅亡の日」になったのだ。



そして戦勝記念の象肉パーティーが始まる。



《おとーさんの仇ーーー!!》

先のギリメカラ族の狩りで死んだ父の分まで焼いたギリメカラ肉を喰らうコンちゃん。


《美味しく無い!美味しく無いよコイツ等!!

うえ・・・うええええええええええんんんん!!!》


父親が殺されたと聞いた時も気丈に振る舞い、泣く事はなかったコンちゃん。

自ら父親の仇を討ち、その肉を食ってようやく号泣したのだった・・・

そして泣きながらでも肉を食らう。


魔王エリカ軍団の魔物68000体は全員言葉少なげに狩った敵の肉を思い思いの調理方法で食ったのだった。

こうする事で自分達がもっと強くなれるからだ。


「・・・エリカよ、大丈夫か?」


血の滴る生のギリメカラ王の生肉を内臓諸共にやけ食いしている魔王エリカに魔王バルドルが話し掛ける。


《うん・・・思う所は多々有るけど私は「魔王」だからね。

魔王を名乗った時点でこうなる覚悟は決まっていたわ。

食べないと強くなれないからね!薬だと思って全部食べるわよ!》

バリバリ!!骨も噛み砕いて胃袋に収める。


食べたら食べた分だけ魔力が上がるのが分かる。


《そうか・・・》


《それに私の魂はやっぱり「鬼島津」なんだなって痛感したわ。

コイツの首をはね飛ばした時にね?「気分爽快な気持ち」になっちゃったわ》


《・・・頼むから首狩り魔王にだけはなってくれるなよ?》

日本に住んでいた事が有るバルドルも「鬼島津」の敵への苛烈さは良く知っている。


《ならないよ!・・・多分ね!》バク!バク!バク!バク!バク!バキバキ!!


《首置いてけ・・・か》

バーサーカー島津の真骨頂を見てしまった魔王バルドル、肉をバカ食いするエリカを心配そうに見ているのだった。


こうしてギリメカラ肉を完食した魔王エリカ軍団はそのまま帰路に着いたのだった・・・

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