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3話 「大岩落とし再び!」

「いやあああああ?!?!」ドオオオオオン!!!プチン・・・


「あ・・・死んだ」


『はーい、イリス残念~』


再び霊峰シルバニアへ修行に来て1週間が経ち今日もイリスは爽快な程に大岩にプチンと潰されていた。


前回の話しを読んでない人の為に説明するとシルフィーナの母シルバニアは山である。


山って何?と聞かれても自他共に認める山なので仕方ない。


正確には霊峰に宿る大地の精霊王で、ある条件を満たすと人間として活動出来る。

前回人間となったその時に人間の男性と恋に落ちシルフィーナが産まれて、その男性と自身も老衰で亡くなってシルバニアの魂は霊峰に戻った・・・と言う経緯がある。


そんな霊峰シルバニアが娘のシルフィーナの為に考案した修行が、

「500個の大岩をかわしながら1kmをダッシュで駆け抜けよう!」である。


とても頭の悪い修行に思えるが降り注ぐ500個の大岩を回避出来れば大体の物理攻撃は楽勝で回避出来る様になる素晴らしい修行なのだ。


大岩の動きを見る動体視力、どこに落下するかの判断力、降り注ぐ大岩の中に突撃する度胸、全力で1kmを走り抜けるスピードと体力、その中での一瞬の瞬発力。


どれか一つ欠けてもプチン不可避である。


大岩にプチンしたら即死すんだろ?!

大丈夫です、等修行には安全装置がしっかりと搭載されております。


挑戦者の周囲には落下してくる大岩を楽に弾ける強力無比の障壁が常に展開してあるのでシルバニアは安心して情け容赦無く大岩を落として来るのだ。


しかし無痛だと集中力と緊張感を無くすので0.05%程度の衝撃が伝わる様になっている。


どのくらいの痛さの衝撃かと言うと、一般的な成人男性に背中を思い切り蹴られた程度には痛い。


つまり泣きそうになる程度には痛いのだ。


身体のどんな所に当たっても必ず背中に衝撃が来る様に設計されていて自分で防御障壁を張っても完全無効化されてしまう。


勿論、頭への衝撃は100%カットされている親切設計です。


挑戦者にそんな高度な障壁を張り続け、2トン超えの大岩を500個を念力で持ち上げて高さ100mの所から狙い通りに落としまくる。


恐ろしいまでの魔力である。

霊峰シルバニアは凄えチートなスーパー精霊王様なのだ。


と、・・・そんな訳があるはずもなく、しっかりとシルバニアの力には秘密が有る。


これが大地の精霊王シルバニアが霊峰と同化してずっと山に詰めている理由で、この山には世界最大の「魔石」の鉱脈が有るのだ。


世界の一般常識では「上級魔石」は真魔族領でしか採掘されないとされているが、霊峰シルバニアの魔石鉱脈の上級魔石の埋蔵量は真魔族領の上級魔石の鉱脈のおおそよ20倍だ。


この事実は三龍王も知らない超極秘事項だ。

現状で上級魔石鉱脈の存在の事を知っているのはシルバニア本人だけである。


シルバニアの大岩落としの修行の魔力源は山中に埋蔵されている無数の上級魔石の力を利用しているので、こんな変態修行が可能なのだ。


シルバニアは言わば霊峰の「コントロールセンター」の役割を担っている。


先述した「シルバニアが人間として行動する為の絶対的な条件」とは「霊峰の力を悪用しようとするアホが居ない平和な時代の時」であり、現在の大乱期ではとてもではないが人間として行動は出来ない。


その理由は人間になるのは簡単だが、人間になると精霊王としての力が著しく低下して自力では精霊王には戻れない。

霊峰に戻る為には「死亡して人間の身体より精神体(魂)が自然離脱する必要がある」のだ。


そのシルバニアが動けない間に何者か悪意の有る者に上級魔石を大量に採掘でもされたら世界滅亡の危機になると言っても過言でない。


シルフィーナが人の母の温もりを堪能出来るのはいつの日になる事やら。




霊峰シルバニアの説明が終わったので話を戻そう。



イリスは戦斧闘技を開発するべく「動体視力」と「瞬発力」の強化に修行内容を極振りしている。

大岩プチンは最適解の修行なのだ。


「亡きイリスの仇は私がとぉーーーーる!!シルフィーナママ!よろしく!」

腰に手をやりシルバニアを煽るエリカ。


「死んでないわよ!!」エリカの横でうつ伏せで倒れて背中を押さえうずくまってピクピクとしているイリス。


大岩プチンチャレンジが失敗した挑戦者は自動でスタート地点に戻されるこれまた親切設計なのだ。


散々ぱら霊峰シルバニアに来る事を嫌がっていたエリカだったが彼女も修行キチガイ、いざ修行が始まるとイリスと先を争いながら大岩プチンに挑戦しているのた。


《OK~、行くわよー?150個だよ~、エリカも成長したわねぇ》

タタタタターーンと落下する座標を設定するシルバニア。

エリカの行動パターンを予測し大岩の軌道を入力してスイッチオン!

想像以上にシルバニアが楽をしていて笑う。


ゴゴゴゴゴゴ・・・とシステムが作動し低い音を立てながら上空へと上昇して行く大岩達。


《よーい・・・スタート!!》


「はっ!!」低い姿勢で大岩群にダッシュで突撃するエリカ。


大岩を支えていた念力が解除され浮力を失い落下を始める大岩達。


《右に7つ!正面に3つ!左は0!!正面は囮!!左は罠!》

「思考加速」を使用して大岩の予測される落下状況を計算するエリカ。

そして敢えて数の多い右側に突っ込むエリカ!


《あら?》ここに来て従来の戦法を変えて来たエリカに感心の声を上げるシルバニア。

エリカもそうそう負けっぱなしではいられない!彼女も龍騎士隊イリスの参謀なのだから!


「なるべく最小の動きで!!」


ドオオオオオン!!ゴオオオン!ズドオオオオンン!!次々と地面に落下を始める大岩達!


エリカは前に見た「シルフィーナステップ」を参考に動きをトレースする。

何せシルバニアの娘のシルフィーナは大岩プチンの第一人者だからだ。


タン!タターン!大岩の隙間を素早く走り抜けるエリカ。

ズドドドオオオンン!!そして横に軽く飛んで大岩をギリギリかわす。


《なかなかやるわね!これならどうかしら?!》


4つの大岩が上空でクルクルと横回転しながら落下してくる?! 


「ここで新機能らめぇーーーー?!?!いやーーーん!!!」

ズドゴオオオオンンン!!!同時に落下する4つの大岩!


その攻撃をエリカは何とかギリギリかわしたが体制が崩れてふらついている。


「あー・・・エリカも残念ねー」さっきの仕返しにエリカに煽り返すイリス。


《メティオラーーーシュッ!!》

12個の大岩が時間差を付けて広範囲に落下して来る!


「まだよ!まだ終わらないわよ!」

ボウン!とグリフォン化して上空へ飛び上がるエリカ!


ドオオオオオン!ドオオンンドン!!ドオオオオオン!!!!


《よっしゃー!見たかーーー!!》見事にメティオラッシュをかわしたエリカ!


しかし上空には既に罠が張ってある!エリカの上昇地点に大岩が移動してあったのだ!


ドン!と背中が大岩に接触する。


《あっ・・・ああーーーー!いやぁああ?!待ってぇーーー?!》

ゴオオオオオオオオオーーー!!!

背中を大岩に押し付けられた状態で大岩ごと地面を目掛けて落下するエリカ。


ドオオオオオン!!!!・・・・プチン・・・・


《はーい、エリカOUT~》


《ひ・・・酷い・・・酷すぎるわ・・・ガクゥ》

シルバニアのハメ戦術にモロに引っかかったエリカだった。

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