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閑話 「ゾンビに堕ちた男」その4

残り2話で完結と言ったのですが文字数が多くなって残り3話で完結します^^



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ある晩夏の日の事だった。

そろそろ厳しい暑さも収まり朝晩は過ごし易くなって来た頃の話し。


我らが商団も更に大きくなり中央大陸を中心に商売販路を伸ばしていた時に私は、小さな集落から頼まれていた大型調理器具などを届ける為に馬車3台に仲間を10名ほど引き連れて本団からは離れて行動をしていた。


夕方前には到着出来るとペースを上げた途端に街道の入り口を10名ほどの兵士がバリケードを作って封鎖していた。


「え?立ち入り禁止・・・ですか?」


「ああ、悪いがこの街道は使用禁止なんだよ。

最初に言っておくが通行料欲しさに言ってる訳じゃないぞ?

本当に全面通行禁止なんだ、引き返してくれ」


「原因は何なのですか?」


「それが分からないから通行禁止なんだよ」


「????」


要領の得ない兵士の言葉に頭を捻りながらも何か騒動を起こす気は更々ない我々は仕方無しに引き返して近くにある大きな街へと向かった。


「集落と連絡が付かない??」

予定に無かった街に立ち寄った我々は街道封鎖の原因を探る情報収集の為に知り合いの商人の所へ行きそこで奇妙な話しを聞かされた。


「ああ、ここ一か月もあそこの集落からの連絡が途絶えているんだ。

真面目な酪農家が揃っているから心配していてねぇ。

あの集落は乳製品の産地だから、チーズとかの供給が途絶えてしまい、わたし達も困っているんだよ。


それで2週間前に集落の様子を見に行った者も戻って来なくて・・・

絶対に何か良くない事が起こっていると領主様にも陳情しているんだが・・・

ほら?今はアレだろう?」


彼は言葉を濁しているが、現在ここピアツェンツア王国は中央大陸制覇に動いてる。

この地の領主も息子を大将に据えて多くの兵士を出兵させている。

とても小さな集落の為に領都の兵士を大勢動かせる状態じゃない。


「それで領主様からは、「本国に救援要請しているから安易に集落に行かない様に」って通達が来ていてねえ・・・

わたし等も動けないんですわ」


つまり連絡不通の集落は見捨てると言う酷い話しではあるが、被害拡大を防ぐ為に兵士を派遣して街道を封鎖して本国に救援要請をしている対応をしているだけ、他より随分とマシな領主ではある。


「トマス、どうする?何か危険そうだ。

嫌な予感しかしない・・・俺は引き返すべきだと思うぜ?」

確かに仲間の言う通り嫌な予感しかしない・・・引き返すべきだ・・・しかし


「よし!お前達は本団へ合流してこの事を旅団長に報告してくれ。

あの集落周辺の行商は様子を見ようと伝えて欲しい。

・・・・・・・・・俺は少し集落の様子を伺ってから戻るよ」


「何言ってんだよ、ダメに決まってんだろ?

お前を置いて帰ったらケイラに何言われるか分からん。

帰るならお前も一緒だ」

仲間に即断されて苦笑いの私・・・


私の子供を3人も産んでくれた妻のケイラは、より一層母性愛が強くなり私に対しても過保護になってしまっている。


今回の仕事でも「絶っ対に無理はしない事!」と念押しされている。


しかし・・・私の直感が「集落に行かなければ」と告げているんだ。

おそらく「魂の浄化」に関わる何かだろう・・・


いや・・・.私には分かる!集落に「ネクロマンサー」が居るのだ。

奴はこの戦乱に乗じて勢力拡大を図っている・・・そんな確信がある。

何故か分からないが私には分かっているんだ。


すまんケイラ、子供達。

お父さんは「魂の浄化」の為にもここで奴から逃げる訳には行かないんだ。


「それならクルーゼに応援に来て欲しいと伝えてくれるか?

大丈夫だって心配するなよ、集落から離れた位置で確認するだけだ。

私だって死にたくないっての、近寄らないって。

あの集落付近の街道は私達にも大切な街道だろ?ちょっとは確認しておかないとな」


「それはそうだけどよ・・・いや!絶対にダメだ!」


私を心配してくれる仲間を宥めるのに苦労したが、「とにかく急いでクルーゼを呼んで来るからこの街で待っていろ」と、どうにか納得してくれた仲間と私は分かれた。


本当にすまんな・・・待つ事は出来ないんだ。


私は必ずこの日が来ると思い「対ネクロマンサーの装備」を常に装置している。


それにネクロマンサーを倒す為に妻や仲間にも秘密で魔法の勉強を頑張り「ソードマスター」から「魔法剣士」へとジョブチェンジ済みだ。


全ての装備を確認して私は完全武装で夜中に街を発ち集落へと向かった。


街から集落まで20kmほどと比較的近く、集落を堕としたネクロマンサーは間違い無く次はあの街へとやって来る。


いや奴らがもう街へ向かって来ているのが分かる。


本国から応援が到着するのを待っていたら間に合わないんだ。

本当は街にも警告を出したいのだが、恐らく相手にされないどころか逆に警戒されるだろう。

「何でそんな事が分かるんだ?」てね。


夜中に出発したのは、警戒中の兵士達に見つからない為でもあるが、

ネクロマンサーに遭遇する時に朝日が昇ってくるタイミングを測った。


ネクロマンサーもアンデットである以上は朝日には弱い。

まぁ・・・弱いと言っても能力1割減程度だが何も無いよりマシなんだ。


それにこの街道は平原のど真ん中にある、その為ゾンビ達結構はバラけて接近して来るだろう。

・・・・・・・・・あの時の私と同じ様に。


狙いはネクロマンサーのただ一匹、ゾンビ達にはバラけてくれていた方が助かる。


背に朝日の熱を感じ始めた頃、100年前の事だったが嫌でも鮮明に思い出す、あの悍ましい匂いがして来た。


「ああああああああああああああああああああああああああ」


ゾンビの声を聞き、私の体内の熱が上がる。


「久しぶりだな、ネクロマンサー・・・」

私をゾンビにしたネクロマンサーではないが、ネクロマンサー全てが私の不倶戴天の敵。


目の前には200体を超えるゾンビ軍団を従えたネクロマンサーが居た・・・


ネクロマンサーは目に入って来る朝日を鬱陶しそうに睨み、

{ホウ?我ノ軍勢ヲ見テ眉一ツ動カサヌカ?

フフフフ、良カロウ、良カロウ、オ前ヲ我ガ僕トシテ更ナル力ヲ与エテヤロウ}


悍ましい奴め!あの時と全く同じ言葉を吐くとはな!


「魔闘法・・・」私の身体を魔力のオーラが包む。

ネクロマンサー・・・あの日より100年近く掛けて鍛え上げた力を見せてやろう。


{ホウホウ?殺ル気マンマンジャノウ?}

問答無用で戦闘態勢に入った私を気色の悪い目で興味深気に見るネクロマンサー。


{ドコカテ会ッタ事ガアッタカ?}


「・・・・・・・・・・・・・」・・・・お前と話す言葉など無い。


{無礼ナ奴ジャ・・・マアマア良カロウ、良イ素材ガ手ニ入リソウダカラノウ}


楽しそうにそう言いながらネクロマンサーが手を上げると周囲に居た200体のゾンビ達が一斉に私の事を見る。

ここは平原、四方八方から取り囲み取り押さえて貪り喰うつもりなのだろう。


ふう・・・あれから約100年・・・私はネクロマンサーとの決戦に挑む!

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