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閑話 「ゾンビに堕ちた男」その1

☆注意


この閑話はハッキリ言って全体的に「内容が暗い」です。

頭がパッパラパー♪の作者的にも書きたくない書きたくはないがネタを振った以上書きました^^


あと少々グロ描写も含まれます、ゾンビなだけに。

苦手な人は読むのを飛ばしても物語的にも大丈夫です^^)/



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







嫌だ・・・・・


このままゾンビのままなんて・・・嫌だ・・・


ああ・・・神よ・・・愚かだった俺をお救い下さい・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・







・・・・・・・・・・・・・







・・・・・・・・







「アラン様・・・アラン様・・・」


「う?」


「お目覚めですか?

今日はラーデンブルク公国の公爵様との同盟調印の日ですよ。

アラン様も本日より遂に公務に参加です、お早く礼服の準備を致しましょう」


俺・・・いや私は、いつもの優しい侍従長の声で目を覚ました。


「ああ・・・うん・・・ありがとう、コックスさん」

起こしてくれた侍従長にお礼を言うと皺だらけ目元に更に皺が寄る。

嬉しそうだが、どうやら少し困った様子の笑顔だ。


すっかり白髪になった眉毛の奥には優しく光る青い目が見えた。


侍従長のコックスさんは私が産まれてから10年間ずっと乳母さんと共に付きっきりでお世話をしてくれている侍従さんだ。


本当の祖父は私が産まれる前に他界しているからコックスさんの事を祖父の様に思っているんだ。


「アラン様は第二王子なのですから・・・私めの事は「コックス」とお呼び下さい。

臣下に「さん」は付ける必要はありませんよ」


「うん・・・そうだったね、ごめんなさいコックス」

どうも起き抜けの時は素が出てしまう・・・素・・・か。


私の名前は、アラン・フォン・ピアツェンツア。


中央大陸のピアツェンツア王国の第一側妃、エリザベス妃の子、第二王子して産まれた。


その事実が分かった時、「何で罪深い私なんかが王子に?」と愕然とした。

私に人の上に立つ資格などは無い・・・


・・・・・・・・・そう・・・私には前世の記憶が有る。

いや、正確には3世代前までの人生の記憶・・・約500年分の記憶の全てが完全に有るんだ。


この異常な現象は自らが「神」に望み私が背負った業の「罪滅ぼし」なんだ。


そして今日は待ちに待ったラーデンブルク公国の女王イリスを見る事が出来る。

私の女神様だ・・・・




3世代前の私はとても愚かなゴルド王国の下級貴族のボンボンだった・・・


領地では平民を見下して食い物にして酒と女に溺れ、金が足りなくなると侵略戦争に参加して侵略した国の都市の住民を殺して家の金目の物を奪い、逃げ遅れた平民の女性を見つけると迷う事も無く犯して殺した・・・


およそ、鬼畜、非道、外道、残忍・・・全ての蔑称が当てはまる男だった。

そんな鬼畜な男にも遂に天罰が下る日が来たんだ。


世界の諺も知らない愚かな私達の国は調子に乗ってエルフの国を攻めた・・・

亜人如きに何が出来る物なのか!ってね。


今なら思う・・・「人間如きに何が出来る物なのか」と・・・


人間より全てに勝るエルフ達の痛烈な反撃を受けて世界最強だと勝手に自負していた海軍の艦隊は海の藻屑となった。


そんな中で私達、陸軍は「この世の真なる地獄」へと足を踏み入れてしまった。


私達が滅びるのは一瞬だった・・・

今思い出しても恐ろしい広範囲極大魔法の一撃で全てが終わった。

後で知ったけど「魔王バルドル」の仕業だったらしい。


同僚も弟も死に、私は水を求めて森の中を彷徨い死んだ・・・

しかし罪だらけの穢れ塗れの魂が救われる事を世界が許さなかったんだ。


フッ・・・と意識が戻ると私は「ゾンビ」になっていた・・・比喩とかじゃない本物のゾンビだよ。


気が狂いたくても狂えない、死ぬ事も許されないゾンビに・・・


{オ前ニハ、更ナル力ヲ与エテヤロウ}

視線の先に私達をこんなにした元凶のネクロマンサーの不気味な笑顔が見えた。






「ああああああああああああああああああああああああ」


何て・・・何て事をしやがるんだ!あの死神は!!

「生きた人間を喰いたい!」その思いしか湧いて来ない・・・


「やめ!やめてくれーーーー!!たす!ギャアアアアアアアア!!」

グジュグジュグジュと私は生き残っていた仲間の首に齧り付く・・・


ああ・・・美味い・・・満たされる・・・人間とは何て美味いモノなのだろう。


さあ・・・お前もこちらに来い・・・


「あああ・・・・あああああああああああ!!!」

こうしてまた1人の男がゾンビに堕ちた・・・・


ネクロマンサーが俺に与えた新たな力・・・

それは俺が人間を食い殺すとソイツもゾンビになる悍ましい力だった。

僅かに残っていた理性が俺の精神をズタボロに引き裂く!


{クククク・・・良イ苦悩ジャ・・・ソノ苦悩ガ我ガ軍団ヲ強クスルノダ。

ホォーレ、アソコニモ餌ガ残ッテオルゾ?}


「ひゃあああああ?!来るな!来ないでくれええええ!!」


「ああああああああああああああああああああああああああ」


そこに居るのか?・・・・・・・・さあ・・・来るんだ・・・


ギャァ?!ギャアアアアアアアア!!!!


俺達はネクロマンサーに促されるままに進んだ・・・

途中で喰い殺した仲間は何人だろうか?50人?いや100人は超えている。


人間として・・・いや生物としてもう終わっている・・・


「助けて下さい!助けて下さい!子供が3人居るんです!」


泣きながら土下座して深く頭を下げ許しを乞う男の後頭部に齧り付く俺・・・

「助けて!たす?!ああああーーーーーー?!神様ーーーー!!!」

バキイバキバキバキバキ、歯に伝わる頭蓋骨が砕ける感触がたまらなく美味い・・・


粗方生き残った仲間達を喰い殺した頃・・・

{ソロソロ本命ヲ頂キニ行コウカ我ガ兵士達ヨ、進メ」

ネクロマンサーが進撃の下知を飛ばした。


「あああああああああああああああああああああああああ」

ああ・・・喰いたい人間を喰いたい・・・


進んで行くと原生林から開けた平野に出た。ベレンガレア平原だ。

目標はベレンガレア山脈にあるエルフ達の要塞か?


ああ・・・エルフとはどんな味がするのだろう?早く喰いたいなぁ・・・


途中飢えに耐えきれず仲間のゾンビに喰らいつく。

ダメだ、不味い不味過ぎて話しにならない、早く早くエルフを喰いたいんだ。


飢えが激しく急いでベレンガレア要塞に向かって歩く、すると空に何かが飛んでいる・・・

ダメだアソコのヤツは喰えない、先に進もう・・・


ズドオオオオオオオオンンン!!!!

10m程右隣りで爆発が起きたがどうでも良い・・・エルフエルフエルフエルフエルフ。


ゴオオオオオオンン!!!ドゴオオオオオオオオオンンン!!


ああ・・・仲間達が次々にコナゴナだが、エルフエルフエルフエルフエルフエルフエルフ。


もうエルフの事しか考えられない・・・エルフ???

ああ・・・そうだ、あれはエルフだ、グリフォンに乗ったエルフ・・・


美しい・・・エルフとは何て美しいんだ・・・女神様・・・


「あああああああああああああああああああああああああああああ」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・








「うおああああああああああ??!!!」


{おっ?正気に戻ったか?}


「こここここここは?!ゾンビは?!」

思わず自分の両手を見ると・・・・・ある!指が10本!ちゃんとある!!


「最後に見たエルフの女神様が俺を助けてくれた?・・・のか?」


{そんな訳なかろう?お主はそのエルフに物理的に粉々に吹き飛ばされたんじゃ。

アヤツは味方には底抜けに優しいが敵に対して情け容赦ないからのう}


「吹き飛ばされた?じゃあゾンビから・・・」

まさかまさかまさか?!助かった?!


{そうじゃ、触媒の身体が消滅して魂が切り離されたんじゃ。

つまり完全に死んだんじゃお主は、そしてここは黄泉の国の「転生門」の前じゃな}


「ゾンビから解放された?・・・じゃあやっぱり女神様じゃないか・・・」

そう・・・俺にとって正しく女神様だ。


{変なヤツじゃのうお主は・・・自分を殺した相手を女神様とは・・・

まぁ良い、結論だけ伝えるぞ?次から次へと魂が来ていてワシャ忙しいんじゃ}


「結論?ところで・・・爺さん誰?」


{儂か?儂は死者の王、「ワイトキング」じゃ。

結論としてお主の魂は穢れ過ぎていて新しく産まれ変わるのは不可能じゃ。

そのままの魂でどこかに転生するしかない}


???どう言う事だ。


{ふう・・・つまりアレじゃ・・・人間を喰うてしもうた記憶を消してやる事は出来ぬ、

と言う事じゃ・・・すまんな}


そう・・・か・・・人喰いの罪を記憶に残したまま生き続けないとダメなのか・・・


{次の生で正しい行いをすれば魂の穢れは浄化されて行くからのう・・・頑張るしかないな}


「それは・・・いずれは罪から解放される?と?」


{そうじゃな}


「では、思い切り辛い人生の場所に送って下さい。俺・・・いや私は罪を何年かかろうとも償って行きたいです」


{ふむ・・・お主は本来なら真面目な性格の魂だったんじゃな・・・

良かろう、しかし転生先はランダムじゃ、お主に転生先を選べる資格は無い}


「・・・・・分かりました・・・お願いします」


こうして私の魂の罪滅ぼしの旅が始まった・・・

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