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68話 「魔族の介入」

ゴルド王国軍を極大魔法で焼き魔王バルドルは居城へと引いた。

その一部始終を海上から偵察している一団が居た事を魔王バルドルも見落としていた。

極大魔法を使った者は直後は魔力が欠乏して意識が朦朧としているのだ。


桁外れの魔力を持つ魔王バルドルとて例外では無かったのだ。


「えっぐい攻撃して来やがるなぁ魔王バルドル」


「広範囲極大魔法攻撃ですか・・・

せっかくゴルド王国を焚き付けたのに無駄になってしまいましたね」


戦いが起こっている沿岸より西へ20km地点の海上に青い迷彩色の軍艦が停泊している。

船体も構造物も低くのっぺらぼうな「半潜水艦」の様な構造の戦艦だ。

いや、実際に多少なら海中へ潜れるのだろう。


戦場の様子を艦橋から「遠視」で様子を覗いているのは、過去にゴブリン山でイリスと戦った魔将軍のブレストとブリックリンとの戦いで盛大に負けた重戦士の魔族の男と魔法剣士の魔族の男だ。


「我々も撤退しますか?ブレスト様?」そう魔法剣士の男が尋ねると・・・


「いや・・・魔王バルドルは死体を処理して行かなかった。

つう事はアソコにゃ焼死体が大量に有るって事だな。

そして丁度良い事に最適なヤツと俺は契約を結んだばかりだぜ?」


魔将軍ブレストは原生林を睨みながら答えた。


「なるほど!!「ネクロマンシー」ですな!」

合点が行った!と言った感じの重戦士の男。


ネクロマンシー・・・死体を使役化して操る外法の事だ。


昔から劣勢状態や敗退した勢力が起死回生の手段として度々歴史上に登場する。

かつては自国民の50万人の市民を全て「ゾンビ」化させた狂王も存在したらしい。


「真魔族」は大魔力を持ち正統派のイケイケの武闘派集団なのでこう言った外道な作戦には疎い。


なので魔王バルドルは元々「ネクロマンシー」を使う発想が無いので戦場に大量の死体を残して去る危険性にも疎い。


魔王バルドルは戦闘区域離脱時は「死体は燃えたから疫病も発生せんだろ」と死体を火葬した程度にしか考えて無かった。

これは完全に魔王バルドルの危機管理不足の失当である。


「ネクロマンシー」は残留している霊魂と骨が残ってる限り有効なのだ。

まして魔王バルドルは綺麗に殺し過ぎた、死すら認識出来ていない霊魂はまだ死体に留まっている可能性が高い。


高位存在の怠慢と言わざるを得ない。

いや、自分に興味の無い分野なので勉強をする事すら怠っていたのだろう。

「敵を知れば百戦危うからず」の戦いの原則を怠っていたのだ!


魔王バルドルは魔力も高く魔法行使に苦労した事は無い。

しかし真魔族に魔力で劣り何かと苦労している「魔族」は勝つ為には何でもやる勢力だ。

この絶好の機会を逃す訳は無いのだ、例えば「外道魔物と契約して」もだ。


「つう訳だ早速、契約通りに働いて貰うぞ?「ネクロマンサー」よ。

報酬は約束通り「200人の子供」だったよな?

俺が見て、お前がラーデンブルクに有効な攻撃をしたと判断したら国内の奴隷の中から生きの良い子供を選んで渡してやるぜ」


{フフフ、良イダロウ、シカシ、死体モ全テ私ノ物ダゾ?}


「そんなモン頼まれても要らねえよ!!

良いだろう、それと死に掛けのゴルド兵も好きにすれば良いさ。

その場合は子供の報酬は「無し」だ、そこまで気前が良くねえからな俺は?」


{フフフ、悪ク無イ、悪ク無イゾ、ブレスト、フフフ・・・デハ、行ッテ来ル・・・}


ブレストとネクロマンサーとの胸糞が悪くなる契約は成立してネクロマンサーは海の上をゆっくりと歩いて火が燻っている戦場へと姿を消す。


「本当に気色の悪い魔物ですね・・・」さすがに重戦士の男が顔を歪ます。


「ブレスト様・・・本当に子供を渡すのですか?」

子供を渡す事に対して魔法剣士の男は心底嫌そうな顔をしている。

彼は子供好きなのでブレストの契約には不満しか無いのだ。


「ん?渡す訳ねえだろ?そもそも俺達の国には「奴隷」なんていねえだろ?

だからゴルド兵士の生き残りを「生贄」にくれてやったんだからよ。

元々ここに略奪に来た連中だ。

その結果でゾンビにされても何をされても文句は言えねえよな?」


「え?!嘘なんですか?!」


「だって「口約束」しか、してねぇじゃねぇか。

俺が子供なんて絶対に渡さねえって事はネクロマンサーも分かっているじゃね?

だから「死体は俺の物」だと主張していたんだろ?多分な。

それと追加で「死に掛けのゴルド兵」の報酬にも旨みを感じて戦場に行ったんだろ?」


「ああ・・・魔物との契約の建前ってヤツですか?」


「ああ、そうしないと契約不履行で「魂が縛られる」からな、俺もネクロマンサーも」


見た目と話し方から「軽薄」「卑怯」「残忍」の悪しき権化の様に見える「魔将軍ブレスト」・・・

しかし案外、彼は仲間思いで民思いなのだ。


彼が戦う理由に「うちのクソガキ共に腹一杯飯を食わせてやりたい」との理由も有る。


そんな彼が例え奴隷の子供だろうとも子供を「死霊使い」に生贄に差し出すのは最初からあり得ないのだ。


「しかしこうなると「魔王バルドルの慈悲」が仇になりましたね」


魔王バルドルが生き残りを見逃したのは「死に掛けてる奴らにこれ以上攻撃したら可哀想だな」と敵に情けを掛けたからだ。


これも高位存在ゆえの怠慢である。

高位存在であるが為に下から這いあがろうと踠く者達の底力が分からないのだ。


「でも・・・あの魔物一匹にそこまで力が有るのですか?」

確かに強い魔物だが、ぶっちゃけて言うとネクロマンサーは「Sランク」の魔物に過ぎない。

あのネクロマンサーに5万体の死体を操る魔力が有ると思えない魔法剣士の男。


「ねえよ?だから契約の際に「上級魔石」をくれてやってたんだ。

アイツにとっても魔物としてSSクラス、SSSクラスにランクアップするチャンスだ。

だからメッチャ頑張ってくれんじゃね?知らんけど」


「上級魔石ですか?!」

真魔族の門外不出の「上級魔石」が外部に出回っている事に驚く重戦士の男。

これがバレると間違い無く「龍種」の出動案件だ。


「ああ、真魔族も完全な一枚岩じゃねえんだよ。

金の為に何でもやる奴はどこの世界、どこの種族にも居るんだなこれが」


ここまでは真魔族、エルフ同盟側が圧倒的優勢に流れていると思えた戦況だが戦争とはそう甘く思い通りにはいかない。


魔族の介入で戦況は新たな局面を迎えるのだ。











「へ・・・変態作者にメッチャダメ出し食らっておる・・・

アヤツ・・・ここ最近は全然現れんな?と思っておったら、儂にダメ出しが出来て余程嬉しいのか、ここぞとばかりに生き生きしておる・・・」


「そのバルドルさんの怠慢のせいで私が酷い目に合うんでしょ?わかります」


「すまねえ!頼むイリス!」

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