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60話 「爆撃計画」

龍騎士隊イリスの隊長イリスが発案した世界初の空爆は大成功してゴルド艦隊は、なす術もなく壊滅したのだった・・・とは全然行かない。

現実の戦いでは、そんな簡単には物事は進まないのだ。


先ず、前提条件での500発の爆弾を完成させるにも最低1年以上は掛かるので、まだまだ対艦隊への実戦配備には程遠いのが問題の一つ。


予備の爆弾も含めると今回の戦争に間に合うかどうかすら怪しいのだ。

なので現実は擬似爆弾を作って駐屯地の演習場で地上標的相手に投下訓練をしているだけの状態なのだ。


それに参謀のエリカから、

「高度500m以下で投下しないと命中させる事が出来ない様なら、やる価値は無い」

と厳重に言われているのだ。


何故500mなのか?

それは軍に所属する魔導士の攻撃魔法の射程が平均500m程度だからだ。


爆撃をするの為に敵からの攻撃魔法を受けては意味が無いとエリカは考えている。

絶対安全圏の高度1000m付近から一方的に攻撃出来ない限りはヤメレと言っている。


それならその爆弾分の重量を全部装甲にして防御を固めて急降下突撃して急上昇退避した方が遥かに安全なのだ。


このエリカの提案を元に訓練しているだが、「爆弾投下」これがメチャクチャ難しいのだ。

実際にやって見てイリスも考えが甘すぎたと反省している。


そんな訳で今日も爆弾投下の訓練だ。


「投下!!」

小隊長のガストンが擬似爆弾を標的に投下する。


ヒューーーーーーン・・・・・・ドオン!!・・・残念ハズレだ。


「次!右に3mずらして投下!」


「はい!」次の龍騎士が投下する。


ヒューーーーーーン・・・・・・ドオン!!・・・おっ?命中!!


こんな感じに修正しながら投下すれば固定目標には命中する様にはなったが、攻撃目標は艦艇で目標は常に移動をしている、偏差を合わせるのが凄く大変そうだ。


「行きます!!」今度は総隊長のイリスが投下!


ヒューーーーーーン・・・・・・ドオン!!・・・おお!お見事!一発命中だ。


ちなみに投下装置は竜の首から鉄製の箱を吊るして龍騎士がレバーを使い投下している。


実は竜が足で爆撃を掴んで投下した方が命中率は高いのだが竜達への負担が大きいのでイリスに却下された経緯がある。


「グエエエ、グエエエグルグル!」(オイラなら大丈夫だよ!)

「ありがとう、でも疲れちゃうからね、何か考えるよ」

イリスは竜達に対して底抜けに優しいのだ、まぁ、人に対してもイリスは基本的には優しいが。


こうして来たるべき日に向けて猛特訓中の龍騎士隊イリスだった。


そして主戦場の状況なのだが全然動きは無い。


そもそも両国はまだ戦争状態では無く、「オラオラ!うちの艦隊凄えだろ?!怖えだろ?!言う事聞いた方が言いぞ?」とゴルド艦隊が脅迫して、

「何言ってやがんだ!そんなモン、この超強力な沿岸要塞を突破出来てから言いやがれ!」とラーデンブルク公国守備隊が威圧し返している。


そんな感じにお互いに示威行動をしている段階なのだ。

戦争が始まる前から既に膠着状態に陥っている。


そんな中でグリプス王国に駐留しているエリカから本国のイリスに支援要請が入る。


『敵要塞に爆撃支援を求む、座標は5567-9234』


どうやら連合軍がグリプス王国攻略の為に要塞を建造し始めたので、その作業を妨害して欲しいとの要請だ。


「なるほど・・・「先ずは爆撃の実戦経験を踏め!」と、エリカさんは言ってるんですね」

エリカのあらかさまな発破に苦笑いのガストン。


「うーん?今完成している爆弾の数は?」イリスが兵站担当者に質問をすると、


「42発です。エリカ参謀は出来た爆弾を全部使えと言ってるんですか?」


「そう見たい、固定目標の爆撃経験が無いのに艦隊攻撃なんて出来る訳が無いって考えてる様子だねー」


「それもそうですね・・・でも大変なんですよ?爆弾作りも・・・俺等、最近は鍛治仕事しかして無いんですよ?」


エリカが言っている事も理解は出来るが苦労して作った爆弾を要塞攻撃に全部使えと言われてガックリする兵站担当の龍騎士達。

合理的なエリカはイリスより断然スパルタなのだ。


「まあまあ、出来た爆弾の改善点も見つかるからね、やる価値はあるよ。

兵站担当の人達に最優先で投下して貰うよ」やっぱり少し人にも甘いイリスなのだ。


「絶対ですよ?イリス隊長・・・」イリスの言葉に渋々納得する兵站担当。


龍騎士隊イリスの記念するべき初めての爆撃は要塞攻撃と決まったのだった。





イリス達が準備を進める本命の爆撃の前にグリプス王国駐留隊による「投石攻撃」を行うとエリカが言い出す。


「え?!そんな事したら敵に警戒されませんか?!」

そんな事したら本命の攻撃が奇襲攻撃にならないのでは?とロイが驚く。


「うん、敵に警戒して貰うのが目的だからね」


「どう言う事ですの?」シルフィーナもエリカの作戦に不満な様子だ。


「私達が投石攻撃をしたら敵は対策として大事な作業場には防護の屋根を掛けるよね?」


「そうですわ、そうなると本隊の攻撃が失敗する可能性が高まりますわ」


「今回は、その屋根が爆撃の対象になるのよ。

本隊の爆撃担当の龍騎士には初見でも攻撃目標がはっきりと分かるし、「点攻撃」の投石用の防護の屋根では爆弾には対応出来ないのよ、爆弾は「面攻撃兵器」だからね。

爆風が横に広がり屋根を吊っているロープが焼き切れる。

すると屋根が崩落して投石から屋根の下に退避している兵士にも甚大な被害が出る」


「な・・・なるほど」


「そればかりか崩れた屋根の瓦礫の撤去にも手間を掛けさせる事が出来るわ」


「わたくし、最近エリカが怖いですわ!」


儂も怖い!毎度毎度、良くそんな嫌がらせを思いつくモノだと関心するわい!

でも戦争とはそう言うモノじゃな、いかにして敵が嫌だと思う事をやるか?が勝負の分かれ道じゃな。


騎士道精神?戦いの美学?綺麗な作戦?ナニソレ?美味しいの?を、地で突っ走るエリカだった。




エリカのその作戦を聞いたイリスは、

「良いじゃん!良いじゃん!攻撃目標が分かり易いの助かるよ!」と大賛成だ。

イリスも勝つ為には人道的に外れない行為以外は手段を選ばないタイプなのだ。


本当におっかねえ娘達だ。

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