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51話 「グリフォン大虐殺」

「事の始まりはゴルド王国の商人がグリプス王国に来た事らしいです」


「またゴルド?!本当にどうしようもない連中ね!」


それには同感だがゴルド王国だから悪いと言う訳でもない。

そう言う連中が集まってゴルド王国が誕生したのであって、ゴルド王国が誕生しなければ別の侵略国家が誕生していただけの話しだ。


ゴルド王国の特徴である、他責思考、自己利益優先、これは残念ながら人のみならず龍種ですら持つ感情なのだ、当然儂も持っている。


だが、これを野放しにすると世界が滅ぶのでやめましょうね!というのが「モラル」であり「ルール」だ。


ゴルド王国はそう言って人々から弾かれた者達が集まって出来た国で、

100%連中が悪いか?

と言うとそうでは無いのだ。


彼等を受け入れる事が出来ずに修正できずに安易に国から追放してしまった者達にも責任は有る。

まぁ、解決不能の難しい問題やね。


話しを戻そう。


「当時の国では抜け落ちたグリプス様の羽を使い服を作っていました。

それがたまたまゴルド商人の目に止まったのです。

一応擁護しますがゴルド商人は優秀で良い商人ですよ?

彼らが居ないと世界の貿易は間違い無く停滞するでしょう」


これ不思議なんだけど「ゴルド王国」と「ゴルド商人」は評価が真逆なんだよね。

ゴルド商人の利益追求の商法は貿易を活性化させて世界に良い影響を与えているのだ。


「あー・・・なんかグリフォン大虐殺の本当の理由が分かっちゃった」


《これでイリスも私の仲間入りだね!》


いや、そうなると会話として物語として成立しなくなるのでマジやめて下さい。

さあ!ハドソン君!最後まで説明するのだ!


「お察しの通り、その商人が持ち込んだグリプス様の服がある高位貴族に渡り、その夫人を中心に社交界で話題を攫いました。

そして徐々にですが「グリプス様の羽で作られた高級衣装」が世界中の貴族で新たなステータスになってしまいました」


暖かくて頑丈、しかも美しい光沢がある・・・うん、そりゃ流行るわな。

しかしそうなると抜け落ちた羽だけでは需要が追い付かなくなり必然的に・・・


「我々の調べでは、そのステータスとやらのせいで犠牲になったグリプス様は15000体以上です。

これは当時、世界に生きていたグリプス様の40%以上の数字です」


乱獲が始まった訳だ。


《その時、龍種は何も手を打たなかったの?》

過去の話しとは言え、さすがに15000体の仲間が殺されたと知りイライラして来るエリカ。


「勿論、天龍様がかなり強烈に取り締まりを行いました。

これが原因で当時、グリプス狩を主導していた二つの国が天龍様に滅ぼされたと聞きます。

しかしそれでも形を変えて大量虐殺は続きました」


国主導から民間の密猟者主導に切り替わっただけだったと。

アフリカゾウの象牙乱獲も世界的な禁輸措置が完成するまでしつこく続いたからな。


「他国が滅亡してても自分の自己顕示欲には勝てなかったか・・・

いや、自分達は大丈夫、とか思う謎思考の賜物かな?」

このイリスの指摘は正しいだろうな、しかしそんな屁理屈が通用する訳が無い。


「これに天龍様は、とうとう本気で怒り狂いました。

天を覆う程の天龍様達が密猟者と取り引き相手を悉く滅ぼして、ようやく収束に向かう事になりました。

そして今でも「グリプス様の羽の服」を持つ者は国際条例で厳しく罰せられます」


「ええ??!!」

そう、イリスはまさに「エリカの羽で作った服3号」を着ているのだ。

おわまりさーーーん!!コイツでーーーーす!!


「だだだって!エリカが羽をくれるんだモン!」


《だって捨てるの勿体無いじゃん!》勿体無い精神・・・日本の心である。

また犯罪者になっている二人はオロオロしている。


エリカは「これ何かに使えるんじゃね?」と抜け落ちた自分の羽を大事に保管していたが、自分の羽がそんな特級呪物だとは知らんかった。


イリスも丈夫で高性能で美しい「エリカの体毛の服」を気に入り好んで着ている。


「エリカの体毛とか変な言い回ししないで下さい!!!」


《いや、確かに私の体毛だわ》


「エリカ?!?!」


「ふふふふ・・・・抜け落ちた羽で服を作るのは違反で無いので大丈夫ですよ。

我が国でも国宝として数点の服が保管されていますから。

ましてやグリプス様本人からのプレゼントなら何の問題もありません」


ハドソン君が凄く嬉しそうにイリスの服を見ている。

100年前はグリプス王国では農家の子供が普通に着ていた服が今では「国宝」指定なのだ。


若い彼は伝承にあった「新しいグリプスの服」なんて物が見れる日がきて喜んでいる。


《んー?なら、私の保管している羽をハドソン君達に渡そうか?

今ある分で2、3着は作れるよ?

そんなにグリフォンを大事にしてくれてるなら渡す価値もあるし・・・》


エリカがそう言うと周囲から、オオオオオオオ???と、どよめきが起こった。


「良いのエリカ?」


《うん!羽なんてすぐに生え替わるからね。

それに服を作る技術は残すべきだわ、300年続いていたのでしょう?

そして出来た服の1着は私に下さい!》

エリカ的にはグリプス王国の服が見てみたいと知的欲求が刺激されるのだ。


「!!!!分かりました!!

私の命に変えても服を完成させてエリカ様に献上致します!!」


《そんな重い話しじゃないから!失敗しても死ぬな!生きろーーー!!》

ハドソン君の言葉にブチ切れるエリカ、そりゃ目覚め悪過ぎて当たり前か。


「じゃあ次は「赤カビ」の話しね。

私はまだイマイチ、ピンと来てないのよね?何の話し?」


《そうだねー、これが一番大事な話しだね。

ハドソン君?これって今もグリプス王国で餓死者も出ているよね?》


「はい・・・残念ながら・・・」

嬉しそうな顔から一転して暗い雰囲気に変わるハドソン君。

周囲の戦士達も同様に暗い表情だ。


「エリカ少佐、私に解る様に詳しく説明して下さい」

他国とは言え餓死者発生と聞き、イリスも王族として背筋を伸ばす。


グリフォンと山岳地帯と風と赤カビと餓死者、一体どの様な話しなのか・・・

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