45話 「変形」その1
「何?エクセル・ハイエルフじゃと?!・・・・・って何じゃ?それは?」
話しを聞き首を傾げる女王クレア。
イリスの謎進化の事を女王クレアに報告したのだが、やはりクレアでも知らない珍現象らしく興味津々にイリスを診察するクレア。
イリスのほっぺをグイングインと引っ張りながら・・・
「ふむ?単純に能力が向上したな・・・後は・・・「変形」が可能か?」
「変形?!変形って何ですか?!師匠?!」
予想もしてなかった単語登場に大混乱のイリス、一体何の変形なんだ?
まさか!トラ○スフォーマーか?!?!○ランスフォオオーーームなのか?!
「ん?好きなモノに変形出来る能力を獲得しただけじゃ?
人化の法の強化版と言えば分かり易いか?幻術の一種のスキルじゃな。
まぁ、かなりレアな特殊スキルには違いないぞ?」
何じゃ、そっち系か・・・ロボイリスには、ならんのか・・・つまらん。
「やっぱりお前も日本からの転生者だろ?!」じゃと?
転生とかでなく、「異界の調査の為に異界門を渡り、日本は大阪に西暦1880年から約150年程住んでおったのじゃ」
ト○ンスフォーマーなどは、布団に寝転がり尻を掻きながらリアルタイムで観ておったからな。
まぁ、だから下手な日本人より近代日本の事は詳しいだろうな。
ずっと軍人として潜伏しておったから日露戦争の東郷平八郎や太平洋戦争の山本五十六にも直で会った事があるぞ(えへん!)
太平洋戦争の終結後はその仮の人物は戦死扱いにして、次は戸籍も丸っと変えて自衛官として活動しておったのじゃ、
どうじゃ儂の情報収集能力の高さと探究心は、参ったか?
参った所で話しを戻そう。
クレアの説明を聞き「何それ?!凄そう!!」イリスは大興奮だ。
「えー?私もうそれ持ってるよー」それに対して凄く残念そうなエリカ。
エクセル・グリフォンロードに進化したエリカだが、「変形」のスキルは持っているので単純に能力が向上しただけだった。いやそれでも充分だろ?
前回、天龍を出し抜いた鳥の擬態がこの「変形」のスキルだった。
「ふむエリカよ、ならばこれも勉強のうちじゃ、イリスに「変形」のスキルの使い方を教えてやるが良い」
「え?私が教えるんですか?」
軽い気持ちでエリカに教師役を任せたクレア・・・
それヤバくね?コイツらは絶対に何かやらかすぞ?
こうして新しいイタズラに最適なスキルをゲットしてしまったイリス、演習場でエリカと能力の検証を始めた。
「とりあえずイリスは何になりたい?」
「うーん?・・・・・・・・・・・・・・・・・龍!!」
「言うと思った、はい無理でーす。ブブーー」
「えー?何でぇ??」頭から否定されて不満そうなイリス。
「自分の質量より大きなモノにはなれないのよ。
そうね多分、レベルが上がると可能だとは思うけど、かなりのレベルが必要になると思うわ」
「えー?じゃあエリカの「変形」のレベルは?エリカでも無理なの?」
「私は53よ、無理と言うよりスタート地点にすら到達して無い感じ?
体感的に300以上は必要だと思うわ、いやもっと必要かな?」
「変形」のレベルが300になれる者は既に「神」、高次元存在者と言って良いので、事実上、人の身には不可能だと言っても良い。
世の中、そんな都合の良い話しは無いって事だね。
そんなに簡単に龍に変形出来るなら、世界は龍だらけになるだろう。
現状この世界で自分の質量を超えて変形出来るのは地龍王クライルスハイムのみだ。
「じゃあ自分より質量より小さいなら、どの程度まで変形出来るの?」
「自分の属性や形状に近いモノね。
例えば、私はグリフォンだから「鳥」になれるけどイリスには無理だと思うわ」
「えー?やって見ないと分からないじゃん?エリカだって人になってるじゃない?
私も自分で空を飛びたい!」
「うーん?私は元々人間だった感覚があったから比較的簡単だったらしいけど、
修行はかなり大変だったのよ?この姿もまだ安定してないくらいだし。
でもそうね、やって見ない事には始まらないわね、じゃあ挑戦して見ようか?」
「うん!」
と言う訳で「鳥」の変形に挑戦する事になったのだが、エリカの言う通りこの変形は世界の理に挑戦する最高難易度の変形だと言う事をイリスはまだ知らない。
「大事なのはイメージよ。鳥をイメージして見て?」
「分かった!鳥・・・・・・・・・・・・良し!良いよ!」
「じゃあスキルを発動させて」
ボウンと魔法の煙を上げてイリスの「変形」が発動した。
煙が晴れて中から現れたモノは?
「おお!?ヤンバルクイナ?良いじゃんイリス!成功だよ!」
ヤンバルクイナに似た鳥になったイリス、凄え一発で世界の理を超えたじゃん?!
そう思ったのだが・・・
「ん?どうしたの?イリス??」
《体が全く動きませーーん》ヤンバルクイナの剥製に変形した様子だ。
イリスの期待通りでは無いが案外使える技じゃね?隠密行動には最適だ。
するとすぐに・・・ボウンと変形が解除されて、フラフラしたかと思うとパタリと倒れるイリス。
「きゃーー?!イリスーーーー?!どうした?!イリスーーー?!」
「これ・・・魔力消費量がヤバい・・・魔力欠乏症になった・・・無念」
「イリスーーーー??!!」
訓練開始10分で救護所送りになったイリスだった。
「なるほどのう・・・自身と掛け離れた形状や存在に変形すると魔力を異常に消費してしまうのか・・・」
「シクシクシク・・・痛いです~師匠~頭を撫でて下さい~」
「うむ、そうか・・・可哀想にのう、じっとしているが良い」
そう言ってイリスの頭を撫でるクレア、クレアの胸に顔を埋めてスリスリしているイリス。
こんな感じにイリスを抱っこして魔力を供給してあげているクレアだがイリスの甘えぶりが凄い。
結構長い時間を軍人として心身を鍛え上げているので、幼い時と違い魔力欠乏症の痛みは我慢出来ない程ではないが、これはチャンス!と、ばかりにクレアに甘えまくるイリス。
久しぶりに甘ったれイリスの降臨である。
そんなイリスに呆れつつ
「クレア師匠は、「変形」のスキルを持ってないんですか?」
超万能のクレアの割に「変形」のスキルの知識に穴があるのが不思議なエリカ。
「持ってはいるが育てておらぬ、そうそう使う機会があるスキルでは無い故な」
「師匠のレベルはどれくらい何ですか?」
「82じゃ」「・・・・・・・・そっすか、やっぱさすがっすね」
育てておらぬと言っても自分より高レベルなクレアに、思わずリリー化してしまうエリカ。
「あれ?」イリスが声を上げる。
何?とエリカとクレアがイリスを見ると、そこにもう一人のクレアが居た。
イリス、師匠クレアに変形する。