41話 「エルフと真魔族の会合」その3
「次に同盟の期間ですが・・・」
会合の進行役を務める四天王の筆頭の新たな議題なのだが・・・
そう、これが問題なのだね。
どうすっかねぇ・・・
短過ぎても抑止効果が薄くなるし、長過ぎても厭戦気分が増すし、塩梅が難しいのだ。
これについては筆頭が考えると言っておったが・・・さて、その結論は?
「イリス殿の女王の在任期間までとしたいのですが?」
「ええーーーーー??!!」いきなり自分の名前が出て驚くイリス。
「エルフ側としても、その案に同意致します」
「ええーーーーー??!!」更に驚くイリス。
ああ~そう来たかぁ、これ筆頭とクレアの事前の交渉があったな。
ちなみにクレアの次の女王はイリスでは無い、えーと?現在の長老の1人のルナさん?
じゃったかな?内務専属で表に出て来ないが堅実な女性と聞いておる。
それに彼女は一度、クレアの前に女王の座に着いた事もあるので問題は無かろう。
イリスの成長までの限定の女王だろう。
おそらくクレアは、引退して女王をルナに譲り、自分はイリスの育成に本腰を入れて専念するつもりであろうな。
その事を理解して子猫の様にガクブルのイリス・・・可愛いじゃねえか。
しかし、先程のお仕置きよりビビり倒しておるなぁ。
さて、同盟期間を予測しようか。
女王ルナの在任期間は予想で200年程度・・・彼女はかなり高齢らしいので無理はさせられないだろう。
この200年の期間にイリスを徹底的に鍛えるのだろう。
それから女王イリスに代替わりしての在任が・・・まあ1000年と区切ると同盟期間は1200年から1400年ほどと見るべきだな。
人間の感覚に直すと50年くらいかな?結構長い期間の同盟だ。
「えええええ・・・」困惑を隠せないイリスだが、お主はやるしかないのだよ?
他の亜人や真魔族に大人気のイリスが女王をやるのは最早必然じゃ。
今まで遊び倒しておったのだから真面目にやれ。
それから第一期の物資の共用量などを決めて行くのだが、ただの数字の羅列で面白くも無いので割愛。
大まかな同盟内容ね枠組みが決まったので儂とクレアが調印書にサインして、エルフ真魔族同盟が正式に成立した。
まだ両方ともに海上封鎖の準備が整って無いので世界に向けての発表は3年後となった。
この3年でエルフ真魔族同盟締結の噂を故意に流して沿岸国家から逃げ出す人間をある程度は受け入れるのだ。
これが生き残る最後のチャンスとなる。
結構長い猶予期間に見えるがあっという間に過ぎるだろな。
そして、この3年間の龍騎士隊イリスの任務も決まった。
空中より国を逃げ出す人間の支援と保護と監視だ。
かなりの広範囲の任務になるから遊んでいる間は無いだろう。
さて、そうなれば儂は帰って儂の執務室に居るであろうエリカとガストンをさっさと追い出さねばな。
しかし避難先が魔王城って・・・別に良いけど避難先の選定を間違って無い?君達。
「さて!出て行けーーーー!!早く仕事に行けーーー!!」
「もう少し!もう少し、ここに居たいのぉーーー!!」
ガストンはアッサリと帰ったが、エリカが徹底抗戦を始めおった!
何でも欅の木窃盗事件が女王クレアにバレたらしく、クレアが激怒しているらしいのだ。
いやむしろ今までバレなかったのが奇跡じゃね?
「時間が経てば経っただけ、お仕置きが長引くぞ?」
「まだ心の準備が、心の準備が出来て無いの!」
そんなやり取りを執務室でしていたら風竜のシルフィーナがエリカのお迎えに来た。
「参謀がいつまで遊んでいるんですの!帰りますわよ!」そうじゃ、仕事をせい!
しかし、同盟が締結した途端に今までは遠慮気味だったシルフィーナも儂の執務室に堂々と現れる様になった。
魔王城は相変わらずガバガバな警備体制じゃのぅ。
「帰りますわよエリカ!風縛陣!」
「いやー!!お情けを!お情けを願いますーー!!」
ゴオオオオオオ!!ギュルルルルルル!!!
ゴネまくるエリカに剛を煮やしたシルフィーナが実力行使に出る!
風の捕縛魔法でエリカを簀巻きにするシルフィーナ。
練度が違い過ぎて同属性のエリカでもシルフィーナの風縛陣は破れない。
エリカの起こす風は、すぐにシルフィーナの支配下になるからだ。
儂は既に書類仕事を始めて二人のやり取りを見てもいない・・・好きにやってちょ。
「お騒がせ致しましたわ魔王バルドル、失礼致しますわ」
「はーい」
「いやーーー!!バルドルさん助けてーーー!!please!!」
簀巻きエリカを情け容赦無く、ぶった斬ろう。
「良いからお主は早く仕事に行け、いい加減にせんと本当に怒られるぞ?」
「いやぁーん!!」
はいっよっこらせー、とエリカを担いで執務室より退出するシルフィーナ。
やっと静かになったわい・・・
ラーデンブルクに帰ったエリカは、イリスと共にクレアより正座をしながら1日10時間の道徳の授業を3ヶ月間受ける事になった。
まぁ、授業と言う名の「お説教」だがな。
「もう!本当にアンタとは二度と森に行かない!!
ああー!シルフィーナちゃん!何をするのぉーーー!!」
「おお・・・おおお・・・足が・・・足がああ・・・
ああー!止めてシルフィーナちゃん!足をツンツンしないでぇ!!」
「うふふふふふ♪♪♪♪」
授業明けで足が痺れて転がる二人の足をツンツンするシルフィーナは楽しそうだった。