外伝!「魔王バルドルと世界の言葉」その1
「ハルモニア・・・申し訳ないのですが、新しい世界を管理して頂きたいのです」
「はい???」
私の名前はハルモニア、美の女神アフロディーテの娘です。
新米女神としてお母様の様に美の女神になるべく日々研鑽しています。
人々からは「調和の女神」なんて呼ばれてますが分かり易く言うとパシリ、「雑用係」です。
ある日の事、女神アテネ様に呼び出されて衝撃的なパシリ事をお願いされました。
「えっ?!世界の管理ですか?私は世界運営の資格を持ってませんけど?」
だってその資格を取る為にパシリを頑張ってますからね。
私が世界の神になれるのは、2万年後くらいかしら?
「それが・・・いつの間にか出来た世界があり、まだ決まった神が居ませんの。
どうやら別世界の「大霊樹」の種が飛んでその世界で種が芽吹き定着した様ですわ」
霊樹とは、人間で言う所の「世界樹」ユグドラシルの事です。
「それなら「霊樹」に世界の管理を任せておけばよろしいのでは?」
基本的にその世界を作った神が管理をする物なのですが、今回の様に自然発生する世界も多いのです。
その場合は神が派遣されるか霊樹の様な次元高位存在が管理を行います。
「わたくしもそう思ったのですが・・・
その「霊樹」はかなりの変わり者・・・独創的な思想の持ち主で星の生命体を増やす為に、あっちこちに異界ゲートを作ってはバンバン移民を受け入れてますの・・・」
「それはまた・・・随分な変わり者ですね?」
世界の神や管理者は、違う世界からの干渉を嫌う者が多いのです。
だって自分の子供を知らない他人に触られて勝手にされるのって嫌でしょう?
「そのせいで世界中で混沌が発生してしまい急遽、冥王のハーデスが派遣されました」
「???ハーデス様が派遣されたのでしたら問題無いのでは?」
冥王ハーデス様は私の様な新米女神と違う経験豊富な男神です。
あのお方が居るのなら私が世界を管理をする必要は無いと思いますが?
「それが・・・ハーデスが現在行方不明です」
「はいいいい?!」
え?!どう言う事ですか?!行方不明になる神など聞いた事ありません?!
「ああ・・・ハルモニアは知らないですね。
ハーデスは度を超える仕事熱心で仕事に夢中になると自分が神である事を忘れて仕事に没頭してしまい音信不通になる悪癖があるのです」
「真面目なのか不真面目なのか分かりませんね?」
「本当にですわね・・・
それで代わりの神を派遣したいのですが・・・その・・・」
「今は深刻な神不足・・・ですね?」
「そうなのです」
何故だが理由は分かりませんがこの3万年程、世界の自然発生ラッシュが続いています。
100や200の世界を掛け持ちする神も珍しくない程の殺神的な忙しさなのです。
「お話は分かりましたが全然自信がありません」
私が初めて担当するのがそんな不良物け・・・複雑な事情がある世界なんてあんまりです、泣きますよ?
もう少し・・・こう・・・妖精と精霊が溢れる穏やかな春の様な世界で勉強したいです。
「ああ!完全に管理する必要はありませんよ?
基本的にユグドラシルに管理を行なって貰います。
それに我々の眷属の龍種を応援に出しますから貴女には龍種達の総括だけして頂きたいのですわ」
龍種・・・まぁ、彼らが一緒なら何とかなる?かしら?
そう思っていた頃が懐かしいです・・・
よもや訪れる世界が、この後に追加派遣される三龍王揃い踏みでも大苦戦するカオス過ぎる世界だと、この時の私は思いも寄らなかったのです・・・
「ね?ハルモニア?勉強だと思って、ね?」
うう・・・アテネ様に可愛くお願いされると断れないじゃないですか・・・
だってこの方、凄く可愛いらしいんですもの。
「分かりました、これも立派な神になる為の勉強ですものね」
「ありがとうーーー♪♪♪ハルモニア♪♪♪」
こうして「悪夢の3万年」の幕が上がる事となりました。
「「お待ちしておりました・・・ハルモニア様・・・」」
『何でそんなに疲れているのですか?ベルリン?』
早速、4次元にある天界から精神体を作り、かの世界へと飛ばした私。
先行してくれていた龍種のベルリンが出迎えてくれたのですが凄く疲れている様子です。
え?限り無く神に近いベルリンが疲れている??
「「いえ・・・我は己の限界を思い知りました・・・
地龍王の座は息子クライルスハイムに譲り天界で修行し直して参ります」」
え?ベルリン帰っちゃうの?!ちょっと待って!凄く貴方をあてにしているんですけど?!
息子さんってまだ5000歳くらいの子供だよね?!大丈夫?!
「「ハルモニア様・・・老骨よりの忠告です・・・
この世界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジヤバです」」
マジヤバってなにーーーー?!何がヤバいの?私ってこれからどうなるの?!
『あのベルリン?ちょっと待って?話し合いしましょ?』
「「お役に立てず申し訳ありませんでした。
息子のクライルスハイムには全てを教え込んでおります。
もう・・・我なんて・・・我なんて・・・」」
あ・・・ダメなやつだこれ。
完全に自暴自棄になってます、ベルリンには休暇が必要です。
『わ・・・分かりました・・・お大事にベルリン・・・』
こうして私の赴任と同時に頼みの龍種ベルリンが実家に帰ってしまいました。
不安しかない初めての任務・・・私!どうなっちゃうのぉおおお?!
☆
「べっ・・・・ベルリンお爺様ーーーー??!!」
《私が至らずに、ベルリンさん、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!》
「ちち・・・地龍王様の交代にこんな裏話が?・・・この物語世界の深淵の暴露じゃね?
これ俺達が知っても良い話しなのか?」
「魔法世界の解説者シリーズの人気が無さ過ぎて作者が遂にキレたわね・・・」
いや・・・キレてませんよ?
龍騎士イリスの連載開始する時に言ったじゃないですか?
この龍騎士イリスはシリーズ全ての根幹の話しですって。
むしろこのハルモニアの話しをするのが遅いくらいなんですよ。
「あー・・・そうですね?はい!言ってましたね!そんな事を・・・」