外伝!「黒龍王対決!」その5
「それならどうすれば良いのかな?」
「もう全力で戦って見なさい」
「ええええ?!・・・・・・それはちょっと無理かな?
俺もラザフォードさんには悪い事したと思ってるからね、全力で戦うのは無理」
殴っても殴っても意に介さずケロリとしているブリックリンに対して完全にいじけてるラザフォード。
何とか機嫌を直して欲しいと思っているブリックリンに参謀エリカが思わぬ提案をして来たのだ。
「そう言うと思ったから代案よ。
ブリックリンがラザフォードさんを鍛えて強くして上げなさい」
「え?鍛える?何で?
「そっ、ブリックリンにダメージが通る様に鍛えてやれば良いのよ」
「あー・・・自分が殴られてダウンする為に相手を鍛えるのかぁ、なんか複雑だなぁ」
「仕方ないじゃん?それだけラザフォードさんに酷い事したんだから。
それで?今のブリックリンって昔より強いの?弱いの?それによって鍛え方が変わると思うわ」
「肉体的な強靭さなら今の地龍の方が強いと思うけど、攻撃力で言うなら理性が無かっただけ昔の方が圧倒的に強かったね」
「ふーん?なら鍛えられたラザフォードさんに強めに殴られても大丈夫じゃない?
それで黒龍王の時って何考えて行動していたの?話しを聞く限り何も考えて無い様に思えたんだけど?」
今日のエリカは中々辛辣だ。
「何を考えてた?か・・・・・・・・・・
俺が考えて行動していたと言うより「世界の言葉」に沿って行動していたからね。
自我はあって無かった様なモノだったね」
「世界の言葉って超胡散臭い思念波の事ね?私も話し掛けられたわ」
「えええええ?!」
ここに来てエリカが爆弾を投下する。
日本で登山中に事故死してこの世界にグリフォンロードに転生した時に「世界の言葉」から話し掛けられたと言うのだ。
「エリカは何て言われたの?」
「お前は「魔王」になるべくしてこの世界に転生した・・・って言われたわ」
「そっ・・・それで?」
「アナタ様はアホですか?って返したわ、何が悲しくて魔王にならないといけないのよ?
だって魔王ってなんか根暗な感じしない?良い事も無さそうだし」
ちょっと待てい!!その言動は許せん!現在進行形で魔王を生業としている儂から反論させて貰うぞ?!
属性が闇だから根暗っぽいまでは許そう!しかし良い事が無いなど・・・など??
あれ?確かに魔王になってから良い事なんて何も無いぞ?!
だって、全然言う事聞かないヤツは居るし、何もして無いのに命を狙われるし、宰相時代に比べて書類仕事は倍増しているし、だから当然休み無いし、ちょっと栗毛の可愛い子にモーション掛けたら「魔王にセクハラされたー!」って四天王の三番手にチクられて御礼参り喰らうし・・・・
うん!エリカの言う通り魔王なんぞやるモノじゃないね!正解だね!
「だから、そんな胡散臭いアホなモンの言う通りに動いていたブリックリンもアホなのよ!
アホなりに最後までちゃんと責任取りなさい!」
「があああああんんん??!!」
『があああああんんん??!!』
「ん?なんか聞こえなかった?」
エリカに言葉の暴力でコテンパンにされたブリックリンは次の日、フラフラしながらラザフォードの元へ訪れた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・なんでそんなに死にそうな顔をしているの?」」
腕を組んで仁王立ちしているラザフォードは怪訝な表情だ。
「「いや・・・昨日、仲間に言葉でコテンパンにされたのがショックで・・・」」
「「なにそれ?!詳しく!」」
「「えええええ??!!」」
こうして昨日のエリカとのやり取りを全て白状させられたブリックリン。
話しを聞くラザフォードの目が輝きだした?!
「「これだーーーーー!!」」
「「どれだーーーー??!!」」
「だから・・・今は任務中なんですけど?」
昨日と全く同じシチュエーションでめっちゃ迷惑そうな顔の参謀エリカ。
その迷惑そうな顔の理由は今日の訪問者が2人に増えているからだ。
「この極悪人を凹ませた師匠の口撃には感服致しました!
つきましては今日もこの極悪人を凹ませて欲しいのです師匠!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
《お前・・・この忙しいのに・・・ふっざけんなよ?》そう言わんばかりにブリックリンを睨むエリカの非難の目に耐えきれず膝から崩れ落ちるブリックリン。
「素晴らしいです師匠!目だけで極悪人を凹ませるその眼力!」
四つん這いになるブリックリンをゲシゲシ蹴りながら瞳を輝かせるラザフォードを見て、
これから会議のエリカは再度ブリックリンに殺意を覚えたのだった。
その後のエリカの情け容赦無い精神攻撃によりブリックリンのメンタルをゴリゴリに削った後、「次はイリスの所へ行くわよーーー!!」と号令を出すラザフォード。
これはイライラが最高点に達したエリカに「ブリックリンに大ダメージを与えたいならイリスの所へ行くと良いですよ?」と唆されたからだ。
さすが参謀!的確にブリックリンにダメージを与える方法を心得ている!
「いや不味いから!イリスの所だけは不味いですから!やめて下さい!」
「だから行くんじゃないの!」
「すみませーーーんん!!誰か助けて下さーーーーいい!!」
忙しい時のイリスの機嫌は魔王でも思わず逃げ出す程に悪い・・・
そして今は新兵達の部隊編成が大詰めで激ヤバなレベルで忙しいはずなのだ。
イリスの執務室の前に立つラザフォードとブリックリン・・・
ドア越しにも伝わって来るイリスの不機嫌オーラがブリックリンの全身を貫く。
「さあ!極悪人!言われた通りに、
「やっほー♪イリスちゃーん♪ブリックリン君が来ましたよー♪♪♪」
と言いながらノックもせずに突撃しなさい!
「誰かーーーー!!本当に助けて下さーーーい!!」
そして・・・漢ブリックリンは、それを本当に実行した・・・・
「アーーーーーーク!!トルネーーーード!!ブラストォーーーーーー!!!!」
ズドゴオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!
イリスの極大魔法が漢ブリックリンを襲う!!!
って極大魔法?!ウッソだろ?!おい?!イリスはハイエルフの限界を超えた??!!
余談だが、イリスの勇者覚醒はこの時だ!
あまりの怒りでポーンと勇者覚醒してしまったのだ!!
やったね漢ブリックリン!この世界に新たな勇者を生み出したのは君だ!!
☆
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?!これ本当の話しなの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだよエレン」
「は~・・・ブリックリン・・・黒歴史って誰にでもあるのねぇ」
「・・・しみじみ言わないでくれるかい?」