13話 「リール捕獲大作戦!」
天舞龍リールを捕まえよう!何故だか分からないがそうなった。
初日、とりあえず話し掛けて見ようと、
「「リー!」」ドヒューーーンン!!!「ルー!」
やはりリールは2人に気付かずに飛び去ってしまう。
「・・・リールさんのお宅に伺ってお願いしたらどうかな?」
おお!偉いぞイリス!そこに気がついたのか!
「わたくし、リールの住んでる所知りませんの・・・」いきなりオワタ。
当時のリールはプチ反抗期で人知れない山で1人で生活しており誰も居場所を知らなかったのだ。
・・・なら他の天龍にお願いして見たら?と言う発想は2人には無かったのだ。
2日目、「やはり延縄漁しか無い!」と言う謎理論で予測航路に罠を仕掛ける。
ドヒューーーンン!!!
が高度が合わない、罠が低かったからだ。
3日目、罠の位置を上げたがのリールが「今日は超低空の気分」だったのか全くの検討外れの結果に終わる。
「もう!あの子はなんで一定の高度で飛ばないの?!」
そんな理不尽な怒りを見せるシルフィーナ、いやなんで?と言われても・・・
4日目、「航路は一定しているから後は高度の問題ね」
今度は上下2箇所に罠を仕掛けるのも丁度中間点を飛ばれて失敗・・・
「もおおお!?なんでよぉ?!」
5日目、昨日と同じ位置に罠を仕掛けると高高度の罠が結構良い線を行っていた。
「くう~惜しい!」これにはシルフィーナも悔しがる。
イリスが「じゃあ帰宅途中も狙う?」と言うと「それだ!」と帰宅時も狙うも、出勤時間は一緒だが帰宅時間はバラバラなのが判明して断念した。
後で判明するのだが天龍には「超直感」と言う種族スキルがあり進路の障害物を無意識で避ける事が出来るのだ。
そうで無ければ超音速では危なくて飛べないとの事だ。
バイク乗っててトンボに当たると一緒だね、アレはマジヤバだった。
15日目、「高低差にジグザグに罠を仕掛けて見よう!」
高、中、低高度にジグザグに罠を仕掛ける、どれかには当たるだろうとの考えだ。
しかし夜まで待ってもリールが現れない・・・今日は休日の様だ。
「何で休日に休むのよぉーーーー!!」ムキー!と怒るシルフィーナ。
そんな理不尽な?!
そんな事を2ヶ月も続けていたら罠を仕掛けてるイリス達の前に天舞龍リール本人が現れた?!
「ええ?!なんで普通にリールが現れるのよーーーーー?!」
いや・・・良かったじゃん?リールが現れて目標達成じゃん?
「「なんでって?そりゃ最近ここら辺の空域に妙な風の捕縛陣があっちこっちに張られていて飛竜や雷竜が絡まる事件が続発してるからよ?」」
「・・・シルフィーナ?今まで失敗した罠の回収は?」
「すっかりと忘れておりましたわ!」
「「現行犯逮捕ーーーー!!」」
こうしてイリスとシルフィーナは迷惑防止条例違反と空路安全義務違反で天空城へ、逮捕連行されたのだった。
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ここは西の大陸にある「天空城」の取り調べ室。
「イリスは幼児なのに初めての海外で逮捕されて前科がついてしまった・・・」
目の前に出されたカツ丼を見ながらイリスが呆然と呟いた。
言われて見れば確かにヘビーな展開だな!
相手がエルフの幼女なので天舞龍リールは人の姿で対応する様だ。
「それで?なんであんな事をしたのよ?」
リールはイリスに関しては参考人として連れて来ただけで逮捕したつもりは無い。
完全にシルフィーナの単独犯行だと思っている、実際そうだしね!
「リールを捕まえる為にですわ!」
更に誘拐未遂事件を堂々と白状したシルフィーナ。
その答えに頭痛がしたリールは指で眉間を揉みながら、
「私を捕まえてどうするつもりだったの?」とシルフィーナに尋問をすると。
「昏睡状態になったシルフェリアの治療方法を聞くつもりでしたわ!」
「そう言う事は早く言えーーーー!!!」
こうしてトンボ返りにユグドラシルの森に帰って来たイリス達。
「連絡のとり様なんていくらでもあるじゃない?なんで捕縛陣で捕まえるなんて発想になるのかなぁ?」
シルフェリアは処分保留、多分何らかの無料奉仕との事。
当たり前だがイリスは無罪、と言うか逮捕ですらないので。
シルフェリアの霊樹に行く前にユグドラシル霊樹の前で全員の足が止まる。
枯れかかったユグドラシルを見て、
「そうかぁ・・・大きな時代が終わるんだね」と呟いた。
ユグドラシルの消滅は世界各地に激震をもたらす事だろう。
これからの時代は群雄割拠になるだろうとリールは思った、帰ったら天龍の組織構成を見直して戦時態勢にしなきゃね、とウンザリする。
それからシルフェリアの診断が始まった。
鑑定魔法の医療用強化版、「診断鑑定」を使いシルフェリアの精密検査を行うリールだが、眉間にシワがよりかなり渋い表情だ。
2時間以上かなり念入りに診察するリールだが、ずっと渋い顔のままだ。
「リールさん・・・シルフェリアを助けて?」
リールの表情からイリスも分かっている「シルフェリアは助からない」と、
しかし言わざるを得なかった。
リールは「診断鑑定」を解除して「フゥ・・・」と一息ついて、イリスとシルフィーナと向かい合う。
「身体の方は誰が何をしても助からない・・・
三龍王が力を合わせても無理、叔父様・・・地龍王クライルスハイム様が行っている「龍気」での保護で精一杯ね。」
地龍王クライルスハイムも出来るならとっくにやっているのだろう。
宇宙の摂理である以上はどうにもならない。
「でも・・・」ここでリールが言葉を足す。
「でも?!」この言葉に食いつく事しか出来ないイリス・・・
「精神力・・・魂は健在そのものよ、まだまだ若いからね。
間違い無くどこかに転生するわ」
天舞龍リールは御歳4000歳、1500歳のシルフェリアは全然若いのだ。
「転生・・・」この言葉にどうにか光明を見出したいイリスは必死に考える。
「魂の保護は?」考えられる質問を全てするつもりのイリス。
このリールとの問答がイリスの人生を変える最大の転機となるのだ。