外伝!「龍騎士隊イリスVS魔王軍!」その3
何か龍騎士隊イリスの襲撃に付き合い切れなくなった儂は執務室へ戻り納税される穀物と民に還元される穀物の差額の計算をしていた。
儂が魔王なんてヤクザな職業をしているのは、こう言う計算が早いせいでもある。
ぶっちゃけ強さで言えば四天王筆頭や四天王四番手より劣るが皆んなやりたがらなかったので儂がやるハメになった。
ちなみに我等5人は赤ん坊の頃からの幼馴染だ。
「ふう・・・やはり難民の流入が財政を圧迫しておるか・・・」
特に中央大陸での産業能力の低下が著しい・・・
この所、中央大陸の魔王領では地龍王クライルスハイムからの要請で亜人達の受け入れをしているのだ。
ユグドラシルが危篤状態となったのが原因で世界情勢が不安定になり各地で紛争が起こり真魔族も「世界の守護者」の一角として力無き者の保護を龍種達と共同で進めている。
先のラーデンブルク公国の一大難民移住政策には真魔族は大変助けられている。
これも四天王達がエルフ族のイリスに対して好意的な理由の一つなのだね。
ん?!真剣に作業をしていたのでいつの間にか4時間も経過しておった!
「いかんいかん、イリスの事を忘れておった」
しかし誰も報告に来なかったが・・・龍騎士の連中は何をしているんだ?
儂は足早に訓練場にもなっている魔王の王座がある魔王の間へと急いだ。
アソコは強力な魔導結界が張ってあって無駄に頑丈でやたらと広いから訓練場として最適なんだよね。
そのせいで魔王の王座をぶっ壊してしまい現在修理中だったりします。
ワアアアアアアアアーーーー!!!
魔王の間に近づくと、だんだん歓声が聞こえて来た?んん?歓声?
儂は玉座の後ろにある隠し扉を開けてコッソリと様子を伺って見た・・・
「spiral charge!!!」ギギキィーーーーーン!!
「なんの!やるな!勇者!!」キイイイイイーーンンンンン!!
そこには勇者ガストンと四天王四番手が槍と剣での白熱した接近戦を繰り広げている姿があった。
それを見て歓声を上げる魔王軍の兵士達。
この観客の熱の入り様・・・コイツ等・・・またトトカルチョしてやがるな!
しかもトトカルチョを仕切っていやがるのは四天王筆頭だな?!
ん?ところで肝心のイリスは?
・・・あっ・・・ダウンして三番手に膝枕されている・・・
ふむ・・・さては、三番手と魔法戦をやって魔力枯渇しおったな。
三番手は世界最高クラスの大魔道士なので仕方あるまいて。
「ぐうううう?!」
キィーン!!カカァーーーーーン!!
「そらそらどうした?!まだまだぁ!!」
カカーーン!キィーーーーーン!!カンカン!カアーン!
おやおや・・・勇者ガストンが徐々に四番手に押し込まれつつあるわい。
ハハハハ!これは中々珍しい光景じゃな!
何せ四番手は接近戦に限って言うならば上位の龍種数体と同時にやり合える強さを誇っておるからな。
ふふふ・・・どうじゃ?世界はまだまだ広かろう?勇者ガストン。
それを見て地龍のブリックリンがウズウズしておるがお主は絶対にダメじゃからな?
真魔族と地龍との戦いは盟約上で禁止されております。
もし戦ったら地龍王クライルスハイムにチクリます。
キイイイイイーンンンンン!!カラン!カラン!カラン!
四番手が剣を上段に捻り勇者ガストンの槍を弾き飛ばして勝負ありじゃな。
「ああーーーー?!勇者が負けたーーー?!」
「ぎゃああああーーー?!」
「おおおおーーー?!いやったぁーーー!!」
ワアアアアアアアア!!勝負がついて一際大きな歓声が上がる。
勝負の結果の反応でトトカルチョの勝者と敗者が分かってしまうな・・・
「はあ・・・ハアハア・・・参りました」
膝をついて息を荒げて敗北を認める勇者ガストン。
うむうむ、ちゃんと負けを認めれるのも勇者としての資質が高いのが分かる。
「はははは!!まだまだヤル気だろ勇者?!少し休んだら第二戦開始だぞ!」
「!!!!勿論です!!お願いします!!」
なんだろ?四番手が凄く「魔王」っぽい・・・儂より魔王してんじゃん?
しかしまぁ、それも当たり前の話しなんだよな・・・
何せ前魔王だった四番手が「もう自由に生きたい!」と、魔王の再任を断固拒否ったから宰相だった儂に魔王職が回って来たのだよ。
つまり勇者ガストンは、ずっと「真なる魔王」を相手にしていたんだね。
「ヨシ!次はまたロイ!もう回復しただろ?掛かって来い!」
「無論の事です!参る!」
今度はいつの間にかボロボロな姿になったリザードマンのロイが猛然と四番手に突っかかる!
おそらくガストンの前に四番手にボコられたのだろう。
そしてまた四番手にボコられるロイ・・・
「うへえ・・・魔王軍が強すぎる・・・」
「はいはい、イリスはまだ寝てなさい」
起き上がろとしたイリスの頭をまた自分の膝に押し付ける三番手。
大儲けして顔がニヤ付いている筆頭・・・
よし!・・・・・・・執務室へ戻ろう!
何かまた長引きそうなので、仕事をやりに執務室へトンボ帰りする儂だった。
「侵入者を全員捕らえました」
そんな報告が来たのは、それから5時間後の話しだった。
「うむ、全員を1週間ほど牢に入れておけ」
報告をしに来た兵士に指示を出し・・・・さて・・・
「・・・・・・・・それで?お主はずっとそこで何をしているのだ?」
見ないつもりでいたが、そろそろツッコミを入れよう。
儂の執務室の書庫で8時間以上も本を読み漁っているグリフォンに声を掛ける儂。
「えっ?!いえ~、ここにある本が面白くって・・・あははは」
人の姿で紅茶を飲みながら本を片手にソファーに座るエリカがテヘヘへと笑う。
ホンットに自由だね?!君!つーか、マジで魔王城に何をしに来たん?
「牢屋に好きな本を持って行って良いから早く行きなさい」
「はーい」
こうして龍騎士隊イリスは全員が魔王軍の捕虜となったのでした。