31話 「帰って来ました!ラーデンブルク!」その6
イリスの乗った馬車は街中を超えて貴族街へと入る。
・・・シーンと、やけに静かだと思ったらここの住む貴族達は現在ほとんど全員が公爵邸へ集まっているからとの事。
《うへぇー・・・公爵邸に着いたら人多そう・・・》
学習したイリスは思った事はすぐ口にしない様になって来た。
これも王族には必要なスキルだね。
何で王城では無く公爵邸に人が集まるのか、一応ラーデンブルク公国がどんな国なのかを一回おさらいしておこう。
「いや・・・もう一回も何もラーデンブルク公国について説明したのって違う作品の中での話じゃんか」とのツッコミを受けた作品
「ええーーー?!そうだったっけぇ??!!」いやお前マジ頭大丈夫か?!
一応他の作品ではラーデンブルク公国の成り立ちなどを詳しく説明した作者はここでも説明した気になっていた・・・
ちなみにどの作品の何話目でラーデンブルク公国の説明を書いたのか全く覚えていない・・・
「良くそんな事で小説を書けるわね・・・」とイリスにツッコミ食らっても仕方ない事だろう。
そして肝心のこの本作品で一切合切めっちゃ大事な説明をして無い事に気がついた作者は真正なアンポンタンだ。
クレアの女王だの公爵だのとコロコロ変わる肩書に皆さんはさぞ訳ワカメだった事だろう・・・
さて、と言うなのでラーデンブルク公国の説明しよう。
共和国であるラーデンブルク公国に建前上は「王」は存在しない。
国としての意思決定は全てハイエルフ達や亜人の族長で構成された「議会」で決定されている。
今回の中央大陸からの移民受け入れには賛成55%、反対40%、棄権5%
クレアの必死の説得でギリギリ議会から承認を得たのだ。
移民受け入れが却下されていたら何人の亜人が死んだか見当も付かない。
なのでクレアに移民受け入れを強く働き掛けたイリスの人気が高いのだ。
この様にラーデンブルク公国議会の議長を務めているのが「公爵家」なのだ。
そしてこの「ラーデンブルク公爵家」の当主も世襲制では無く10年毎に選挙で決まるのだ。
ちなみにクレアでも若い頃は2回ほど落選した事がある。
クレアが女王と呼ばれているのは、「エルフ族の女王」と言う意味で、
ラーデンブルク公国の女王と言う意味では無い。
しかしクレアの公爵としての任期が長過ぎ・・・人間なら10回は余裕で人生を送れるだけの年数を公爵として過ごしているので人間からラーデンブルクの女王として誤解をされている。
なんでそんな事になっているのか?
なんだかんだで国民にエルフが圧倒的に多いので、必然的にクレアが公爵を「ずっとやらされている」と言った表現が相応しい。
もう本人的にはそろそろ引退して引きこもって色々な研究をしたいのだ。
それでも何回かは出馬を辞退して他のハイエルフに公爵を押し付けた事もあったが結局はクレアに公爵の地位が戻って来てしまうのだ。
ラーデンブルク公国の視点だと公爵。
もっと狭い範囲のエルフ族の視点だと女王。
こんな感じでクレアの肩書きが変わるのだ。
そして今回はラーデンブルク公国の公務なのでクレア公爵になる。
結論、何が言いたいかと言うとクレアの個人的な独断専行でラーデンブルク公国が動く事は余り無くて面倒くさい物だと理解して読んでくれれば良いかと思います。
つまり今回のイリスのお姫様扱いもクレア個人の思惑より国としての思惑の方が強いと言う事ですね。
ラーデンブルク公国の思惑としては、亜人に人気があるイリスを龍騎士としてだけで無く、ラーデンブルクのお姫様に仕立て上げたいと思っているのだ。
なんか国内での立場がドンドンと変わっていくイリス・・・
これから彼女の運命がどう変わるか・・・ですね。
そんなイリスだが、今はユニコーン達との話しに夢中になっている。
「ユニコーンさん達は人化は出来るんですか?」
『出来ますよ?・・・てか何回も会ってるじゃないですか?酷いなぁ・・・』
「ええええ?!どこで?!」
『イリス様とドライアドの森で一緒に戦ったじゃないですか?!
・・・本当に覚えていないんですか?傷付くなぁ』
「ええええ?!そんな前に?!
・・・・ああーーー!!その声、偵察隊の隊長さんですかぁ?!」
『思い出して貰えてホッとしてます。
戦友のパレードじゃなきゃ「ウマ役」なんて引き受けませんて』
「あ・・・あはははは・・・ありがとうございます」
戦友の心遣いに地味にジーンと来たイリスは思わず泣きそうになった。
実はユニコーン達とは第一次ドライアドの森防衛戦で共同戦線を張っていたのだ。
人化すれば顔を見てすぐ分かるイリスだがユニコーンの姿で判別しろ!と言っても無理な相談なのでイリスは悪くない。
「イリス様?・・・私達も参加してましたよ?」
ここまで侍女らしく空気だったゴブリナ達も会話に参加して来た。
「えええええーーー?!
・・・おかしいなぁ?人の顔を覚える得意なはずなんだけとなぁ・・・」
ショックを受けるイリスだが戦争時、ゴブリナ達は魔導士のローブを着ていて顔が見えずらい状態だったのでこれも仕方ない。
「イリス様は個人の魔力反応で相手が誰か読み取る修行も必要ですね。
亜人種は姿を変える者が多いですからね」
「ああー・・・兎人族のトトもそうだもんねー」
ラーデンブルクに帰ってきてドンドンと友人達の顔を思い出すイリス。
ラーデンブルクを離れて約10年・・・ハイエルフとしては、10年の月日は短いが
やはり普通の感覚での時間としては長かったのだ。
そして馬車はラーデンブルク公爵家の敷地内へと入った。