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30話 「ラーデンブルクのお姫様」

イリス達が乗った船、今更ながら名前は「アルメニア号」がラーデンブルク公国の首都「クレア・バレー」の港へ接岸したのは夕日も落ちかけた頃の話し。


「おおー!凄い発展している」

バリバリのお姫様装備をして漢気満点に腕を組んで仁王立ちしているイリス。


「イリス様・・・お姫様らしく」


「あっ、ハイすみません」


ゴブリナの侍女からの苦言に大人しく従うイリス。

開いていた足を閉じて手を前に添えてしおらしくする。

これを宙へ5cm浮いた状態でやっているのだから器用な物だ。


アルメニア号は何事も無く接岸して陸上から橋桁をかけられて今回の任務は完遂したのだった。


お姫様イリスは、ふと港内見てドン引きした・・・

めっちゃ人が居る・・・2000人は居るんじゃね?くらいに人が居る。


「きゃー?お姫様ってあの方じゃない?」


「ホントだ!キレー」


「あの方が未来の女王様か・・・」


「なんとお美しいのか」


などなどイリスを一目見ようと首都の住民が集まって来ているのだ。


「イリス様・・・笑顔で御手を御振りになられて下さい」


ゴブリナからの要望に、

「あっ、うん」イリスは素直に応じてニコッと笑い集まった住民に手を振る。


オオオオオオオ!!キャアアア!!!うおおおお~!!

集まった住民達から一斉に大きな歓声が上がる。


ニコニコと表情は変わらないイリスだが住民達の大歓声にめっちゃ引いた・・・


「なんか・・・お姫様っぽい・・・」


「っぽいではなく、イリス様はお姫様で御座います」


若いハイエルフの女性は総じて「お姫様」である。

イリスは知らなかったが300歳未満のハイエルフの女性はイリスしか居ないとの事。


「知らんかった・・・」


「知りませんでした、ですよイリス?」


「あっ、はい、知りませんでした」


なかなかイリスのお姫様教育は大変そうだと、

顔には出さないがゴブリナ達は軽く目眩がした。


橋桁に足をかけてイリスとゴブリナ達はようやく浮遊の魔法を解いて着地する。


ズン!


「うっ?意外と重い?」

イリスに久しぶりの荷重が掛かり、お姫様装備の重さに驚くイリス。


「これでは戦えませんわ・・・」一応はお姫様らしく言って見る。


「お姫様が先陣を切って戦う必要はありません」


イリスの言葉につかさずツッコミを入れるゴブリナ。

イリスへのお姫様教育は既に始まっているのだ。


いや大分前から始まっているのだが何かと言えば、戦ったり岩に潰されたりグリフォンに食われたりして中々上手くお姫様になれないイリス。


間違い無く余計なのはグリフォンの捕食だ、そりゃあんな仕打ちを何回も受ければ性格も荒むと言うモノだ。


でも今日はお姫様装備で女官の格好のゴブリナ達を引き連れて静々と歩き始めるお姫様イリス。

そして目の前には不吉な物が置いてある・・・


デーーーン!!と、豪華絢爛なユニコーン4頭立てのオープンタイプの8人乗り馬車が鎮座していたのだ。


これから何が起こるが分かったイリスは、

「やっぱり走って帰ってくるべきだった」と、めっちゃ小さな声で愚痴る。


しかし今更愚痴っても仕方ないので大人しく馬車の隅の方に座ろうと最後の足掻きをするが、「コホン」ゴブリナの咳払いに諦めて席のド真ん中へ座る。


言うまで無く、イリスを晒し上げる護送・・・イリスのお披露目パレードが始まろうとしていた。


『準備出来ましたか皆さん?

これより出発します、揺れますのでご注意下さい』

ユニコーンの一頭が出発の案内をして来た。


「・・・・・・・・はい、よろしくお願いします」


一応返事をしたイリスだが、

「いやアンタ喋れるんかい!御者が居なくて妙だと思ったよ!」

内心は、ユニコーンへツッコミ入れまくっていた。


そしてゆっくりとパッカパッカと歩き出すユニコーン達。

馬車に乗る者へ気遣い優しく歩調をしっかりと合わせる歩きに感心するイリス。


「ユニコーンって処女好きで獰猛だと思ってた」


『なんすか?その処女好きって・・・ただの変態じゃないっすか?

そもそもどうやって処女と見分けるんすか?・・・え?まさか匂いとか?

普通に嫌ですよ?クンカクンカと知らん人の股間の匂いを嗅ぐなんて?』


『あははは、獰猛って所は否定しませんよ、我々護衛でもありますからね。

イリスに害を成そうなんて輩は我々が粉砕しますよ』


「あっ、はい、すみません、よろしくお願いします」


イリスのツッコミにド正論で返すユニコーン。

神話なんぞアテになんねぇなぁと思ったイリスだった。


馬車が街中に入ると見物人でごった返していた。

エルフも多いが他の亜人の姿も多く見られる、エルフの国と言うより亜人達の国と言って良い比率になって来たラーデンブルク公国。


「きゃー♪♪♪素敵ーイリス様ー!」


「噂に違わぬ美しさだなぁ」


ワーワーと歓声を上げる見物人、大方イリスに好意的だ。


「何で皆んな私の事を知ってるの?!」


「そりゃ龍騎士隊イリスの創設者ですからね。イリス様は国では有名ですよ?」


「マジかー?」


「イリス様?」


「あう・・・そうなのですね?」


「大変宜しゅう御座います。

一番イリス様が有名なのはエルフ以外の亜人移住を主導した事で多くの命を救った英雄であるからとの理由です」


「ええ?!あれは友達を助けただけだよ?!

・・・・・・・窮地の同胞を救っただけですわ」


ジト目のゴブリナを見て言い直すイリス、まだまだ、お姫様の道は険しい。

イリスの功績で大きいのはエルフ達でなく亜人の移住も女王クレアに認めさせた事だろう。


当初クレアは中央大陸の亜人まで救出しようとは考えていなかった。

どう考えても当時のラーデンブルク公国にはキャパオーバーだったからだ。


それを知ったイリスは自分一人は残って亜人達と戦う気満々だったのだ。

別に駄々を捏ねた訳ではなく素で戦う意志を見せたのだ。


それを見たクレアは亜人も受け入れる事を了承せざるを得なかった。


結果的には多様性を増したラーデンブルク公国の国力は激増した訳だ。

イリスの本意は別にその事に恩義を感じている者は多かったのだ。


イリスはどちらかと言うと「お姫様」と言うより「亜人達の英雄」と思われている。


「そっか・・・」

気恥ずかしいイリスは頬を染めて照れ笑いをしながら民衆に手を振る。


ワアアアアアアアア!!!


また見物人から大歓迎が巻き起こったのだった。

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