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楽園 空中庭園編  作者: 木野恵
異世界
9/20

星に願いを

 気が付くと深くて広い穴を限りなく落下していた。

 落下していきながら『不思議の国のアリス』のワンシーンを思い浮かべ、こんな恐ろしい状況でも少しクスリと笑ってしまった。

 こんなだから、笑ってはいけない時に笑ってしまったんだ。

 笹倉の名前を笑ってしまったことを思い出すと、すぐに笑顔が引っ込んだ。

 こんな状況になっているのが僕でよかった。

 もし他の人が落下中で僕がそれを見ながら笑ってしまったのなら、笹倉くんにしてしまったことを繰り返してしまっただろう。

 母親を亡くし、僕が追い詰めてしまった友達、名前を笑ってしまったがために怒らせてしまった笹倉くん……頭の中でそれぞれの出来事を思い起こすと、壁にその時の映像が浮かび上がってくるのが見えた。

 走馬灯のように場面が変わっていき、自分がこれから死ぬかのように思い始める。

 もし死ぬのだとしたら、どんな重い罰を下されるのだろう。ひょっとすると、このままずっと何もできないまま嫌な記憶が壁に映し出され続け、延々と落下し続けるという罰なのではないか。

 当然の報いなのだ。本来ならもっと早く罰せられていたはずだっただろうに……。

 ひょっとすると、罰を与えてもらえない苦しみを抱きながら生き続けていたことがすでに罰だったのではないか。

 罪と罰に対する様々な考えを巡らせていると、穴の底から花の香りを乗せた強く温かい風が吹き上がり、落下速度を徐々に緩めていった。

 死という罰が与えられるということへの期待が風とともに流れていき、さきほどまで壁に浮かび上がっていた映像はいつの間にか消え去り、ただの真っ暗な穴に戻っていた。

 この下には花畑があるのかな? 強風で落下速度が緩むなんて、漫画や小説の世界みたいだ。こんなに強い風を受けたら、現実だと呼吸できないんじゃないかな。

 非現実的なできごとに様々な疑問を浮かべ、想像に花を咲かせていると、長かったスカイダイビングに終わりが見えてきた。

 青白い光に照らされ、穴の底らしき場所がぼんやりと見えはじめる。

 底が網目状になっていることのわかる距離まで近づくと、マリリン・モンローが強風でスカートを巻き上げられ、押さえつけているシーンを思い起こさせられた。

 ついに足を着けることができたが、長かった滞空時間の影響でうまくバランスがとれず、両手と尻をついて着地した。

 網目状になっている底は、乾燥した植物の繊維を思わせる手触りだった。

 ある考えが頭に浮かび、周りを見ながら壁に手を滑らせてみるとやはり、壁も植物のような感触がするのだった。

 僕はマンホールの中に飲まれるようにして落っこちたはずじゃ……。

 ひょっとすると、さっきまでのことは夢で、今この瞬間も夢なのではないだろうか。僕は考え事をしていると周りが見えていないらしいし、いつの間にか家に帰って寝てしまってたんじゃないかな。だとしたら、さっきまでの落下は本の読み過ぎで見てしまった夢なのだろう。昨夜夢中で『不思議の国のアリス』を読んでいた影響に違いない。

 壁の次に辺りを照らしている光源へ興味が移り、視線を走らせてみると、光っているのはキノコだとわかった。

 キノコの傘部分が青白く光っており、触ってみたい衝動に駆られる。

 そっと触れてみると、強く触れたわけでもないのにキノコ全体が大きく揺れ、光り輝く胞子がパサっと舞い落ちた。

 胞子に光るなにがしかがあり、傘の部分が光って見えているのだろうか。

 そっと触れただけなのにこれほど大きく揺れるのは、光で寄ってきた虫が触れる程度の衝撃で胞子が落ちるようにできているからなのではないか等々、様々な推測を並べてみる。

 こうして推測していると、友達と読んだ植物図鑑全集のことを思い出してきた。

 花や薬草、樹木、キノコ、花言葉、なんでも載っている図鑑だったな。友達も僕も好きだった木があったっけ。

 昔のことに思いを馳せていると、底から吹き抜ける風の他に、横からそよいでくる風があることに気がついた。

 風がそよぐ方向へ目を向けると、光るキノコで道のようなものができあがっているではないか。

 恐る恐るキノコの道を進んで行くと、草の青々とした匂いが強くなってくる。

 出口まできっともうすぐだ。

 外は暗かったが穴の中ほどではなく、空に輝く月があたりをうっすらと照らしていた。

 とても美しく輝いており、現実で見たことのある月よりもずっと大きく見える。

 これほどまでに強く月が輝いているにも関わらず、空には無数の星々を見ることができ、思わず感嘆の声を上げてしまった。

 こんな夜空、初めて見た。いつまでも見上げていたいくらい綺麗だ。

 首が痛くなるほど月と星を見上げ、魂でも抜かれたかのようになってしまっていた。

 しかし、後ろから吹き抜けた花の香りによって、ふと、自分が今出てきた場所は一体なんだったのかが気になり、後ろを振り返り見上げてみると、てっぺんが見えないほど大きな樹がそこにあった。

 樹の幹はとても太く、一瞬崖かなにかかと思ってしまうほどだ。

 自分が出てきた穴は、この全貌――てっぺんが見えないので視界に映る限りのすべて――を捉えて比較すると、とても小さな穴だったのだと思い知らされた。

 よくよく見てみると、裕樹がいる地点で枝が少し伸びているだけで、これほどまで大きな樹にも関わらず根が盛り上がっていないのは少し奇妙に思えた。

 穴の中では更に下から風が吹き上がっていたということもあり、ここは地上ではなく、もっと下に大地があるのではないか、根元はもっと下なのではないかという考えが強まった。

 それにしても、こんなに大きい樹初めて見た。根元もてっぺんも見えないなんて。

 裕樹はふいに、北欧神話に出てくるユグドラシルを頭に浮かべた。

 イメージとしてはぴったりだ。もしこの樹にまだ名前がないのなら、『ユグドラシル』にしよう。

 不思議と、名前を付けたら愛着が湧いてくるものなのだ。

 昔は亡くなってしまった友達と一緒に、よく樹に名前を付けていったなあ。

 友達が亡くなってからすっかり忘れ去っていた思い出が次々と蘇ってくる。

 ひょっとすると、友達が亡くなった時、無意識のうちに記憶を封印してしまっていたのではないだろうか。

 楽しかった二人の思い出が、この夢を見ている間はどんどん溢れてくる。

 ユグドラシルを背に、裕樹は夜空を見上げながら『星に願いを』のメロディをハミングした。

 この曲は友達がよくハミングしていたものだ。どうして今まで忘れてしまっていたんだろう。

 理由については考えなくとも心当たりがあった。僕が友達に自殺をしてしまうきっかけを作ってしまったからだ。

 頭がズキズキと胸はチクリと痛み、溢れでて止まらなかった思い出がハミングとともに止まった。

 僕には友達との楽しかった思い出を振り返って楽しむ資格なんて、一つもなかったんだった。

 楽しい思い出が溢れる中で見上げた夜空は星が踊るように輝いていたけれど、今は空に散らばる星が冷たく、切ない。それぞれが孤独に光っているようにしか見えなかった。

 胸が苦しみ、悲しみでいっぱいになりながら夜空を見上げていると、誰かがこっちに歩いてくる音がした。

 夜空ばかりに気を取られてよく見ていなかった辺りを見回してみると、とても綺麗な草原だった。

 月の光に照らされ、神秘的な艶を見せている草は心地よい音を立てながら風に揺れている。

 草に気を取られてしまったが、肝心なのはそっちではなく、こちらに歩いてくる人だ。夢の中とはいえ不安が胸を覆い尽くしてくる。

 穴の中に引き返して隠れてしまえばいいのではないか?

 思いつくや否や引きこもろうとすると、待ってと声をかけられてしまった。

 思っていたよりも近くまで来ていたらしい。

 心臓を針で刺されたかのような感覚に伴い、頭から爪先まで電流が走ったような刺激が走った。

 しばらくすると、心臓の音が外に聞こえているのではないかというほど鼓動が激しくなり、冷や汗をかきながら声のする方へゆっくり、ぎこちなく顔を向けてみた。

 その人はすぐ近くまで寄ってきていた。

 不思議な髪型に見えていたのが、実は頭の上に花が咲いていたためだということが今になってようやくわかった。

 細くて柔らかそうな白い猫毛はショートヘアでゆるくウェーブがかっている。

 咲いている花は萩色、白色、銀朱色、鬱金色の四色。

 茎や葉はなく、花で作った帽子に見えなくもないが、花柄かへいが頭から伸びているのが見えるので帽子ではない。

「ようこそ、空中庭園へ」

 頭から生えている花を揺らしながらとても綺麗なお辞儀をしているのを、固まった表情で見つめる。

「安心してください。ずっと待っていました」

 目を白黒させながら動けないでいると、不思議なその人はにっこりと微笑み、目を潤ませながら挨拶をしてくれた。

 心なしか切なそうに見えた微笑みに胸がざわめくのを感じつつ、ずっと待っていましたという言葉に疑問が浮かんだ。

 どういう意味だろう?

 首を傾げ、言葉の裏に隠れた意図へ思考が移ったおかげか、幾分か体の力が抜けて楽になれた。

 微笑みかけてくれた時の表情にもかなり影響されているかもしれない。

「良ければ一緒にお散歩しませんか」

 その様子に気づいたのか気づいていないのか、優しく誘ってくれたおかげで更に心がほんのりと温まってくる。

「行きましょう」

 迷っていると両手を優しく引っ張ってくれた。

 踏み出せずにいた僕が一歩を踏み出せるように、優しく導いてくれているように思えた。

 しばらく無言で手を引っ張られながら歩く間、これは夢なのだから、起きたら寂しくてたまらない想いをきっとするのだろうなんて考えていた。

 あの時、許して欲しかった。ずっと仲良くしたかった、友達を新しく作りたかったけれど、僕にはそんな資格がなくてずっと籠っていた。

 友人が欲しくてたまらなかったという想いがこんな夢を見せているのではないか、という推測を自分なりにしてみると、真は自分にとって友人ではなかったのか? という疑問も同時に湧いてくるのだった。

 せめて、最後くらい謝らせて欲しかったなあ。

 もう二度と叶うことのない願いを心に思い描き、沈んでいく気持ちでいると、心の中を読まれているのではないかと思ってしまうほどのタイミングで、手を引っ張っていた人が振り返り、足を止めた。

「そういえば、自己紹介をしていませんでした。私は花人アルラウネのジニアと言います。この頭に咲いている花が私の名前の由来となっています」

 ニコニコと、とても人懐っこい表情でこちらをまっすぐ見つめながら、少し興奮混じりに自己紹介をしてくれた。

 そんな表情がますます心を温かくしてくれて……胸が痛んだ。

 亡くなった友達と初めて会った時も、ジニアのように人懐っこい表情で僕をまっすぐ見つめながら自己紹介をしてくれた。

 友達との出来事は思い出さないようにしていただけで、まるで全部覚えてるかのようにたくさんのことを思い出せる。

 一緒に過ごした時間はとても短かったにもかかわらず、あまりにもたくさんのことを。

 顔に出ていたのだろうか、少し悲しげな表情でジニアが心配してくれた。

「なんでもないんです。心配かけてしまってごめんなさい。僕は悠木裕樹です」

 気持ちを切り替えるためにも、話題を感傷的になっている原因へ向かわせないためにも、自己紹介を済ませてしまおうと思った。

 初めて会った人に亡くなった友達の話をするというのもおかしな話だし、まだ誰にも、真にすら打ち明けたことのない話でもある。夢の中だからといって打ち明けたいとは思えなかった。

「悠木裕樹さん」

 名前を聞くとさっきよりずっと切なそうな表情になるのだった。見ているこちらも切なくなるほどに。

 ジニアは物憂げに空を眺めた後、柔らかい笑みを浮かべた。

「悠木さんを招待した方がお待ちなのです。あまり急いではいないので、いろいろなことを紹介しながら案内させてくださいね。散歩がてら」

 ジニアは僕のことを知っているのだろうか。それとも、僕にはこれからなにかが起きるのかな。

 いつものように不安を感じつつ、ジニアが浮かべた表情についてあれこれ憶測を並べてみたが、結局どれもこれも憶測の域を出ない程度にとどまった。

 夢の中なんだし、大丈夫だよね。夢の中でくらい気楽にしていよう。

 少しだけ気分が軽く、前向きになれたように感じながら、ジニアと一緒に歩みを進めていく。

 今まで十分涼しかったのだけれど、より一層空気がひんやりしてくるのがわかった。

 薄暗くて気づくのに時間がかかってしまったけれど、目の前に小規模な森が広がっていた。

 もう少し近づいていくと森の周りにちょっとした柵があり、誰かの敷地なのではないかと思わされるものだった。

「ここが私の所有する庭です。花人たちはそれぞれの庭を持っているのですよ。少し用事があるので寄らせていただきました」

 小さな庭には森以外に小屋とベンチがあった。

 ジニアはしばらく小屋の中で何かを探しており、出てきた時には洞窟でみたキノコの入ったランタンを片手に持っていた。

 空が明るいとはいえ薄暗く、足元も周囲の様子もよく見ることができなかったが、ランタンのおかげで足元から二十歩ほど先まで見えるようになった。

「お待たせしました。このキノコは洞窟にも生えていましたよね」

 じっくり見てみると、ランタンはキノコの大きさに合わせて柔軟に対応できそうな設計となっていた。

 キノコのツボ部分をしっかり固定できる台に、傘の部分を固定できるようになっている蓋。小さいものは台で固定、大きいものは蓋で固定するといったところだろうか。

 大きくも小さくもないものは両方で固定できるのかな。

「このキノコの名前はなんですか?」

 一通りランタンを観察し終えて浮かんだ疑問がこれだった。

 このキノコはなんていう名前なのだろう。

 現実の世界にも光るキノコはあるけれど、ここまで強く光ったりはしない。

 暗闇に浮かび上がる程度にしか光らないが、夢の世界にあるこのキノコはあたりを照らすほど光り輝いている。さすが夢の中ということなのだろうか。

「このキノコはこの世界にしか生えていなくて、名前はまだありません。この世界にしかないものに名前をつけようとする人はいないのです。名前をつけるほど、みんな心に余裕はなくて、他のことをいつも気にかけているからなのでしょう。キノコはキノコ。このキノコは光るので光るキノコと呼ばれています」

 少し寂しそうな顔でジニアは答えてくれた。

 僕にとっても、寂しく感じられる文化だった。しかし、彼らのその文化を理解しようとすることはできた。

 幼いころ、友達と木に神話や童話等から名前をとって付けていたことが頭に浮かぶ。

 僕らのしていたことが、夢の中にいる彼らにとっては、分類されているものの中にさらに名前を付けて種類を作ることと似ているのだと考えることができたからだ。

 例えば、僕らがしていたこと――木という分類の中にある楓という木に『赤ずきん』という名前をつけていたことが一般的には珍しいことだった。

『星の王子さま』にある言葉と表現を借りると、僕たちにとって、ほかの十万の楓と変わらなかった楓に『なつかせて』 もらったことで、他のどんな楓の木とも違う、世界で一本だけの楓になったんだ。

『星の王子さま』でいう『なつく』は『懐く』であって、僕らがしていたのは『名付く』だったのだけれど。

 夢の中だと、光るキノコにキノコの種類のひとつとして名前をつけることは、僕たちがしていた『なつく』に相当することなんだ。

 なので文化は違えど、なんとなく感覚として理解をすることができた。

「じゃあ、僕が種類名と『名前』をつけちゃってもいいかな? そのキノコだけの特別な名前」

 今まで僕たちがしてきたような名前の付け方ではなく、由来や願い、独創性のある付け方でこのキノコに名前を付けたかった。

 どういう訳なのかわからないけれど、笹倉くんのこともあるし、何より、ジニアが浮かべた寂しげな表情が頭から離れず、名前を付けたいという衝動に駆られるのだった。

「本当ですか! わぁっ。ありがとうございます」

 僕の言葉を聞き、今にも飛び跳ねそうな雰囲気で喜びを溢れさせているジニアを見ると、なぜなのだろうか、涙が溢れそうになるほど胸がいっぱいになってくるのだった。

 ああ、きっと、友達になれそうだからなんだな。

 腕によりをかけて名前を付けるぞ。

「このキノコの種類名はカグヤアオキノコ。『名前』は人が周りにいるときはアオキノコ、周りにいない時は愛称としてカグヤでどう?」

「ふぇ?」

 どうしてそういう名前を付けたのか理解できない、もしくは、人がいるときといない時で異なる愛称を言ったせいで混乱しているのか、ジニアは目を丸くしながら首を傾げてしまった。

「カグヤってかぐや姫みたいだけど、輝く夜とかそういう意味でつけてみた。かぐや姫のかぐやは諸説あるらしいのだけど、僕がつけたのはそういう意味。人前でカグヤって呼んでいると恥ずかしいかもしれないと思って、普通のキノコとして呼べるようにシンプルな名前も足してみたんだ」

 かぐや姫はキノコじゃなくて竹だったしね。きのこの山とたけのこの里のように戦争が勃発してしまうかもしれない。

 自分が名前に込めた想いと由来を話し終えると、ジニアは吹き出し、両手で口を抑え、肩を震わせながら笑いを堪えるのだった。

 あれ、変なこと言っちゃっただろうか。

「ごめんなさい! 笑える立場にないし、笑っちゃいけないってわかっているのですが。ふふふ」

 ついに我慢できなくなったのか、あははと声を上げ、お腹を抱えながら笑い転げてしまった。それを見ているとこっちまでなんだかおかしくなって、一緒になって笑い転げた。

 笹倉とのときもこうやって一緒に笑えたらよかったのに。

 しかし、笑っている内容が内容だけに、それは絶対にありえないことだったのだ。怒られて当然だった。

 しばらくして、ようやく笑いの治まったジニアが呼吸を整え、笑ってしまってごめんなさいと言い終えるや否や、話を切り出してくれた。

「気にすることないですよ。結構自信があったんですけどね」

「よく特徴を捉えられていると思いました。僕はてっきり、『ピノキオ』って名前をつけるのではないかなって思っていたのですが。それはともかく、キノコの名前を考える上で、呼ぶ側になる私のことまで事細かに考えてくださったなんて、とても嬉しいです。カグヤアオキノコ……大切に覚えておきます」

 頬を上気させながらにっこりと微笑み、嘘偽りなく正直な感想を言ってくれたのだと思える話し方と表情で、まだ会って日が浅いのに、この人なら信頼できると思えるのだった。

 それに、もし友達が生きていたならきっと『ピノキオ』という名前が候補に上がっていただろうということもあり、親近感が湧いた。

 夢の中だから、現実では叶うことのなかった幸せな日々を文字通り夢に見ているのかもしれない。


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