算数ダンジョン
入力欄はぜんぶで12組ぶんあるが、すべて使うとは限らないらしい。もちろん、この程度の但し書きがヒントになるはずもなく──。
「意味すら分からない……」
息をするようにその一言が口を突いて出た。
周囲では冒険者たちが何やら相談をはじめている。人数が2階のときと比べて半減していることからして足切りをくらったのは分かるけど、それならなぜ自分はここにいるんだ──?
話の輪に入ることもできず──というより入ったところでついていけるはずもなく、1人途方に暮れる駆。彼にとって、今の自身は最弱の装備で隠しダンジョンのボスに挑むレベル1の勇者そのものだった。おそらく4階ではこれよりも難しいのが待ち構えているに違いない。ゲームオーバーでもなんでもいいから、早々にここから出ていきたい──。
しかし、下に向かおうにも、辺りに階段らしきものはいっさいない。設置されているのは小汚いトイレだけだ。どれだけ必死なのか、踏ん張りながらアンサー版と睨めっこをしている人もいる。
2分という制限時間を短すぎると感じるか、持て余すか──出来不出来を判別するにはそれだけで充分だった。
手元から発せられる燃えるような光。気のせいか、先ほどよりも色が濃くなっているような──。言い知れぬ不安から、なんとか落第の烙印を押されたいと思っていたのも束の間──、
「嘘……」
数える程度の冒険者とともに、当然のごとく4階へと進出させられてしまった。