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カルガモの親子(後編)

作者: 青野ひかり

ハッと菜々子は目を覚ました。

(夢か・・。怖かった・・)

心臓がバクバクと早鐘を打ったみたいに鳴って、苦しい。


(落ち着け。大丈夫大丈夫)

しばらくすると鼓動が落ち着いてきた。

(今、何時だ?)

ベッド横の棚を見ると、電子時計がPM.9時を表示していた。

思ったより、時間が経っていなくてホッとした。


菜々子は、さっきの夢を思い返すと、何故カルガモの親子に苛立つのか、少し分かったような気がした。


優しい人間達に見守られながら、応援されながら、引っ越ししていくカルガモ達が羨ましかった。


人間は生きていくなかで、このままだと目指している場所へ辿り着けない、間違った道を選んでも、誰も教えてはくれない。


さっき、テレビで見たカルガモ達は、川へのルートを離れると、さりげなく周りの人間が川へ誘導したり、車を止めたりしてくれる。


でも、私がどんなに困っていても、辛そうにしていても、周りの人間は私の方など見てはいない。誰も手をさしのべようとはしてくれない。


菜々子はそんな風に思い始めて悲しくなってきた。



菜々子は、赤いハンガーにかけてある、自分のセーラー服を見た。ほぼ毎日着続けて、三年目だ。


(カルガモ達の目的地は川だったけれど、私の目的地はどこなんだろう?)


少なくとも母が勧めている高校ではない。

それは菜々子にも分かっていたけれど、今の第一志望をその高校にしていることに自分の意思を何も感じず、恥ずかしくなった。


将来の夢とかやりたいことなんて、特別何もない。母の意見に反対したくても、反対できる理由すら見つけられなかった。


強いて言えば、友達をたくさん作って、彼氏を作ってデートしたい。青春ってやつを満喫したい。

それが今の菜々子にとって一番大事なことだった。


今通っている中学校で、菜々子はスクールカーストの最下層にいた。

見た目も性格も暗いとバカにされている。


今の菜々子が思い描く理想の目的地は、

高校デビューをして、たくさんの友達に囲まれて、彼氏とデートしながら、明るく過ごす自分の姿だった。


今までの暗い自分をリセットして生まれ変わりたい・・。

この気持ちが、正しいのか間違いなのか分からないけれど、誰も教えてくれないのなら、

自分で選んだ道を進むしかない。

菜々子は、部屋の窓を開けて、外の空気を吸い込んだ。


夜空を見ると、いつもと同じように月が雲間から光っている。



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