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ネクタイと社交辞令さん

作者: 水無月 狐鉄

「どう?

今日一日楽しかった?」

彼が私に聞いてきた。

「そう聞かれてしまっては社交辞令として

 こう答えるしかないですね。

『ええ、楽しかったです』と」

彼は私の答えに苦笑を浮かべ

「社交辞令としてって」

と、言った。

「そうです。

 だって、全てが終わって楽しかったと言って締め括れれるのは子どもまでです。

 大人になれば、その過程にあった嫌なことや、面倒な事を踏まえて

 『大変でしたが、楽しかった』と答えるのです」

それを聞いて彼は

「子どもは。って

 君はまだ高校生じゃないか」

と呆れ顔で言った。

「ですので、大人らしく社交辞令で

 子どもらしく楽しかった。と答えたのです」

彼は、左様かですか。ともう一度苦笑し

「なら、こっちは大人らしく

 『楽しかったならよかった。

 また、来てね』と言って締めくくるよ」

それに対し私は

「『はい、また会えるのを楽しみにしています』」

と、返し手を振った。

多分、これが最後だろう。

もう、会うことなどないと分かっている。

だからこそ、次があるような空気のまま彼に背を向け歩き出した。

数歩歩いた時に

「元気でな」

という彼の声が聞こえたが振り返らない。

それをしてしまったら

彼との数日間が全て台無しになってしまい、本当にもう二度と彼と会う事は叶わなくなるだろう。

だからこそ私は涙を堪え歩き続け、私の家を目指して帰ったのだった。

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