第0話 出会って一秒
「ねぇ、私とひとつにならない?」
「ああ、いいだろう」
こうして二人は出会って一秒でひとつになった。
どうしてこうなったのか、話は少し前に遡る。
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男の魂は冥府を彷徨っていた。
前世で犯した罪の呵責から男自身が望んでここへ堕ちた。
しかし、それからもう五〇〇年ほどが経過していた。
そんな男に湧き上がってくるのは——暇だ、という思いだった。
ここには何もない。
いや、怨嗟の連鎖だけがここにはある。
男はその鎖に縛られて、この場所に留まっていた。
女の魂もまた冥府を彷徨っていた。
しかしこちらはここに来てまだ半日と経っていない。
本来は来るべきではなかったのに、女にかけられた呪いのようなものが女をここに堕とした。
そんな女に湧き上がってくるのは——焦りだった。
そんな二人の魂が冥府で出会ったのは偶然だったか必然だったか。
女は男の光り輝く魂を知覚して、すぐに声を掛けた。
「ねぇ、私とひとつにならない?」
暇を持て余していた男はすぐに返事を返した。
「ああ、いいだろう」
こうして二人はひとつになり、魂は現へと還っていった。
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