3章13 ダンジョン派遣部隊結成
野営地にて、設営を終えてタチアナさんに食材を渡すと早速ダンジョン派遣部隊の準備にかかった。
まず12体の構成だがこれは通常の2部隊分、ノーマル6体、両手剣2体、大楯2体、弓2体
で良いだろう。
そいつらにちょっと細工をして、フォーメーション、行動指針をインプットしていく。
今回、護衛対象も俺も居ないので、大楯の役目は完全なタンク役になる。
周りの状況によって、狭い場所、広い場所、狭い通路、広い通路、色々なケースによってフォーメーションを変えていく。
行動指針は簡単だ。
優先順位は安全確保、回復、再行動。基本的にはこれだけだ。
安全確保には敵の排除や撤退行動によって、ダメージを受けない状況を作るための全ての行動が含まれる。
回復はスケルトンはHPの自動回復機能があるので、全回復するまで待機する。
全員が全回復したら移動して敵を探す。
問題は安全確保だろう。
敵の強さによって排除を目指すか、撤退するか。判断できるだろうか?
俺のレベルが25になったらリッチを召喚できるようになるから、判断を任せる事もできるだろうが、今はどうしようも無い。
まぁ、それを含めて今回は試すしかないのだが……
「本当にそれで大丈夫なのですか?」
俺の細工を見ていたフランがそんなことを言ってきた。
「結構いけるんじゃないかと思うんだが……」
改めて見たフランが懐疑的な目を向けている。
「大丈夫だって。取り敢えずこいつらは攻撃をしないようにするんだし、冒険者からは距離を取るようにすれば大した問題にはならないよ」
フランはまだ不安げだ。
「大丈夫、大丈夫。いけるけるけるケロップ。スケルトンには冒険者には警戒色は出しても、攻撃色は出さないように指示しておくよ」
「警戒色?攻撃色?」
フランが疑問符を頭に浮かべていた。
「気付かなかった?スケルトンの目の色に」
俺は1体のスケルトンに目の色を変えさせて、青だった色を黄色や赤の表示をさせる。
「変えられるのですか?目の色を?」
俺は我が意を得たりと頷くと畳み掛ける。
「それにスケルトンが全滅してしまっても、俺達に実質的な被害は無いしね」
勿論、俺は無駄に死なせるつもりは無いけど、倒されてしまったら再度スケルトンを召喚すればいい。
スケルトンの装備は召喚した時にスケルトンが持って来たものだし、多分倒してもその場に残るような物じゃない。
そう、スケルトンの装備は強化のスキルが上がる度に良い物に変わっていき、今では武器も防具も魔法の光を放っている。
今ではと言うならば、鎧や盾の一部に黒く何かが書いてあるのだが……
夕食を取った後の余暇の時間、俺は12体のスケルトンを倉庫に入れて『転移門』を開いた。
行先は言うまでも無くエメロン郊外のダンジョンの傍に設定した出口だ。
『転移門』は閉じずに置いておくことが出来る。
転移門が閉じてしまう条件はいくつかある。
1、術者が閉じる事を望んだ場合。
2、術者が別の転移門を開いた場合。
3、術者が転移門を往復した場合。
4、術者が開いた転移門の出口の設定を消した場合。
5、何者かが転移門に干渉して転移門の魔法を打ち消した場合。
上記のどれかがなされた場合、転移門は消えてしまう。
今回も暫く維持して帰りに使う予定だ。
周りを見ると陽も落ちてしばらく経っており、人気はすでに殆ど無くなっている。
ダンジョンの入口傍に冒険者ギルドのダンジョン入口出張所みたいのが建っており、そこは24時間営業みたいで窓口から覗くと奥で動く人の気配があった。
「あの~、すみませ~ん」
呼びかけると奥で動く複数の気配があった。
ワンオペでは無いようだ。
当たり前か。こんな所で問題があったら1人ではどうもできん。
やがて頬に傷のあるいかにも歴戦の冒険者然とした30代後半くらいの男が出てきた。
「何だ?今から潜るのか?それとも帰りか?」
少し訝しんだような感じで話しかけてきた。
受付としたら当然だろう。碌に装備を持っていない俺が何をするつもりなのか警戒したのだろう。
「ダンジョンは初めてなんだ。ダンジョンについての情報が欲しい。場合によっては少し様子見に潜っておきたい」
やっと男は納得できる何かを見付けたのだろう。警戒心が少し緩んだ様子がこっちからも見て取れた。
「ギルドから無料で提供できる情報はあそこの壁に貼ってある。ダンジョンで出現するモンスターも倒すまでは外のモンスターと殆ど違いはねぇが、ダンジョンのモンスターは金をドロップしない代わりに魔石をドロップする。魔石はギルドで買取を行っている。あとダンジョンではモンスターも冒険者も死体を残さない。ダンジョンに吸収されると考えられている。もしこれからダンジョンに入るなら1人当たり100G貰ってここで入場の登録をしてくれ。帰ってきたらここで帰還の手続きをしてくれよ。無茶はするな。必ず帰ってこい。以上だ」
最後の「無茶はするな。必ず帰ってこい」の所はやたらと気持ちが乗っていた。何よりの本音なんだろう。悪い奴では無いっぽいな。
「分かった。ありがとう。やっぱり少し潜ってみるから受付を頼む」
俺は100Gとギルドタグをカウンターに置くと手続きをしてもらった。
「さっきも言ったが無茶をするなよ?1人だと何かが起こったら対処できないだろ?」
顔に似合わず親切だな。
「長居するつもりは無いよ。30分もしない内に帰って来るさ」
タグを受け取ると後ろ手に軽く手を振って返すと、情報の貼られている掲示板の前に移動した。
掲示板には17階までの詳細なマップと、そこから20階までの曖昧なマップ、モンスター等の情報が掲示されていた。
俺はコンソールのデジカメ機能で一通り記録に残すとダンジョンの入口に向かった。
ダンジョンの入口は少し盛り上がった丘の中腹に開いていた。
何かの遺跡の入口の様な形をして冒険者を迎えていた。
『発光』
俺は胸元の水晶球を明かりに下に続く階段を一歩一歩降り始めた。
何十段か階段を降り、地下1階にたどり着くとそこは上からの明かりも届かない、遺跡の一角だった。
入口を入ってすぐの場所だが近くには人の姿はない。
だがどこからかは人と思われる気配がする。
やはり何人かは夜でも潜っているようだ。
長居は無用だろう。
誰かに見られないように12体のスケルトンを倉庫から取り出すと2階を目指して進むように指示を出した。
離れていくスケルトンの背中を見送り、見えなくなるともはやここに居る用は無くなった。
背後の階段に足を掛けると、「頑張ってこい」と誰も聞く事の無い感傷を吐露してダンジョンを後にした。
先程のギルドの受付に帰還の報告をすると「本当に覗くだけなんだな」と少し呆れている様だった。




