3章11 苦痛と快楽
ちょっとセクシャルな部分もありますが、サラッと流せるのではないでしょうか。
ズキッと頭に激痛が走った。
偏頭痛というのはこんな感じなのだろうか?
俺の心臓が脈打つのに合わせるかのように痛みが俺を苛む。
その痛みは頭頂部からどんどん広がりながら、俺の頭と体をまるでハードディスクをデフラグか初期化するかのように、最終的には全身を嘗め回すように駆け巡った。
「くっ」
抑えようとしたがうめき声が口から飛び出した。
痛みを堪えるように顔を歪ませた俺をフランが心配そうに見つめてくる。
俺はきっと酷い顔をしているのだろう。
フランがソワソワしているのが分かる。いや、オロオロだろうか?
どうしたらいいのか分からないのだろう。
俺はフランの落ち着かない様子を眺めながら、意識が遠くなっていくのを感じていた。
気が付くと俺はベッドに腰かけながら前かがみの姿勢で居たようだ。
というか、フランがベッドの隣の床に座っていて、俺の手を握りながら俺の膝に頭をもたせかけていた。
俺が身じろぎしたのに気付いたのか、顔を上げ俺の顔を覗き込んできた。
「もう大丈夫なのですか?」
俺は身体を襲っていた痛みがもう残っていない事を確認し、所有スキルの基本ポイント以外のポイントがリセットされているのを確認する。
「あぁ、無事に終了したようだ。心配かけたな」
フランはそう聞くとホッとした様子でフルフルと首を横に振ると、俺の膝の上にもう一度頬を寄せた。
「いえ、無事であればいいのです」
そう言うとその体勢で暫く目を瞑っていたが、自分の格好にハッと気付いて慌てて体を起こした。
その恥ずかしがるフランに俺はどうにも堪らなくなってしまい、『性交渉』のスキルだけ普通の人の限界である20レベルまで上げると激しく求めてしまった。
賢者タイム中、隣で疲れて眠ってしまったフランを横目に、スキルの再設定を行う。
再設定と言ってもそんなに前回と変えるつもりは無い。
『性交渉』スキルは先程変更したし、『火矢』と『火球』を『エネルギーボルト』と『マジックミサイル』に変える。
あとは使っていないスキルの見直しだが、『レイスフォーム』は使っていない。
『レイスフォーム』は生霊化と言うべき魔法で半透明の実体のない体になれる。
敵の物理攻撃を無効化できるのだが、魔法の攻撃は普通に受けるし、『聖光』等の魔法が苦手になってしまう。
まぁ壁をすり抜けたりできるようになるのだが、使いどころが難しい。
今後も使うかどうか分らないので基本ポイントで振っている1レベルのままにする。
1ポイント振っておけば壁はすり抜けられるしな。
『亡者の手』は移動阻害・小ダメージの呪文だ。
所謂地面から沢山の死者の手が生えてくるお馴染みの魔法だが、敵が弱すぎて今までスケルトンだけで倒せているから使っていないだけなので、この魔法は残すべきだろう。
『リアニメイトデッド』、そのまま死者・モンスターの死体を一定時間強化してゾンビにして動かすことが出来るようになる呪文なんだが、今のところ使いどころが無い。
これも基本ポイントで振ってある1ポイントだけにしておこう。
『魔力壁』物理・魔法問わず、防御できる壁を作り出す。
これは有っていいでしょ。
こと戦闘用の呪文は必要になるかも知れないからという理由であらかじめ取得しておかないと、必要になってからポイント振って、間に合わなかったらどうするの?って話だから……
しっかりと合計20ポイント振っておいた。
これで今回のリセットは終了だな。
今俺のレベルが19だから、また20レベルになると取得できるスキル、呪文がメガっさ増える。
ネクロマンサーとしては20レベルで『呪い』が取れるようになる。
『呪い』は対象の範囲の敵に様々なバッドステータスを付加する魔法だ。
所謂、デバフというやつだ。
呪文のレベルを上げる事によって一般魔法の様に効果を選べる様になるし、効果範囲も広くなる。
効果は例えば酩酊の様な状態にして判断力を奪ったり、痛みを与えて呪文の詠唱を阻害したり、疲労を与えて動きの精彩を欠かせたりする事ができたりする。
効果的に使うには頭を働かせる必要があるが、受ける恩恵はでかい。
勇者スキルでは20レベルになると『戦闘の極意』と『魔法の極意』という分かりやすいチートスキルが加わる。
これはそれぞれ全ての武器、魔法による攻撃の精度や威力を上げてしまうというパッシブスキル(常動型スキル)だ。
しかもどんな武器や魔法も格闘や『アンデッド召喚』で召喚したスケルトンの攻撃ですら上げてしまうという理不尽で節操のないスキルになっている。
攻撃魔法では範囲攻撃魔法がラインナップに加わる。
純エネルギー系に『爆発』が、氷系に『氷嵐』が取得できるようになる。
それ以外にも多くのスキルの取得が解放される。
20レベルになった瞬間に取りたいスキル、魔法が沢山ある。
なるべく多くのポイントを残しておきたい。
……
母親かぁ……
まさか今まで居なくて当たり前だと思っていた。母親の二文字にこんなに動揺するとは……
「はぁ~」
この日は寝付くまでに少し時間が掛かった。
翌朝。
「ゆうべはお楽しみでしたね」
まさかそれを言われる日が来るとは……




