2章4 パーティ登録
日が変わって翌朝、日課の鍛錬を終えて朝食を終えたらグリンウェルの街に戻るだけなんだが……
『転移門』
グリンウェルの街の外に設置したポイントへ『開け』と念じながら唱える。
目の前3m位に楕円形の何かがあった。
鏡のように見えるそれは何も反射してはいない。
漆黒の表面は何も返さない。
光さえも透過も反射もしていない。
故に漆黒。
これに飛び込むなど正気の沙汰では無い。
自分が作ったのでは無かったらだが。
フランも怖気てしまっている。
「さあ行くぞ」
俺は左手でフランの右手首を掴むとゲートに飛び込んだ。
境界が何かスラ〇ミーみたいなねっとりとしていた。
プルンッと向こう側に出るとグリンウェルの街の西門が見えるという場所にいた。
隣を見るとフランが口をポカンと開けていた。
隙ありっ!!
咄嗟の判断で俺は倉庫からドライフルーツを一つ取り出すとフランの開いている口に放り込んだ。
彼女の驚いた顔がレベルアップ。
「ひょっほ、ふぁにふるほよ~!」
そう言いながらもおいしそうにドライフルーツを頬張っている。
頬を膨らましたフランがかわいい。
「すまないがこれの事も内緒な」
俺は肩越しに親指でゲートを指し示しそう告げる。
「騒がれるのも嫌いだしな」
フランの目に俺はどう映ったのだろう。
グリンウェルの西門から街の中へと入る。
フランの分だけ入街税を払った。
「フランはこの街に入ったことはあるの?」
「お遣いで何度か来たことが有ります」
聞けばウィッチとしての修業中、ポーションの材料の仕入れや納品などで何度か訪れた事があると言う。
ウィッチの分かりやすい具体例を示すと魔〇の宅急便のキ〇の母親と言えばイメージがし易いだろうか。
魔法を使いながらポーションや薬を作ったりして人の役に立つ職業だ。
フランに聞くとそれ以外にも薬草を栽培したり、栽培できない物を採集したりもするそうだ。
知り合いはいないのか聞いたが仕事上の知り合いはいるがそれ以上では無かったと。
二人は中央広場に向かい冒険者ギルドに至る。
冒険者ギルドに入った俺は早速受付カウンターに座る女性に近づいた。
「冒険者、その他の遺体を回収したのだがどうすればいい?」
女性はちょっと『えっ?』とした顔をしたが奥の男性に目配せをしてから搬入口そばのスペースを示した。
俺はそこに回収した冒険者と商人たちの遺体と馬車などをなるべくどうやって出したか分からないように出した。
少し待つとギルド長がやってきた。
「状況を話してくれ」
俺はかくかくしかじかうっふんあっはんと状況を熱く語った。
「コボルトか……」
「まだ相当な数のコボルトがいるみたいだな」
「頭の痛いことにな」
ギルド長はそう言うと
「それにしてもこれだけの物をどうやって持って来たんだ?」
やっぱりそうなるよな。
「すまないがそれは企業秘密だ」
その言葉でどれだけ口止めできるか分らんが今はやらないよりまし。
「今後は全部持ってくることは無いぞ。持ってくるのはこいつだけでいい」
そう言うと遺体からタグを外していき俺に提示して見せた。
「タグだけ?他は?」
「他は発見者の物って決まりだ。タグだけはギルドの所有物だからな。あぁこいつは痛い。護衛失敗かよ」
ギルド長の顔が痛みに歪む。
痛みと言っても経済的な痛みだが。
「商人達は依頼主に返すか……それはこっちでやっておくよ」
発見者の物と言われたら俺のでいいのか。
一通り剥いでおくか。
死して屍拾う者無しってのは悲しいね。
ギルド長の前を辞してカウンター前に戻る。
フランの冒険者登録を行う。
ここでもあの石板を使うのか。
やはりそうだった。
フランが針で指を突いて血を垂らしていた。
まぁ我が事のように興奮するパシリアさんはここにはいないが。
冒険者の登録を終えると次はパーティの登録だ。
メンバーは二人しかいないのだが、
「パーティ名は何になさるのですか?」
あ~、決めて無かった。
フランと相談しなきゃ。
「適当に決めちゃってもいいか?」
人はそれを相談とは言わない。
パーティ名のパターンとしては『黒龍』とか『閃光』みたいに一語でまとめるか、
『白狼の咆哮』とか『雷帝の一撃』のように二語にするかだろうけど……
俺がリーダーだからネクロマンサー的に『冥府の門番』とかにするか優樹という名前から『世界樹の若枝』とかにするか……
どっちも厨二病だなぁ。
まぁ、ネクロマンサー的の方は可愛くないので『世界樹の若枝』の方でいいか?
黒歴史を作りそうだが……




