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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
7/21

七話 勉強という点において私は存在意義を見いだせない


 五月二日月曜日。つまりはあの出来事の終わり(深夜に終わっていたのでその日は金曜日で祝日)、そこから二日経って私は学校に登校していた。


 ミマ高校。それが私たちの学校。山の麓よりも少し上。だからちょっと人口が少ないかもしれない、というか多分そう。

 私は当然のように紗良と一緒に歩いている。紗良が異端者なので回りから少し嫌な視線を向けられて、そして一緒にいる私にまで被害に遭っているわけなんだけど、当の本人と言えばそういうことは気にしない。一番気にするのは"嘘"を言うことだから、それ以外は特に気にしないといっても間違いないのかもしれない。


 「今日終われば明日はオープンキャンパスだよ、ライム!」


 そんな私の私物破壊魔(いや、私さえも破壊した)の紗良が私に話しを振ってきた。

 確かに今日が終われば火、水、木曜日は祝日ゴールデンウィークだ。だからその時にオープンキャンパスを行う学校も少なくない。でも、それでも、


 「そうだね。でも、あまり行きたいとは思わないなー」


 そう、私はオープンキャンパスを別に行きたくて行こうとは思っていない。すべては紗良に決められたと言っても過言ではない。

 とはいえ、私が国公立大学を目指すのなら、そのくらいの(こころざし)は持たないといけないと思う。


 「意外と行ったら、行ってよかったーって、そう思うかもしれないよ?」


 「…………うん、そうかもね」


 行ってみなければ分からないとは言うけど、実際のところあまり変わらないのではないか? そう問いかけをしてしまう私がいる。


 「…………ライム、大丈夫? そんなに行きたくない?」


 「そんなに行きたくないわけじゃないけど、何だろう…………本当に私はその大学に行きたいのかなってよく思っちゃうんだよねー……というかそもそも大学行きたくないのかもしれないのかな……?」


 「つまり関心がなくて、大学なんて行きたくなーいって病んじゃうこと?」


 「病んじゃう……か。まあ……、平たく言えばそういうこと」


 実際、私は病んだことがある。私は男子と付き合ってその人が重度のロリコン且つ私を変質者のように舌舐めずりするように見ていたと知ったとき、自我が崩壊しかけていた。

 そしてそれ以外でも私は些細なことで自我が崩壊するときが多い。それは私の心持ちが弱いからで、多分大学で単位落とすだけでもかなり病んじゃうと思う。

 でも、


 「そしたら私が隣にいてあげるよ。ライムが辛いとき、私はいつでも傍にいるからさ」


 どんな時でも、私を助けてくれていたのは紗良だ。それは私が一番知っているし、私の家族も知っている。解決の仕方がちょっと--いや、かなり強引的に解決することも歩けど何度でも私を助けてくれた。それが私の親友だ。


 「…………ありがとう」


 そういうことがあるから、私は紗良を嫌いになることは絶対にないと思っている。


 「ところで最近の先生の態度なんかやだよねー」


 「先生って…………うちらの担任の厚芝(あつしば)先生?」


 「そうそう。この前も理不尽に怒られた気がするしー、やんなっちゃう」


 紗良がここまで人に嫌悪感を出すのは少ない。というか、嫌悪する人間は嘘をよく吐く人が多い。その紗良がうちの担任を嫌っている。…………まあ、凄く共感はしてしまうけど、私はそもそもあの先生から期待されていないから嫌いにはならない。まあ、私と先生はお互いに無関心だと思う。…………、


 「おーい、聞いてる?」


 「わっ!」


 目の前に出た手に私は驚いた。


 「もしかしてこの前の夜更かしとかの疲れが溜まってたりする?」


 「まあ、そんなところ」


 そんな話をグダグダ続けながら私たちは教室に向かった。












 *****










 教室に入り少しだけ紗良と一緒に勉強をしながら、ホームルームまでの時間を潰し、今はそのホームルームなんだけど…………、



 「いいですか、みなさん。これからいうことをよく聞いてくださいね。貴方たちはもうすでに受験生なんですよ。なのに、勉強時間が全然足りません!」



 この説教垂れているのが私たちの担任の厚芝先生。

 そして、ほとんどの生徒に嫌われている先生。なぜ、嫌われているかと言えば、普通の人よりも平等心を大切にしているからだろうか? そこからの理不尽なことを話す場合が多い。

 例えば勉強時間によっても効率、というものが当然ある。それによって勉強時間が低くても効率よく、要領よくやれば勉強時間が低くてもいい点数が取れる。そして勉強時間よりも勉強量のほうが大切であるはずなのに、その点に関して言えば特に何か話されたことは無い。本来は勉強量、勉強の効率性を重視すべきなのに担任の厚芝先生はソレをしない。

 勉強時間だけを気にして、そして厚芝先生が発案したのが一日にどれくらい勉強したかを記録する表(つまり記録表)だ。これに時間を記録するのだけど…………、最近は平日でも六時間はやれと言っている。


 クラスの生徒全員が同じ大学を目指しているわけでもないのに全員に同じ目標を課せる。

 当然、嘘の記録を書き出す生徒もいる。反対に真実を書き出す生徒。そして一番の理不尽が、その嘘をやるわけがないと勝手に信じ込んでいる、もしくは鈍感過ぎてこのことを知らない--そのように考えている厚芝先生とかいう私の担任。


 そして今は、その記録表で平日六時間勉強をしない生徒が続出しているので叱っているという構図。頭がおかしい。


 「これはいい傾向とは思えません。皆さんはもっと勉強をしたほうがいいですよ。ありえません」


 …………その発言は言い過ぎで、しかし間違ってはいないかもしれない。勉強をより多くするということはそれだけ成績も上がる見込みがある。

 でも、それでもその発言が生徒の反感を買っているのは事実だ。

 担任が嫌われ過ぎて隠語までできている。そして女で四十路を超えているのに結婚できない独身とか言われている。


 「特に三時間の勉強を切っている生徒--遠藤、神崎、桜田、澤山、立花、浜崎、君たちはホームルームが終わったら私の元まで来なさい!」


 私は記録表に嘘を何一つ書いていない、だからこそ桜田と呼ばれて後でまた説教を加えられるわけだけど。でも、成績のいい(澤山)紗良は別に怒らなくてもいいはずなのだ。

 勉強時間はそこまで取っていないけど、私より成績は優秀だし、というかクラスで一番だったはずだし。


 とにかく、先生の意味不明な生徒を平等にする精神が異常すぎて、この担任は担任ランキングで言えばワーストだ。私がそれほど断言できるほどに、厚芝先生の評価は悪い。

 そんな先生が私の、桜田ライムと澤山紗良の担任だ。











 *****








 「あ゛ー、もうあの先生あり得ないっ!」


 珍しく、紗良が怒っていた。


 今は、今日最後の授業が終わって下駄箱で靴を履き替えているところだ。

 紗良の怒りはもっともだから私は、


 「確かに紗良が怒られるのはいつも思うけど酷いよね」


 率直な意見を述べた。

 その言葉を聞き、私の方をまじまじと見ながら、紗良は「それよりも」いい、


 「ライムはいいの? 嘘の記録は書かなくても大丈夫なの?」


 「えっ? 別に大丈夫だよ」


 記録表は六時間勉強したと記録する人はいなくても、しかし四時間くらいの嘘の記録を書くことが多い。その多くの理由は多分、先生に毎日怒られなくて済むから。

 でも私や紗良はそんなことはしない。その理由は、紗良は嘘が吐きたくないからで、…………私も似たような感じ。


 「ホント? 私のために嘘をついていないとか、そんなことじゃない?」


 紗良は嘘を言う(この場合は嘘を書くだけど)のが嫌いだけど、私は嘘を言うのは嫌いではない。しかしなんで嘘の記録を書かないのか? 紗良が聞きたいのはこういうことだろう。そして当然私はそれに対する解を--持つわけがない。

 いうなれば成り行き。最初に本当の記録を書いてしまい、そこから嘘をつくのが面倒に、億劫になってしまった。そんな些細なこと。それでも紗良は心配しているので、


 「先生に怒られるのは別に気にしないから。大丈夫だよ、紗良」


 ……嘘は言っていない。だって先生に怒られるなんてどうでもいいことだから。


 「…………ありがとう」


 いつもとのギャップに少し驚くけど、あまり気にせずに下駄箱から出る。

 そこにはある先生がいて、


 「あっ、小野先生ー!」


 さっきの表情はどこへやら。キラキラとした瞳で小野先生のもとまで走っていく。

 小野先生。性別男。数学の先生で、美化委員会の先生を担当している。まだ若い先生なので担任はやったことないらしい。


 「紗良さんか。こんにちは」


 「うん、そうだよー紗良だよーこんにちはー!」


 紗良は先生に対してもかなりフレンドリーに話しているが、当然どんな先生にでもこうしているわけではない。例えば厚芝先生にはこんなことはしない。


 「ライムさんもこんにちは」


 私は軽く会釈をしながら「こんにちは」と返す。紗良に何があったのかは知らないけど、小野先生とはかなり仲がいい。高校一年生の後半か、二年生の前半には会ったら話をするほどに仲が良くなっていた。


 「先生は今……美化委員会の先生のお勤めしてる感じですか?」


 「うん、そうだね。とりあえず、花壇や植木鉢に水やりをしているところだね」


 紗良が先生に敬語を使うことは意外かもしれないが、そこらへんは生徒という考えが及んで使っているのかもしれない、そんなどうでもいいことを考える私。そして、紗良の影に隠れるようにして紗良と小野先生の会話を傍で聞く。


 「そうなんですか! ちなみにこの花は何ですか?」


 紗良が見ていた花の色は紫色で、茎が少し弱弱しく見えている花だ。


 「竜胆の花だ。僕はこの花が好きでね。家でも育てていて、それで余ったものが出てきたから学校の許可をもらって植えているんだよ」


 「この花、好きなんですか?」


 「うん、僕はこの花好きだよ。この花も好きだし、花言葉も好きだ。花言葉は紗良さん本人が自ら調べることをオススメするよ」


 「分かりました! 今度調べてみますね!」


 相変わらず紗良は、先生を前にしても滅茶苦茶元気だ。

 …………竜胆の花言葉か……。私も調べようかな?


 「僕は今から他の花壇の水やりに行くつもりだけど、紗良さんたちも来るかい?」


 「あー…………大丈夫です! 私たち家に帰ったら勉強するので!」


 勉強…………うっ…………頭が…………、バタっ(空想の中で)。


 「そうか。頑張ってくれ」


 「ありがとう先生! さよならー小野先生!」


 「さようなら、小野先生」、さよなら私の至福の時間。


 小野先生は手を振って私たちを見送っていた。そして、私はまた紗良と勉強をする羽目になる。もちろん、それは国公立大学に受かるために、仕方ないけどやるしかない。







 *気が付けばそこにいて、気が付けばそこにいない*

 *それが彼女たち〇〇*

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