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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
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二十話 契約成立


 「どうしたの? そんなに驚いて?」


 意味が分からない。いや、意味など分からなくてもいい。

 要するに、つまりは、アラムはオカシイ中のオカシイ存在なのだ。それだけが十分に分かった。

 私が異常すぎる考えを持っていて、それが相手の常識の範疇に入っているのは正直言って背筋が凍る。


 「なんでもない」


 私はなるべく、アラムに感情移入しないように心掛けてはいた。じゃないと私が壊れる。


 「そう。なら、そろそろ契約内容を説明してもいい?」


 「……うん」


 兎にも角にも先にこの契約内容を聞くことが大切だった。


 「契約内容はけっこうシンプルよ。まず一つ。私が君に疑似的に憑りつく。といっても支配とかするわけでもなくて、それが私のチカラを与える結果になるんだけど」


 「……憑りつかれると、私はどうなるんですか?」


 そこは、絶対に訊かなければいけない。


 「? どうもならないわよ。私のチカラを渡すから、君はチカラを得るということよ。憑かれるのは、チカラに憑かれるって意味よ」


 ……、王道的に考えてしまうと、漫画やアニメのように考えてしまえば、チカラに憑かれた私はチカラに支配されて仲間を傷つける。そんな、現実ではばかげたことを考えてしまう。だけど、いや、だからこそ確認はしなくてはいけない。


 「チカラに支配される、その可能性は?」


 「チカラに支配される? そんなことはあり得ないよ。だって使役者は君よ。使役者が支配されることはないでしょ?」


 そうか、……そうか?

 だんだんと、彼女と話していくと思考さえおかしくなってきた。……いや、もしも心を読まれて、アラムの不利な記憶を消去するのなら、私の思考が乱れているのは十二分にあり得る。


 「…………」


 でも、だけど、今現在アラムに不利な記憶があるはずなのに消されていない。それが、彼女をいくらか信用してもいいという考えになるのだろうか? ……まあ、多少はそうなるはずだ。


 「分かったかしら?」


 「…………ええ」


 少し悩んだ末、私はそう答えた。


 「次に。私は君にチカラ以外にも……いや、厳密には同様にチカラではあるけど、チカラの方向性--ベクトルが違う。なぜならと、そう問われれば簡単、君が今とても欲しがっている"成長性"を与えるからよ」


 「……成長性?」


 成長性。一体全体何に成長を与え続けようとしているのだろう?


 「そうだ。そして君が今望んでいるのは勉強の成長性。違うかな?」


 ……。確かに、確かにそうだ。私はこのままでは目標の大学に行くことはできない。このままでは駄目だと痛感している。

 ……だけど、この幽霊が果たしてソレをもたらすことが可能なのか?


 「……アラムはその成長性を私に与えることができるの?」


 「もちろん」


 「それはアラムのチカラから派生したのもの? それとも能力?」


 「……聞き返して申し訳ないんだけど、チカラと能力、この二つに明確な違いはあると思う?」


 ……、チカラと能力。

 確かに。

 チカラと能力に明確な区別は確かにあるのか? その問いに私は答えることができない。

 虐めることはチカラを持っていることであり、虐めることのできる能力。

 人を殺すことはチカラを持っているからで、人を殺すことを可能とする能力--シリアルキラーでもなんでも、とにかくそういう能力があればできる。

 能力とチカラ関係は等しい。そうかもしれない。

 それはどうでもいいことかもしれなかったけど、少なくとも今は違う。


 チカラは能力で、それがいきなり身につくのは先天性以外はあり得ない。その例外が今、目の前にある。


 「どうかな? 契約を結ぶ気にはなった?」


 「……本当に、それ以外に契約内容はないの?」


 「もちろん。誓うよ」


 たとえその言葉が嘘だとしても、私は本当にその契約をするべきだろうか? 分からない。知らない。でも、たとえそうだとしても彼女に従うことが大事……か?

 何か、思考が乱されているような気がするけど、間違ってはいない。いないと願いたい。だから、


 「じゃあ……契約する」


 「本当にいいの?」


 「うん」


 「ありがとう。君のお陰でいろんなことが捗りそうだ。感謝しかない」


 「…………」


 「契約の儀式……と言えばいいのかな? 私の思念体をいくらか渡す。だから驚かないでほしいと先に断っておくけどいいかしら?」


 まだ、断れるかもしれない。まだ、彼女との契約を無しにできるのかもしれない。でも、私はこれに頼るしかないんだ。


 「……いいよ」


 そのあと、この空間における私の意識はなくなった。






 *また……犠牲者が出てしまうのじゃろうか?*

 まだ見えぬ、ここにいない誰かはそう呟いた。

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