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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
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二話 私の親友はエスパーなんだろうか?


 「やー元気してるー、ライムー!」


 私の親友--紗良は元気そうに、明るい笑顔を私に見せていた。


 「うん、まあ元気だよ」


 ホントは、「元気ではあるけど眠いわ!」などという茶番をしたかったんだけど眠すぎで無理だった。


 「えー、元気そうには全然みえないよー」


「元気ではあるけど眠いわ!」


紗良はエスパーかなんかで私の心の中読んだでしょ!

 私は思わずそうツッコミを入れたかったけど、やっぱり眠いのでテンションを上げ続けることができない。だから今そんなことをするのは無理。


 「なんだー、元気そうじゃん」


「うん、そう言ってる」


 小さいかな、私の堪忍袋。もう緒が切れかかりそう……。

眠りから覚めたばかりだから怒りやすいと思ってよう、そうしよう。そうして時間を稼いで堪忍袋の緒をしっかり閉めよう。


「--なんか怒ってない?」


「怒ってないよ!!」


 堪忍袋の緒が切れちまったよ、こんちきしょうめ。そしてホントに紗良は私の心読んでないよね? もはや人心掌握されている気しかしないんだけど。


 「そんな怒んないでよー、怖いじゃん」


「ねえ、怖いってホントにそう思ってる? 思ってないよね?」


 いや、さすがに怖いとは思ってないでしょ。コレ、よくある冗談で怒んないでよって言っていると第三者からは思われるだろうけど、紗良はけっこうな割合で本気で言っているからね。一度書道で「全国優勝したよー」って急に話しかけてきたときはさすがに嘘だと思ったけど、結果は本当で学校に全国大会優勝という横断幕が飾られたので茫然になってしまった私がいるわけなんだけど。

 まあ、それでも、そうだとしても、さすがに怖いと言われるのは心外だったのでホントにそう思っているのか問いただした、そういうわけ。

 そして、冗談見たいな塊が具現化した紗良は、


 「思ってるよ」


「そう……」


 この話題からは離れるべきだ。じゃないとずっと思っている思ってないの水掛け論のような議論が始まる。

そして、というか一度、一拍置けたから気づけたことがある。


「そういえば、みんなはもう帰ったの?」


 みんな、というのはクラスのみんなという意味だ。

改めて教室を見渡すと私と紗良以外は誰もいないように見える。


 「うん、いないよー。だって時間見てみー」


 紗良に言われて時間を、時刻を見た私は驚いた。


 「六時半……」


 六限目の授業が終わる時刻が四時半だから……二時間も教室でグースカ寝てたのか私は……。


 「6時(ハン)ってなんか京都弁みたいだよね」


「知るか!!」


唐突な紗良のボケに私はまた堪忍袋の緒が切れてしまった。こんなに簡単に割られるのは紗良のときだけだと信じたい。

というか今気づいたけどこれは堪忍袋ではない気もする。


 「で、どうする? 帰る?」


 さらに紗良がボケをしなくて一安心。韻は勝手に踏んじゃうのは名前が紗良だから気にしないでね(誰に言っているんだ私は)。

 そして、紗良の質問に私は当然、答えを返す。例えば質問を質問で返すのはいけないってどこかで習ったからね。


 「帰ろっか」






*****






 私たちは今、下校途中だ。六時半になるとやはり辺りは暗くなっていて、ちょっと怖いけど。

 学校までは自転車やバイクで帰る人が多い中、私たちは歩きだ。理由としてよく挙げられるものは近いから、というのが多いと思うんだけど、私たちの場合は違う。先に注意書きのように話すが相当紗良が変だから、というのを念頭にしとかないといけない。でないと第三者からは私も変な人の仲間と思われてしまう。まあ、それで他の人からは変な目で見られることもしばしばあるけど。だからといって私は紗良と友達になったことに後悔はしていない。変な人の仲間と思われたせいで他の人と友達になれなかったけど。

学校から家まで歩きで帰るわけ、それは健康のため、らしい。別にまだおばあちゃんという歳でもないのにこんなことしている意味がわからない。まあ、紗良の考えていることだ、考えるだけ無駄だ。そして私は巻き込まれているだけ。


 「ライムは今日なんで眠かったの?」


 そんな変人が話を持ち出してきた。


 「……睡眠時間が少ないから」


 当然、そんな答えを求めているわけではないのだろう。できればこんな一般道路で私の趣味の話題には触れたくないんだけど。


 「いや、睡眠時間が少ないのはわかるよー。でも私が知りたいのはその理由。勉強してたの?」


 受験生だから、それが第一候補に挙がっているのだろうか? 紗良は初めに勉強かと聞いてきた。まあ、違うんだけど。違うんだけど、話したくない。いや、これが私の部屋とかであればいいんだけど、あまり場所は気にしないで話すからなあ、紗良は……。


 「…………」


 話したくないから無言になってしまった。


 「んー…………、もしかしてまたコスプレ衣装作ってた感じ?」


 はい、一瞬で私がここで言ってほしくないことを言っちゃったよー、勘良すぎない? もし本人がエスパー人間っていったら私は一切疑わないで信じるよ。


 「うん、そうだよ」


 また、私の堪忍袋の緒が今にも切れそうです。寝起きじゃなくなったからまだ大丈夫だけどこれ以上話を広げるのはやめてください。また怒りますよー。ライムちゃんカンカンになるからね。


 「--ライムー、ライムん家までかけっこしない?」


 「えっ、ああ、いいよ」


 なんか斜め上、というか全く違う話題になってしまったので驚いてしまった。


 「じゃあ、ここからねー。よーい、ドン」


 あまりにも突然競争するように走り始める紗良。だがこのくらいはもう慣れている、紗良の突発的な行動に慣れてしまったからだろう。私もスタートの合図で走り出す。





*****






 「ま゛っ゛て゛よ゛ー」


 忘れていた。一つ私が忘れていたことがあった。それは紗良の運動能力が凄まじい程の持ち主ということだ。

私も足は速い方なんだけど紗良は桁違いの速さというのを忘れていた。確か紗良の百メートル走の記録は六秒台だった気がする。そして、もちろんのように長距離も得意だ。正直、大会に出場すれば一位なんて軽くとれるんじゃないだろうか。


 「えー、遅いよーライムー」


 違う、紗良が速いんだ。

言い返したいが、疲れて無理。


 「とうちゃーく!」


 一足、二足、いや十足ぐらい速く紗良は私の家に着いていた。



 「も゛う゛、ム゛リ゛」


 私も遅れながらも自分の家に着いた。

はい、もうですね、紗良の体力がバケモン過ぎてどうにもできません。私の体力はもうゼロ、すっからかんなのに紗良は体力がまだありそうで私を笑顔で迎えてくれた。


 「お、ようやくだねー、遅いよーライムー」


 おぉ、全力で紗良の要望に応えて遅い……だと? なにそれ。笑顔でよくそんな言葉を口から()けるなあ。私もう怒った、おこだよ、激おこぷんぷん丸だよ。激おこぷんぷん丸が死語なんて関係ないからね。私はそんくらい怒ってるからね。

 でも今は疲れてるから、許すよ、許してあげる。


 「ライムー、早く家の鍵出してよ、ライムの家に入れないじゃん」


 「……待て、……待つんだ」


 うん、イライラで口調が変わり始めている気がする。また堪忍袋の緒が切れそうだよ。いくら私でも、こんなに怒りに満ちそうな気分を味わうのは人生でこの紗良とかいう非常識すぎる人間の近くにいるときぐらいだと信じたい。


 「なんで待たなきゃいけないの? 早く家に入らない? 走って熱いでしょ、身体が火照ったりしない? 火照って火照ってファイアーだぜってなってない?」


 「し……知らないよ……。そ……そして、その前にさ、私は一度も、一度として家に入っていい許可を出した覚えがないんだけど」


 そう、この非常識人間は今、私の家に無断で入ろうとしているのだ。


 「え? 親友だしそんなことどうでもよくない?」


 確かに、親友であれば問題ない。それがこんな異常すぎる破天荒な親友でなければ、だ。

 この非常識オブ非常識の人間は過去に、破天荒な、破天荒の度が過ぎたようなことをし続けている。ある時はいきなり人ん家の風呂を勝手に借りては酷い使いようをして、あるときは汗をかきながらも床に寝そべり寝床を、あるときは大暴れして辺りにあったものを破壊して、あるときは家の二階までよじ登って私の部屋に入ってくる、などなど。これ以上思い出すのは頭痛が痛いのように、何か変なゲシュタルト崩壊()みたことになりそうなのでやめておく。


 「だめ。あんたには色々な制約つけないと何するかわからないから」


 「えー、早く家に入ろうよー」


 なんかこういう会話すると親子の会話のように聞こえてもおかしくないのかもしれないけど、これをしないと紗良がまたなにをしでかすのかわかったもんじゃない。


 「いい? 私が今からいうことには絶対に従って。私の家では絶対に私が迷惑にならないようにして。そうすれば私の家に入ってもいいよ」


 「はーい、わかりましたー」


 なんか棒読みで返事されたが、紗良の言葉はたいてい嘘偽りがないのでスルーする。


 「じゃあ、開けるわよ」


 私は鍵を取り出して扉を開けた。




*****


*人間が人間として生きるには信用が必要でなければならない*

*行く先は闇、すぐ、君という物体じみたものは飲み込まれる。疑心に、暗鬼に*


*****




 家に入ったあと、私は冷蔵庫から適当なジュースを二つ、パッと取り出して自分の部屋へと上がる。

実はちょっとワクワクしている。なぜ、ワクワクしているのかと問いかけられたらこう答える。


紗良が私のコスプレ衣装を着てくれるから。


紗良には今日、コスプレ衣装を作っていることがバレてしまったけど見返りとして紗良にはそのコスプレ衣装を着せようと考えている。そして紗良は私が作ったコスプレ衣装を着てくれる、絶対に。なぜかと言われれば、今のところ私が着てくれと頼んだらオーケーしてくれる確率が百パーセントだからだ。

一度きわどいコスプレ衣装を着させたことがあるけど、躊躇せずに着た。もっとも、着たあとにいきなり走ったりして暴れた結果、そのコスプレ衣装は粉砕玉砕大喝采の如く簡単に破壊されて私の家を裸でうろつく変態さんになっていたわけだけど。

まあ、そんなことはどうでもいい。

私は自分の部屋の前に到着。そして扉を開けると同時に「紗良、今回作ったコスプレ衣装着てくれない?」といえば"完璧"。そう思い、扉を開けて--、


 「紗良、今回作ったコス--」

「ライム、一緒に勉強しよ」


 "完璧"という二文字は簡単に覆された。



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