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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
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十六話 不可解な断片的記憶


 …………。

 私の……私たちの選択は……誤っていたのだろうか?

 それほど、いや、それほどとは感じ難いけど、それほど異様な相手--神崎さんが目の前にいる。無策で入ったのは駄目だったかもしれない。


 普通のニートや引きこもりならドアが開けば、こちらを一度見て、そして俯く。それが引きこもりの症状だと言ってもいいし、もしくは外に出たくないから猛反撃するか。そこらへんが一般的な反応。

 なのに、……それなのに、


 「なあライム、これは……」


 「……私も分からないわよ……」


 目の前の同級生--神崎さんは、ただこちらをずっと見ている。ただただ、ずっと、こちらを見つめている。

 そんな行動を人間がするのだろうか? 幼子なら……いや幼子さえこんなにしっかりを相手を見つめることは無い。それほど彼女の瞳はこちらを向いていた。そして何も喋ってはこない。それがただただ異常で不可解で、ゾッとする。異様な恐怖を感じて冷や汗が垂れるのを私は肌で感じていた。


 「とりあえず……」

 

 そう言って歩み寄ったのは紗良だ。


 「神崎ちゃん。神崎ちゃんは明日学校には行く?」


 「行かない」


 「じゃあ外には出るか?」


 「出ない」


 「どうして?」


 「幽霊がいるから」


 「夜じゃないのに、幽霊なんているわけないと思わないかなー神崎ちゃん」


 「それなら、幽霊は朝存在しないことになる」


 ……。完全に神崎さんはおかしい。約束をしたときはこんな素っ気ない人でも、むしろ紗良のようにフレンドリーな人だと思っていたのに、……今はこれだ。愛想もなく、幽霊を信じ切っていて、それでいて思慮深く見えてしまう。

 この原因は本当に幽霊の呪いかなんかなのだと実感してしまう。


 「朝なら幽霊はいないだろ? それで夜になったら幽霊は現れる。古事記にもそう書かれていると思うんだけどな―」


 どこの古事記だよ! そんなツッコミは置いておく。


 「幽霊は朝にも『いる』。『存在する』。しないわけがない! もしそれを証明できるならぜひ証明してほしいものだよね。そう、そうだよね。一般論なら、幽霊は朝には存在しないかもしれない。だからと言って本当は存在する可能性しかないと、そうは思わないか? よく考えれば理解できるだろう? それは人間によって勝手に解釈されただけで、実際問題としては存在するものが消えて現れることなんてねえんだよ!」


 異常な言葉使いをする神崎さん、だけどそこには決定的に間違いがある。私はそれを指摘する役目で、そのために私がここにいる。今回の場合は感覚で、コールドリーディングやホットリーディングなどの心理学は全く考えなくていいことを心で理解できていた。だから今回の私は屁理屈で、相手の囚われを解く。


 「神崎さん。そもそも、本当に幽霊っていると思っているの?」


 幻惑に、幻に騙されて異様な勘違いをしている。そんな可能性を示唆し、発言したもの……だったんだけど、


 「幽霊が『いない』? そんなのナンセンス! あり得ない! そんのあり得ないよ! 実際に会ったことをそもそも幻だとかそんな甘いことを考えてんキミ!? いや、そもそもキミも見るはずだ、いいや見たはずだ! そこはどう思ってんだ?」


 私が幽霊を見たことがある……? 戯言か? いや、そんなこと今は関係ない。


 「私は別に幽霊を見たことは無いけど、でも人は見たことがある。人は存在するから存在して、幽霊は存在してないから存在しない。神崎さんの見たのは人だったんじゃないのかな? 人に脅かされたとか、そういう。実は心のどこかでそんな考えを持っているんじゃないかな?」


 この反論を戯言のように思われてしまえば、私は所詮役立たず。神崎さんを救うことはより難しくなる。

 ……でも、私はどこか、どこかしら感じていた。彼女の今の状態でも話は聴ける状態で、まだ間に合うのだと理解していた。


 「っ゛あ゛……。あ゛。……。…………。--っ! ……………………あれ? ライムちゃん、それに紗良ちゃんも……。なんでいるんだっけ? っ……」


 治った……? 終わったのか?


 「いや、まだだよライム……」


 勝手に人の考えをわかっている私の親友はやっぱりエスパーかなんかなのだと思っちゃうけど、それ以上の出来事が眼前で起こる。


 「--えっ?」


 「ライム。ここからは私のテリトリーだと思うから下がってて」

 「……分かった」


 神崎さんは立ち上がっていた。何も言わず何も怒りの感情を見せずにただただ、こちらを見ている。

 ……多分、反撃する。怒りの感情を出せずして、神崎さんは……消える。


 「----」

 「----」


 「----!」


 私は目で追い遅れる。それが消えたと認識してしまうほどの速さだ。そしてそれほど神崎さんの動きは--それこそ紗良と同じ人外と言ってもいいような動きで紗良をターゲットにして拳を放つ。

 素人目の私でも、ここに一般人が入る隙は無いことが解る。もっとも、それを捌いて華麗に攻撃に対処する紗良も異常なんだけど。


 *君は監視対象にある。だからこそ君の決断を是非とも見たいんだ……見せて、君の決断を*


 ……?

 ……。何か幻聴と思えるものが聞こえたけど、私は無視。私は私のできることをするだけ。だから神崎さんと会話を試みる。


 「神崎さん。幽霊なんていない、絶対に。貴方は誰かに操られいている」


 「……操られてなんか……!!」


 私の言葉は今の神崎さんが反抗しやすいもので、そして会話に入る。そしてそれは当然、隙を晒すことになる。


 「せいやー!」


 紗良が神崎さんに腹パンする。……別にお腹を狙わなくてもいいような気はするけど。


 「あ゛! が゛がっ゛゛!」


 「今度は……大丈夫だ、ライム」


 神崎さんは唾液を吐きながら、地べたを這い寄っていた。いや……神崎さんではないだろう。傀儡といっても間違いない。誰かに操られていた。でもそれも、今の衝撃で消えたはずだ。


 「ぁ--……。……。……、ん? あれ? ライムちゃんと紗良ちゃん、なんで私の部屋にいるの?」


 「神崎さんとガールズトークでもしようかなってー、そうだよねライム?」


 「えっ? あっうん。そうだよ、一緒にガールズトークしよう」


 「そーなんだー! じゃあしよう!」










 *****







 あれから、ガールズトークを午前中いっぱいした。

 そして今は神崎さんの家を出て帰り道。


 「ライムお手柄だったよー。普通のニートや引きこもりなら私が何とかできたけどさ、アレは完全に現実逃避以上の何かだったし」


 「いや、紗良がいなかったらそもそも初めの会話というか質問? とにかくコミュ障の私はそれができなくて詰みだったから、私のお陰ではないよ」


 紗良は引きこもりやニートの人を過去何度か助けていた。私はと言えば、その中でも異常な人たちの相手を心理学やアロマテラピーによって解決する。もっとも紗良ありきなんだけど。

 それで、何人かの人を一般的に言えば救った。ニートや引きこもりになることを堕落というけど、イマイチそれがピンとこない。だからこそこれが正しいとかはあまり思わない。けど解決ということだけで物事を捉えれば、私と紗良ならこのことを解決できる。だからこそ今回の件はどうにかできたと言ってもいい。


 「そうだとしてもさー、私一人じゃどうにもなんなかったよ。アレは神崎ちゃんじゃなかったし。催眠術でもかけられたかなー?」


 「あるいは本当に幽霊がいるか……ね」


 「まっ……それは気にしなくてもいいさ。とにかく、深夜にミマ高校に行くのは駄目なことが解かったねー」


 「そうだ…………ね」


 ……--私は深夜にミマ高校に……。ミマ? …%’魅$…#真’%…。あの高校に行った?


 「どうしたーライム? 大丈夫?」


 「……うん。大丈夫だよ」


 関係ない。私は深夜に高校に行ってないんだから。


 そして、私たちは家に帰った。

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