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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
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十一話 運命からは逃げられない


 運命から逃げられない。これは当たり前のようにも思えるし、間違いの可能性もある。

 そもそも、運命という存在は如何せん曖昧だ。曖昧があれば運命が発生するのかと問われれば別だが、運命という存在が存在するのかで言えば曖昧だ。

 言葉はあれど、存在は曖昧。それが運命。だからこそ運命は打ち崩せる、そんな僅かな希望が存在する。だからこそ、最悪の物語を終わらせなければならない。












 *****







 <オープンキャンパスから一カ月と少し経ち、六月十日。金曜日>







 「ライムちゃんも一緒に行かない?」



 ミマ高校の教室の中で私に向けられた声は、紗良の声ではなかった。同級生、名前は神崎さんだ。多分、紗良がいないから話しかけてきたのだろう。

 私と紗良は他の人から疎まれているといったけど、そんなに疎まれてはいない。強いて言うなれば女子のグループに所属していないから疎まれている。他から疎まれているというのはその程度のこと。でもさみしいけど。


 今日、どうやら紗良は家族の用事で学校に来られないのだそうだ。紗良から連絡があった。その用事に"嘘"的な何かが混ざってなければ一安心できるけど。


 そして今、何に誘われたかと言えば、幽霊を一緒に見に行くかどうか…………ということ。もちろんそれは、深夜にミマ高校に行こうという誘いだ。しかも私と神崎ちゃんだけで行くらしい。

 正直、興味はかなりあるけど恐怖もいくらか混じっている。もしも深夜にミマ高校に行き幽霊に出会えば記憶が抜かれ、怖かったことだけが心に刻まれる。…………考えただけでもゾッとする。怖くて恐くて恐ろしくて、その感情が永遠と抜けることは無い。…………でも、


 「うん、いいよ」


 そう言ってしまった。なんとなく、言われるがままではないけど、そうしたほうがいいという無意識な何かが働いた気がした。












 *****







 <六月十一日土曜日。深夜一時。場所、ミマ高校。校門前>



 「怖いねーライムちゃん!」


 神崎ちゃんは少し女子からは浮いている。つまり私や紗良と同じような人。でも彼女はそれを理解していない、と思う。

 彼女はある女子のグループに入っていて、だけどカースト的に見てしまえば彼女はそのグループの中でもっとも下。だから多分…………パシリのようなものだと思う。だから、そのグループの人らは手始めに神崎さんに深夜のミマ高校に行かせることにしたんだろう。


 「うん、そうだね」


 カースト的にそのグループの一番下と言っても、クラスの女子全体で見てしまえば恐らく私と紗良が一番下。まあ、だから私を誘えとでもグループの女子から言われたんだろうと、どうでもいいことを考えていた。本人は無自覚なのか、自分の家を喜々として教えながら、そこを集合場所にしてここまで一緒に来たんだけど……。


 「……ライムちゃんはどう思う? 本当にここまで来たけど、いると思う、幽霊?」


 「いるかもしれないよね」


 私は曖昧な反応をする。というのも、というかそもそも神崎さんとはそこまで会話をしたことがない。だから下の名前を知らないし、どんな人なのか……いや、クラスで見る限りはわかるけどしっかりとした部分--根幹を全く知らない。もしも紗良のように"嘘"を言ってはいけない人…………そこまで行かなくても、言ってはいけない何かがあれば警戒しないといけない。でも、そんなことは少ないはずだからそこまで身構えなくてもいい…………多分。


 「っと、もう校舎の中に入るけど心の準備はオーケー?」


 「うん、大丈夫だよ」


 「それじゃあレッツらゴー!」


 なんともまあ、呑気なものだ。神崎は特におかしなところはなさそうだ。

 そして校舎の中に入る。そう言えば…………金髪の幽霊は校舎外でも出くわす可能性があったのに、出くわさなかったのは少し嫌な予感はするけど。

 …………いや、そもそも幽霊なんていないのかもしれない。そうだ。きっと--、


 「やあ、久しぶりだね。桜田ライム」


 「--っ!! アンタは…………」


 「いやー、アンタとか言わないで欲しいよ。ねーっ、ライムおねーちゃん」


 ライムおねーちゃんと言ってくれる、言う人物は--存在は一つ(一人)しかいない。


 「……メイザス・ラギム…………」


 「正しくはラギムって呼んで欲しいかなー? あっちのときは仮にもメイザスという名前を誇張しないといけないからねー。そうしないといろいろと私はイレギュラーの存在にされちゃうからさー」


 金髪、黄金の瞳、ショートヘアー。……間違いない。浮遊している……幽霊だ。それも、ワープという能力もった幽霊。非幽霊が持っているほうがまだあり得そうな能力を持っている。

 そして、先ほどまで聞こえていた神崎さんの声が聞こえない。辺りを見ても神崎さんの姿はない。ということは、


 「ラギム。アンタ神崎さんをどこにやった?」


 「またアンタって言ってるー、まーいいんだけどさー。別に怖がることはないよー、この学校内のどこかにやっただけだからー。帰りは一緒に帰れるはずだから安心していいよー」


 「"無事"に神崎さんを返してもらえる? 生憎、アンタのことは疑うしかなくなっちゃったから」


 「やっぱり、幽霊になると私を受け入れてくれないんだねー……。寂しいけど、私はいつでもフリーダム! 何か他のこと探して寂しさを紛らわすものを見つかればそれはそれでいいよねー。今がそのときなんだけどー」


 明らかに、メイザス・ラギムとして私の前に現れたときと口調や言動が違う。何より会話が通じているのかどうかわかりづらいことが最も恐かった。

 私はあることを思い出して、話を切り出す。


 「結局、|オープンキャンパスのとき《あのとき》アンタが私と出会ったのは偶然じゃなくて必然だったの?」


 あのとき、話しかけたのは私からだったけど、もしもあれが仕組まれた罠なら…………罠なら……………………あれ…………? 一体何があるんだろう?


 「必然かー。そう言われればそうかもねー。私たちは見ていたからねー」


 「…………私"たち"は見ていた?」


 「……あー、ちょっとネタバラシしちゃったかなー? まーここに来たんだから許してくれるかなー?」


 ラギムのネタバラシによって私は気づく。


 「--ラギムともう片方の幽霊は繋がっている…………!」


 「おー、よく気づいたね。個人的にはそう思った時には…………いやーなんでもないやー。私邪魔したらアラム怒っちゃうからー」


 「アラム? もう片方の幽霊の名前…………?」


 思わず、憶測を口にしていた。


 「んー? あっ、もう大丈夫そうだねー」


 「…………何が大丈夫なの……?」


 「アラムと会えるってことだよー」


 「えっ…………!?」


 私の体は上空に浮かんだ。いや、浮かされたのかもしれない。その先にあるのは暗闇、ブラックホールに吸い込まれるんじゃないのかという、そんな感覚。

 そのまま私はソレに飲み込まれた。

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