第24部 ピンボールピンポン
「さあさあさあ!第三試合始まるよ!」
青空広がる天がドーム状に覆われる。
一時の暗黒。その一瞬、指弾く音が会場に光を灯した。
その光の輝きは鮮やかというより、艶やか。純粋な白い光ではなく、様々な色が混じり合った光。
スポットライト、ミラーボール。派手な装飾に溢れたその光景はまさに欲望渦巻く娯楽の場。
「こりゃあ、まるでカジノホールだな」
「そもそも、この試合。卓球してないだろ」
「異世界卓球。このジェイドですら予想できない世界だ。能力者の君でも理解しがたいのだろう」
「…今更か」
軽快なジャズミュージックが流れ、歓声と同時に二人の選手が入場する。
「さて!まずはこの人!予選三位、全属性の魔法を操るダークエルフ!アーク・ミリオネア!」
スポットライトが差し込み、美しい褐色の肌が露わになる。
「ハーイ」
歩いた場所には花が咲いては凍てついて散る。後には何も残らないがそれでも美しい景色であった。
「ピンボールはお得意かしら?」
ロッドを向けた先には日本人の好青年。
「いえ、卓球一筋なものでね」
「そして、この人!日本の卓球本来の技と頭脳戦で予選を勝ち抜いた孤高の日本人!ミカドリュウセイ!」
「先手はあなたから。どうぞ」
彼女の左手から放り出された球を受け取ると鞘からラケットを引き抜く。
そして、二人の間には卓球台、ではなくピンボール台。向かい合って打ち合う感じになるようだ。
第三試合
ミカドリュウセイvsアーク・ミリオネア
ステージ 「ピンボール卓球台」
5点マッチ
試合開始!
「さて、分が悪いってもんじゃないね。これは」
ボールを入れてプランジャーを引いた。
「バネの力で打ちだすタイプのヤツか。なるほどね」
打ち出された打球はカーブレーンに沿って弧を描いた。
バウンドギミックに何度か反射し、フリッパー手前に落ちてくるように転がってきた。
ミカドは躊躇なくフリッパーを操作した。
「なるほどな。このギミックや壁にぶつかると本当のピンボールみたいに落ちてくるのか。なかなかカオスな仕組みだな」
ミカドはお手玉のように軽く何度か弾いて仕組みを理解するとフリックを強く弾いた。
「あら、普通にできるじゃない」
中心を射抜くようにしてアークの台へと転がる。
風車のように回転する十字のギミックに引っかかる。
「くっ…。難しいな…」
十字ギミックが一回転するとボールはアークのフリップ手前に転がっていった。
「今度はこっちの番」
フリップが勢いよく作動した。打球は鞭うたれたように真っ直ぐ突き抜ける。
(ど真ん中っ!?これは流石に…)
フリップを動かそうとするがもう間に合わない…。
0ー1
サーブ権 ミカド
観客席にて…。
「…まずいアルな」
師匠であるメイ・ファンロンはため息をつく。
「ややっ!あなたはっ!ミカドさんのお師匠さんじゃないですかー!私、エルと試合してくれませんか?」
「ああっ、暑苦しいやつアルね。弟子の試合が心配でならんというのに…」
エルの頬を抓るとそう呟いた。
「いでででで!へ、へもなんで心配してるんですか?ミカドさんはピンボール未経験ですけど、頭がよくて必殺技を隠し持ってるんじゃないですか?」
「エルのお嬢さんは分かってないみたいだね」
「ジェイドさんどういうことですか?」
ジェイドは真剣な顔になる。
「流石はレートハンター。リュウセイにも目をつけていたか」
「ど、っどどどういうことだヨオ?」
「ヨオヨオ。どうゆうことですかヨオ?」
ひょっこり出てきたダイショに便乗してエルも口調をまねる。
「おいっ。俺の語尾をパクるなヨオ!」
「ナンセンスなんて言われてますけど結構イケてますヨオヨオ!」
二人がよく分からないやり取りしているのをよそにメイはとんでもないことを言い出した。
「リュウセイには私の技のすべてを教えた。ほぼ完璧、いや私を超えるかもしれん…」
「でもミカドリュウセイは俺が知る情報の中でも必殺技を使ったことは一切無かった。それは彼が強すぎるからとか隠し札だからという理由があるわけでもない。自らの意地で使おうとすらしないんだ…それと」
ジェイドはどこからか新聞紙を取り出した。
その一面には『またまたジャックポット!アーク・ミリオネア、連戦連勝!』と大きな見出しと褐色肌のエルフの女性の写真が記されていた。
「アーク・ミリオネア。彼女のもう一つの姿はジャックポッターと呼ばれるほどのギャンブル遊戯の達人だ」




