第5部 ロリ魔王
「ここが魔王の城……」
「ああ、警備は結構している方だ。あまり不審な行動をするなよ」
紅い月が照らす夜。
魔王の城へと連れられたサツキはアスタロトと共に魔王の間へと向かう。
「かなり、広いですね」
「俺にちゃんとついて来い。じゃないと迷うぞ」
「結構優しいんだ、アスタロト」
「俺は忠告しただけだ。勝手に感謝していろ」
アスタロトがツンデレっぽいセリフを言ったのでサツキは少し笑ってしまった。
「ここが謁見の間だ。俺たちは魔王の間とも呼んでいる」
謁見の間の扉の前には2人の鎧の騎士がいた。
「おおアスタロト殿。ご無事でなによりです」
「そちらの人間は?」
「ああ、コイツは魔王様に頼まれたものだ」
「分かりました。ささ、どうぞアスタロト殿、人間殿」
「僕は人間ですけど、雪村皐月という名前があるんで」
「ハッ、失礼いたした。ユキムラサツキ殿」
「異世界の人って何でフルネームで呼ぶんだろ?」
ギィィィイと扉が開いた。
だが僕の目の前の玉座にいたのは悪魔や魔導師の見た目の魔王ではなく、銀髪の幼女だった。
「おお、アスタロトよ。よくぞわらわの望んだ人間を連れて参った。褒美を遣わそうぞ」
「いえ、とんでもない。当然の事をしたまでです」
へぇアスタロトは相当この人を尊敬してるんだ。
それにしても漫画とかラノベでよく見るよな、何だっけ?ロリババアとか合法ロリっていうヤツか!
そんな事を考えている間にアスタロトとロリ魔王の会話は終わっていた。
「アスタロト、少し下がっておれ。部屋で休暇を取るがよい」
「ハッ、御言葉に甘えさせていただきます」
アスタロトが謁見の間から出るとロリ魔王は玉座から降りた。
「そなたユキムラサツキと申すか?」
「あ、はい」
「そうか、ならこっちに来てくれまいか?なあに獲って喰ったりはせんよ」
僕はゆっくりとロリ魔王の玉座へと近づく……。
「サツキよ。よく顔を見せたもれ」
僕は頷くとロリ魔王は僕の顔に触れた。
「愛い(うい)、愛い奴め。わらわはそなたが好きになってしまったのじゃ。許せ、愚かなわらわを許せ」
「え、えとあの………ん!?」
ロリ魔王の顔が近づき、抵抗する間もなく唇と唇が触れ合った。
「や、やめて下さいっ!」
僕は振り払う。
「す、すまぬ。だがそなたへの愛は本当じゃ!そなたが大好きなんじゃ!」
こ、これが初めてのキス…。
動揺して少しはぁはぁと息を荒げていた。
同性にされるなんて考えられなかった。
マチヤさんも軽いスキンシップをしてくるけどキスなんてした事もされた事もなかった。
かなり僕の心は動揺している。
「僕が好きだからここに呼んだ?」
「ああ、魔王杯の団体戦のメンバーをこの水晶で探していたんじゃがそなたの顔を見るとその、胸のときめきというのかの?それが止まらなかった!そなたに触れたい。そなたの声を聞きたい。そなたの匂いを嗅ぎたい。そなたを抱きたい。そんな事で頭がいっぱいじゃった!」
「あの、僕はそのそういう趣味はないので…」
「そ、そうか。じゃあ、好きでいさせてくれ。それで良い」
まあ、それくらいならいいか。
「い、いいですよ」
「よかったのじゃ。サツキそなたをいつか必ず堕として見せるのじゃ」
「そ、そういえば貴方が革命を起こした魔王なんですか?」
「ああ、わらわは奴とは違う。魔王も沢山いての、7階級あるうちのやつは最上階級のLv7でたった1人じゃ。ちなみにわらわはLv6なのじゃ」
よくわからないが魔王も格差社会なのだろう。
「おっと、申し遅れた。わらわは魔王ローラン。よろしくなのじゃ」
ぐぅ〜とお腹が鳴った。
そろそろ日本は5時半くらいだろう。
「それじゃ、帰っていいですか?」
「ま、待つのじゃ!」
やっぱり引き止められた。
「魔王杯の個人戦だけでも良い。出てくれんか?」
「何で僕なんですか?貴方にはアスタロトがいるじゃないですか」
「そなたにはもう1人の姿が見える」
「やっぱり、気づいてましたか。アスタロトにも勘づかれてたんです」
「二重人格というやつか?」
「いえ、ちょっとだけ違うんです。魂が2つあるような感覚なんです」
「なるほど、特殊能力かもしれんの」
「特殊能力?」
「言葉のままの意味じゃ。そうじゃの名付けるとしたら……」
「二つの意志ってのはどうだ?魔王さんよ」
もう1人の僕が出ると魔王ローランはクスッと笑った。
「フフッ、出おったかもう1人のサツキ。アスタロトもう1度相手をしてやれ!」
「ハッ!魔王様!」
すると途端に扉が開きアスタロトが出てきた。
どこまで執着心が強いんだこの悪魔。
「わらわもそなたらの試合が見とぉての。わらわを楽しませるのじゃ!」
パチィンと指を鳴らすと空間が歪み、別の世界に転送された。
目の前には卓球台とスリースターのボールがある。
「ほうほう、卓球終わるまで帰れませんってか。面白ぇじゃねーか!アスタロト!テメェにも借りがあったな」
「俺のデビル・ロンギヌスをもう一度受けたいか?良いだろう!テメェにこの槍のトラウマを植え付けてやる!」
パァン!と手を取り合い、試合が始まろうとしていた。
なんだかんだでもう1人の僕とアスタロトは良きライバルみたいな関係になっている。
コイントスをするその瞬間……
「そうはさせませんの!」
上の方の空間が捻じ曲げられ光を纏った銃弾の様に飛び出してきた。
白い羽根が空に散りばめられ、
金髪の天使の様な、いや天使の姿をした女の子が空から滑空してきた!
「ここで運命を変えますの!」