外伝その1 風が吹き抜ける森
外伝とはいえ本編にも関わってきます。
今回のお話は日本が召喚されるちょっと前と後のお話です。
皆様、初めまして!
私はエルと言います。
エルロットが本名なんですけど、みんなからはエルって呼ばれてます。
この耳ですか?
はい!私、エルフなんです!
卓球ですか?
えと、あんまりルールが把握できないというか……。
あ、でもでも格闘術なら得意ですよ!
鍛えてるんです!
魔法と拳を合わせた、魔法拳っていう拳法ご存知ですか?
あれは私の集落の伝統の術なんです!
え、あ、あ?
帰っていいんですか?
えっ、ちょっと!面接もう終わりですかぁ!
魔王は魔法でエルを城の外へと追い出した。
「駄目じゃのぉ。ああいう奴は体はいいが脳が無くて仕事ができないタイプじゃ。そういえば、異世界に日本というあの魔王の出身国があったの」
「あ、それ幹部であるワシならイケるわw」
というと大きな魔法陣を描き、龍の骨などを周りに並べ謎の呪文を唱えた。
コイツはこの物語の冒頭に出てきた日本ごと召喚した諸悪の根源であるじじいである。
ローランの部下であったがその後、日本ごと召喚した罰として退職となった。迷惑とか考えろとか言われたそうだ。
だがローランはあたかも自分がやったように皆に話し、じじいを庇った。なんだかんだで優しい上司だ。
城を出たその日、じじいは道端で倒れてしまった。
あてのない旅、途方に暮れそろそろ限界が来たのであろう。しかし、じじいは最後の力を振り絞って魔法を唱えた。
するとじじいは小さな光となった。
そう、じじいは精霊となったのである。
精霊になったからには契約者を探さねばと森の方を探す。
精霊は契約して初めて力を発揮できるのである。
「はぁ〜。ここも駄目だった〜」
おや、あれは……。
ローラン様の面接会場にいたエルフの小娘じゃないか?
やはり革命によって失業した者も多いんじゃのー。
ま、ワシは自業自得じゃ。
そしてエルフの小娘に近づき話しかけた。
「え?私ですか?貴方の契約者ですか……」
「そうじゃ!お前の力はよう分かっておる。お前の力は卓球にも通じるはずじゃ。ワシと共に魔王杯を目指さんか?」
「んー。どうしよかなぁ?でも私、何もする事ないし、これも何かの縁です!契約しましょう!」
精霊のワシは嬉しくて、辺りをフワフワ飛んだ。
「私はエルロットと申します。エルとお呼び下さい!」
エルは手をかざす。契約方法が分かるのはエルフ族の伝統だろう。
「ワシに名は無いんじゃ。契約者であるお前がワシの名をつけてくれんか?」
「名前ですか…そうですね……」
エルは考えるような仕草を見せるとポンと手を叩き、
「師匠!です!」
とワシに命名してくれた。
「師匠…。それは名前では…」
「師匠は師匠です!名前でもいいんです!私に卓球を教えてくれるなら貴方は師匠です!貴方にはそれだけの誇りがあります!」
こやつめ、若いクセしてカッコつけよって。
ワシ、納得しちゃったじゃないか!
そして数日後
「こんなものでいいですか?師匠?」
「ああ、お前がいいなら誰も文句はつけん」
「ありがとうございます!」
というと彼女は拳を掲げ、力を込めた後、腰を低くし下ろした拳を前に突き出した!
「必殺!風神拳!」
森に一瞬だけ風が吹き抜けた。