大賢者
大賢者 賢介「八」
護衛定番八「へい」
賢「あの若狭町長のお葬式は二時やったと思うのやがな。
今日は王様は風邪で寝込んではる、王子様も明日の結婚式の準備があるから
私が代わりにお供にたたなあかん
葬列の行列が出そうかどうか、ちょっと様子をみてきなはれ」
八「へい……大賢者様」
賢「なんや」
八「もうあの、なんや行列が今直にも出るようで、順番呼んではりまっせ」
賢「そらいかん、そらいかん。あーほなすぐに着替えるいかんな。
これ、ちょっとあのわしのブラックフォーマル持ってきてくれ。
八、お前も連れていったらええのやがな、
お前は小さいよってに、鞄をもって就いてくると人が見て笑いよるからな。
どうも体裁が悪い。七とちょっと代わってきなはれ。
七は王子様の張番をしてるさかいな、お前行って、七と替わって
七に供をするように」
八「へい、わかりましたいってきます……七さん」
七「何や八」
八「あんな、お前さんとわいと仕事入れかわれて」
七「入れ替わるとは」
八「わい背がな小さいやろ、それでやあの葬列のお供についていくとな、
見た目が悪いさかい、七と替わって来いって大賢者様が言うてるねん。
それでやわし、ここで張番するよって、お前葬列のお供のほうや」
七「そうか、よし、それならこの棍棒お前に渡しておくからしっかり張番をしいや。
あのな王子様今寝てはるからな、この中で。そやさかい扉をあけたりしなや。
ほいで、そーっと静かにしてなんだら目を覚ましたらまた後で五月蠅いさかいな。
ほいでお前はよう居眠りするさかい、居眠りしてる間に王子様逃がしたらあかんで、
王子様が逃げて出やはったらな、ともどもわいのほうまで罪が及ぶさかいにな、
必ず居眠りしたらアカンで、ええな頼むで。
……すっくりいきやがった。ケーキと二十万銀貨とわいがとって、
ほいであいつはしっかり居眠りしよるさかいな。
お前が居眠りしてる間に王子様は出て行ったという事や、
言うて怒られて、あいつどつかれよるわ。
えへ、わしゃ知らん顔してよう……。
ああー、あれは泣き寝入りするに寝てしまうわ、そのうちに王子様が帰ってきて、
ケーキはわいが一人で喰うし、なんでこんなに運が向いてきたんやろ。
いきやがった。えへ、ちゃんちゃんちゃん」
賢「あいつ踊ってるな。これ七、早くこっちにおいで」
七「へい、いますぐ」
賢「なにがいますぐや、これ、早く着替えておいで。
もうお葬式の行列がでかかっているからな」
それで護衛一人を供にして、葬列にいきます。
賢「はい、えらい遅くなってなりました、どなたはんもご苦労様です。ご苦労様です。
これはこれは、どうもこのたびはおもいがけないことでして、
もう何十日寝てはったさかいというものでもなし言うてきがすむわけでもございませんが、
急なことでしたな、真に人間というものは、はかないものでございます。
ご愁傷様でございます」
七「えーこのたびは」
賢「お前は黙ってろ、いらん事をいうのやない。何もいうな」
一同がゾロゾロと墓地のある南町のはずれに葬列の行列のお供をして、
野辺の送りをしまして、其処で平服に着替えて、
荷物は護衛の七がこれを持ってお供をいたしまして、道を北へと戻ってきます。




